農業協同組合
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農協は、組合員の自主的な選択により事業範囲を決めており、多くの農協は、組合員が必要とするサービスを総合的に提供している。
指導事業


営農指導事業

生活指導事業

経済事業


組合員の生産物(農産物)の販売(販売事業)

ファーマーズマーケット農産物直売所)の運営


農業の生産に必要な肥料農薬農業機械や、生活に必要な食品など生活用品の供給(購買事業)

ガソリンスタンドJA-SSホクレンSS)・プロパンガス供給元(クミアイプロパン)の運営

スーパーマーケットAコープ)の運営

配置薬事業(クミアイ家庭薬)の運営


信用事業(通称、JAバンク


貯金貸付為替証券業の取り扱い(このため農協は小切手法においては銀行と同視されている)

共済事業(通称、JA共済


生命保険損害保険に相当。生命総合共済(医療共済、定期生命共済、こども共済、年金共済、介護共済等)、建物更生共済、火災共済、自動車共済自賠責共済などの加入とりまとめ

厚生事業


病院・診療所(厚生連病院)、保健施設等の運営

高齢者福祉事業

利用事業


カントリーエレベーターライスセンター等の運営

そのほか、冠婚葬祭(主に葬儀(JA葬祭))事業、観光・旅行事業(農協観光)、不動産仲介事業、新聞(日本農業新聞)・出版事業、市民農園、郵便窓口業務の受託(簡易郵便局)、農機の販売・整備、自動車ディーラー、建築設計、自動車学校有線放送発電など、多岐に亘る。

これは、組合員たる農家の預貯金をほぼ一手に引き受ける豊富な資金と「農協」の信用力、組合員の互選で選ばれた組合長による文字通り「地域の発展の為」の事業展開の結果である。また、生活協同組合などと違い、信用事業・金融事業を兼業することができるなどの特権を持つことも理由である。

一方で、農協婦人会や青年部等による生活改善運動は、農村の食生活や生活改善など教育の場として発展して来た。また大規模かつ安定的な需要を目当てに、各メーカーが農協専売品を用意していた(JAサンバートラックなど)。事業内容が多岐に亘ることで「農協簿記」という特殊な簿記が用いられる。他業務をカバーする勘定科目を使い、なおかつ購買や販売等については、独自の勘定科目名称を用いる。

東京都御蔵島村の御蔵島村農協のように、地域農協だが信用事業を行っていない組合も存在する。群馬県上野村の上野村農協・東京都の東京島しょ農協・大分県の下郷農協のように信用事業だけ(上野村農協は、加えて共済事業も廃止の上で)譲渡し、信用事業・共済事業を廃止したところもある。

全県1農協を目指しての合併促進がされているところもあり、奈良県沖縄県香川県島根県山口県は、すでに実現した(香川県は、信連は県域農協に包括承継させていない、島根県は、JA全農島根県本部の一部事業譲渡を受けたが包括承継はまだ)。福井県佐賀県は一部の農協が参加しなかったものの、大部分で実現した。
農協の目的

農業協同組合法によって定められており、農業生産力の増進と農業者の経済的・社会的地位の向上を図るための協同組織とされている。「平成24年度食料・農業・農村白書」においては、農協は、農産物の流通や生産資材の供給等を適切に行い、農業所得を向上させていくことが最大の使命であるとしている[12]。組合員の自主的な選択により、事業範囲を決めており、多くの組合員が必要とするサービスを総合的に提供する。加入者の大半が米作農家で、そのためJAは米を中心に活動を行っている[1]

農協の事業運営は、正組合員である農業者の意思決定により行われている。しかし、組合員以外も、一定の範囲で事業を利用することができる。組合員以外の利用の範囲は、組合員の事業の20/100。貯金の受入れ等は、25/100。加工・農村工業事業、医療・老人福祉等は、100/100である。

組合員資格

組合員資格は、各農協の定款において定められ、一般的に、耕作面積や従事日数の要件を規定している。組合員は、正組合員と准組合員に分かれる。

資格権利など備考
正組合員農業者。農協の地区内に住所を有する農民、農業を営む法人* 組合員が一人一票の議決権を持つ。
*
役員総代に選出される権利。
* 臨時総会を開く請求権。但し、正組合員の1/5以上の同意が必要。
* 組合の事業を利用する権利等。

専業農家兼業農家に議決権を公平にしたことで、効率的な農業の推進が妨げられてきたという意見もある。減反を参照。
准組合員農業者で無くてもなれる* 出資すれば、全ての事業が利用可能になる。但し、農協の地区内に住所のある個人。准組合員に議決権を認めない理由は二つ。一つは、農業者で無い者に組合を支配されない為。もう一つは、地域の住民(旧産業組合・旧農業会に於いて構成員となることができた者)の事業の利用を認めるため。

問題の提起

神門善久は、以下の問題を指摘した[1]

正組合員資格は、農業者に限られている。だが、実際はすでに離農した者が多く存在しており、土地持ち非農家などがその代表格。

准組合員においては、転居や死亡等で本人の所在が確認できない場合も、含まれる。

組合員が資格を満たしているかのチェックは、ほとんど行われていなかった。

その結果、2000年代には、本来であれば資格を持たないはずの組合員が、100万人は存在する。

総合規制改革会議でも、組合員の状況は問題視され、「規制改革推進3か年計画(再改定)」(平成15年3月28日閣議決定)において、「組合員制度の実態、員外利用率の状況等を考慮し、法令違反等のある場合はこれを是正するよう指導するなど所要の処置を講ずる」とされた。これを踏まえ、農林水産省では平成15年3月に事務ガイドラインを改正して、員外利用規制に違反があれば所管行政庁(都道府県)が是正を指導するよう徹底してきた。これに沿った是正指導が行われることになり、指導を受けた組合を中心に、積極的に員外利用者を、准組合員として組合に加入させる対策を講じた。その結果、平成20事業年度には、すべて解消される見込みとなった。
独占禁止法との関係

農協を含めた
協同組合は、一定の行為について独占禁止法の適用除外が認められている(独占禁止法第22条)。中小事業者は、単独では大企業に対抗できないが、協同組合を組織することで、有効な競争の単位となり得る。

しかしながら、農協が不公正な取引方法をした場合[注 1]または一定の取引分野における競争を実質的に制限することにより不当に対価を引き上げることとなる場合は、独占禁止法の取締りの対象となる(独占禁止法第22条但書)。

また、他の事業者や単位農協と共同して価格や数量の制限等を行うこと(カルテル)等も、(その)組合の行為とは言えないため、独占禁止法の適用除外とはならない[14]

公正取引委員会は、農林水産省と連携して、農業協同組合等の農畜産物の販売事業及び生産資材の購買事業の取引実態についてヒアリングを行うなど、実態の把握と検証を実施した。その結果、農業者は依然として大企業に伍して競争し又は大企業と対等に取引を行う状況にはないこと、農業者や単位組合は農畜産物販売及び生産資材購入について自らの判断で取引先を選択できること、適用除外制度があるために判断できない農業協同組合等の問題行為は特段認められなかったこと等から、平成23年4月までに、当該検証の結果としては、適用除外制度を直ちに廃止する必要はないとの結論に至った[15]
各国の農協

なお、日本と同様に、アメリカEU韓国においても農協に対する独占禁止法の適用除外が認められている。このため、これまで年次改革要望書日米経済調和対話など、日米二国間の経済協議において、農協に対する独占禁止法の適用除外の見直しが求められたことは無い。
評価

神門善久は、農協について幾つかの指摘をしている[1]


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