農薬は害虫や病原、雑草等の化学的防除を可能とする反面、殺虫剤や除草剤の散布による悪影響やコストを正しく認識することは、営農の効率性を高め、総合的病害虫管理を進める上で特に重要である。パラコートに代表されるように、農薬はヒトに対して毒性を持つため、農業従事者に対する健康被害、農作物への残留農薬がしばしば問題となってきた。
現在日本で流通している農薬の90%以上は普通物というカテゴリに分類され、毒物や劇物に分類される農薬は年々その割合を低下している。また、2004年中における農薬中毒事故189件(死亡94件、中毒95件)のうち、156件は自他殺を目的としたものであり、誤飲・誤食や農薬散布
に伴うものは33件(うち死亡2件)である。1998年に発効した『北東大西洋の海洋環境を保護するための条約」』(OSPAR条約)の有害物質対策における取り組み候補物質リストの農薬の項目には、アルドリン、DDT、ディルドリン、エンドリン、ヘプタクロル、ヘキサクロロベンゼン(HCB)などが含まれ汚染防止の対象物質になっている[12]。 欧州連合(EU)では『植物防疫用品に関する指令』(91/414/EEC)と『殺生物剤に関する指令』(98/8/EEC)が農薬の規制に関する指令となっている[12]。 アメリカ合衆国では家庭用・農業用・工業用を問わず『殺虫剤・殺菌剤・殺鼠剤法』(Federal Insecticide, Fungicide, and Rodenticide Act: FIFRA)等による規制がある[13]。農薬登録の際に同法で必要になるデータには、必須のものと条件付きで必要になるものがあるが物理化学的性質、残余物の性状、分解性、移動性、野外での散逸性、野生生物への影響などである[12]。 アメリカ合衆国環境保護庁(EPA)は農薬を一般用農薬(General Use Pesticide)と制限使用農薬(Restricted Use Pesticide)に分類しており、制限使用農薬は認証使用者またはその直接監督下でのみ使用が認められる[12]。 農薬取締法により、農薬の製造者または輸入者には登録の、販売者には届出の制度が設けられている。さらに毒物及び劇物取締法により、毒物または劇物に該当する農薬の場合、別途それぞれに製造業、輸入業、農業用品目販売業の登録、帳簿の整備と5年間の保管が、購入には印鑑と身分証明書が必要となる。収穫後に用いる防かび剤、いわゆる「ポストハーベスト農薬」は、日本では農薬ではなく食品添加物として扱う。
EU
アメリカ合衆国
日本
法規制
Size:74 KB
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
担当:undef