農業政策
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例えば多種多様な品揃えや便利な冷凍食品外食産業など。)が占める割合も低く、農産物価格が上がったところで以前ほど生活費全体には影響を与えない。また、工業も労働集約的なものから資本集約的・知識集約的なものとなっており、企業からしても低賃金の労働者は以前ほど求められない。

加えて、農業は大きく土地や気候条件に制約されており、また先進国から技術を導入するにしても地域に見合った改良・取捨選択が必要となるため、どうしても工業と比較すると技術革新・生産性向上の速度が遅い傾向にある。例えば、新しい自動車製造技術や高性能工作機械がアメリカで開発された場合、それらは日本においても利用可能であると考えられるが、新種の小麦栽培技術や農薬散布用航空機が開発されたところで、それらが日本においても栽培・利用可能かどうかは分からない。そのため都市部の工業等に従事する労働者と農村部の労働者の間で次第に経済格差が発生して行き、農村部の相対的貧困が問題となりやすい。

以上のような理由により、工業部門などからの抵抗も少なく、環境への配慮もあって、工業部門よりも農業部門・農家の保護が指向されることとなる。

このような国家では、農産物の買い上げや輸入の制限、生産量の調整(減反政策など)を行うことで食糧価格を高く維持する政策や、農地の固定資産税などの税負担を低減したり非農業部門で得た税収を補助金などとして農業部門に投入する政策がとられることとなる。

中でも関税や輸入数量の制限による国内農産物価格の高値維持は、国際価格よりも高価な食品を買わざるを得ないという形の保護であり消費者を犠牲にして農家の保護を図るものであると言えるが、財政支出による補助金の交付などよりもその負担が国民などから見え難いため取り入れられやすく、ほとんどの先進国ではこのような措置がとられている。
日本の農業政策

江戸時代には、納税者である農民の確保のため農地の売買は幕府によって禁止されたが、質流れなどの形で零細農民の没落、富裕な農民の農地の集積が進行した。

大正時代には、農林水産省は当時の実情であった寄生地主制の進行と農民の離村・都市労働者化を食い止めるために「小農主義」「自作農主義」を掲げて、農産物の価格安定策として米穀法(1921年)・米穀統制法(1933年)・食糧管理法1942年)などを制定した。これは戦時体制に向けた食糧生産の確保の面からも重視されていた。更に最終的には農地改革によって寄生地主制を解体することも視野に入れていた。だが、実際には当時の帝国議会は地主層議員が多数を占めていたために構想のみに止まり、第2次世界大戦の敗戦による占領下で実現されることとなった。農地改革と農業協同組合の結成によって農村の民主化と生産性向上への道が開かれることとなり、更に1961年には農業基本法が制定されたが、余りによる生産調整、外国からの輸入自由化圧力、高度経済成長による商工業との所得格差の増大による人口の都市流出、後継者不足などの多くの問題を抱えるに至った。そこで平成時代に入ると農政の転換が図られて、1999年には食料・農業・農村基本法が制定されることになった。
学者の見解

中野剛志は農業は農家が単に食糧を供給し、消費者がそれを買って腹を満たすだけの存在ではないとしている。農業は環境保護や田園の景観を含めて、自然環境や地域性と密接に関っており、そこにはお金では交換できない価値があり、それを全部無視してお金で取引すると、今まで地域で大事にしてきたナショナル・キャピタル(国民の中で蓄積されている有形無形の資本)が壊れてしまうとしている[1]
脚注[脚注の使い方]^ 中野剛志・柴山桂太 『グローバル恐慌の真相』 187頁。

参考文献

出典は列挙するだけでなく、脚注などを用いてどの記述の情報源であるかを明記してください。記事の信頼性向上にご協力をお願いいたします。(2016年5月)


速水佑次郎・神門善久『農業経済論 新版』岩波書店 2002年 ISBN 4-00-001812-4

外部リンク

『農業政策
』 - コトバンク










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