農薬
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エアゾール
ケロシンアセトンに有効成分を溶かし、液化ガスの圧力でスプレーできる容器(スプレー缶)に入れたもの。
フロアブル剤
ゾル剤とも呼ばれる。溶剤に溶けにくい固体有効成分を、水和剤よりも細かい微粒子にして水に混ぜ、液剤化したもの(登録上の分類は水和剤)。
EW
水に溶けにくい有効成分を、高分子膜や界面活性剤などで被覆することで水に混ぜ、液剤化したもの。有機溶媒を使わないため、危険物にあたらない利点もある(登録上の分類は乳剤)。
マイクロエマルション
水に溶けにくい有効成分を最低限の有機溶剤に溶かし、界面活性剤で水に混ぜ液剤化したもの(登録上の分類は液剤)。
ペースト
有効成分に鉱物粉などに混ぜて糊状にしたもの。塗布して使う。
錠剤
水溶剤や水和剤を、錠状に成形したもの。現場で計量する手間が軽減できる。水で希釈して使う。
塗布剤
もっぱら塗布して使うもので、他のどの剤型にも当てはまらないもの。
粉末
粉状で、他のどの剤型にも当てはまらないもの。
微量散布用剤
空中散布における微量散布(ULV)専用に、有効成分を有機溶媒に高濃度に溶かしたもの。
油剤
水に溶けにくい有効成分を有機溶媒に溶かした油状の液体。
パック剤
水稲用の殺虫剤、殺菌剤の粒剤を水溶性フィルムで包装したもので、水田に畦から投げ込んで使う。散布機不要で、飛散が無い。
ジャンボ
から投げ込んで使う、錠剤または水溶性フィルム包装の粒剤の水田用除草剤(登録上の分類は剤または粒剤)。
WSB剤
水和剤や水溶剤を水溶性フィルムで包装したもので、袋ごと水に溶かして使う。調製時の粉立ちが無く、使用者に安全である。
複合肥料
有効成分を肥料に混ぜたもの。

他のどの剤型にも当てはまらないもの。
農薬の影響と危険性
農作物や農業従事者への影響

農薬は害虫や病原、雑草等の化学的防除を可能とする反面、殺虫剤や除草剤の散布による悪影響やコストを正しく認識することは、営農の効率性を高め、総合的病害虫管理を進める上で特に重要である。パラコートに代表されるように、農薬はヒトに対して毒性を持つため、農業従事者に対する健康被害、農作物への残留農薬がしばしば問題となってきた。

現在日本で流通している農薬の90%以上は普通物というカテゴリに分類され、毒物劇物に分類される農薬は年々その割合を低下している。また、2004年中における農薬中毒事故189件(死亡94件、中毒95件)のうち、156件は自他殺を目的としたものであり、誤飲誤食や農薬散布に伴うものは33件(うち死亡2件)である。
生態系への影響
農薬の3R
殺虫剤を散布すると、逆に害虫が増えてしまうことがある。その理由となる Resistance(レジスタンス:害虫の殺虫剤(または雑草の除草剤)に対する
薬剤抵抗性獲得)、Reduction of natural enemies(リダクション・オブ・ナチュラル・エネミース:天敵の減少)、Resurgence(リサージェンス:産卵数の増加)の頭文字を取った「3R」という言葉がある。
生態系サービスの減少
殺虫剤や殺菌剤を散布すると生態系が単調化し、窒素固定能、作物のの周りへのリン酸供給量、共生微生物の生息密度、可給態リン酸や可給態窒素の基となる土壌動物やその遺体・排泄物等の量が低下して地力が衰える。また除草剤を散布すると、炭素固定能力や地力が低下する。1990年代から、世界中でミツバチが大量死する現象が相次ぎ、これは蜂群崩壊症候群とよばれ、原因のひとつにネオニコチノイドが挙げられている。
各地域の農薬の規制
OSPAR条約

1998年に発効した『北東大西洋の海洋環境を保護するための条約」』(OSPAR条約)の有害物質対策における取り組み候補物質リストの農薬の項目には、アルドリン、DDT、ディルドリンエンドリンヘプタクロルヘキサクロロベンゼン(HCB)などが含まれ汚染防止の対象物質になっている[12]
EU

欧州連合(EU)では『植物防疫用品に関する指令』(91/414/EEC)と『殺生物剤に関する指令』(98/8/EEC)が農薬の規制に関する指令となっている[12]
アメリカ合衆国

アメリカ合衆国では家庭用・農業用・工業用を問わず『殺虫剤・殺菌剤・殺鼠剤法』(Federal Insecticide, Fungicide, and Rodenticide Act: FIFRA)等による規制がある[13]。農薬登録の際に同法で必要になるデータには、必須のものと条件付きで必要になるものがあるが物理化学的性質、残余物の性状、分解性、移動性、野外での散逸性、野生生物への影響などである[12]

アメリカ合衆国環境保護庁(EPA)は農薬を一般用農薬(General Use Pesticide)と制限使用農薬(Restricted Use Pesticide)に分類しており、制限使用農薬は認証使用者またはその直接監督下でのみ使用が認められる[12]
日本
法規制

農薬取締法により、農薬の製造者または輸入者には登録の、販売者には届出の制度が設けられている。さらに毒物及び劇物取締法により、毒物または劇物に該当する農薬の場合、別途それぞれに製造業、輸入業、農業用品目販売業の登録、帳簿の整備と5年間の保管が、購入には印鑑身分証明書が必要となる。収穫後に用いる防かび剤、いわゆる「ポストハーベスト農薬」は、日本では農薬ではなく食品添加物として扱う。


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