農地改革
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法律(第一次農地改革法)原案は松村の大臣就任の4日後には出来上がり、その1カ月後国会への法案が上程された(農林省には戦前からの準備があった)[4]

12月9日、GHQの最高司令官マッカーサーは日本政府にSCAPIN-411「農地改革に関する覚書」を送り、「数世紀にわたる封建的圧制の下、日本農民を奴隷化してきた経済的桎梏を打破する」ことを指示した。

第一次農地改革法は国会を通過する[5]がその後GHQに拒否され[6]、日本政府は指示により、徹底的な第二次農地改革法を作成、同法は1946年(昭和21年)10月に成立した。正確には農地調整法(1938年)の改正と、自作農創設特別措置法(1946年)及び関連法の特別会計法などである[7][8]。このようにして小作制度は廃止され、地主が所有し小作人から地代を取得していた小作地は法23条の規定に基づき交換され、いったん農林省が土地所有者として登記されてから小作人に分割されるなどした[9]

この法律の下、以下の農地は政府が強制的に安値で買い上げ、実際に耕作していた小作人に売り渡された。

不在地主の小作地の全て

在村地主の小作地のうち、北海道では4町歩、都府県では1町歩を超える全小作地

所有地の合計が北海道で12町歩、都府県で3町歩を超える場合の小作地等

また、小作料の物納が禁止(金納化)され、農地の移動には農地委員会の承認が必要とされた。

農地の買収・譲渡は1947年(昭和22年)から1950年(昭和25年)までに行われ、最終的に193万町歩の農地が、237万人の地主から買収され、475万人の小作人に売り渡された。しかも、当時の急激なインフレーションと相まって、農民(元小作人)が支払う土地代金と元地主に支払われる買上金はその価値が大幅に下落し、実質的にタダ同然で譲渡されたに等しかった[10](GHQは農地買収は正当な価格、十分な補償で行わなければならないと主張し、インフレによる物価スライド条項の導入にこだわった。しかし、和田博雄農相(松村の後、副島千八農相の短い在職期間を挟んで就任)が交渉して撤回させた[注釈 2][11])。譲渡された小作地は、1945年(昭和20年)11月現在の小作地236万町歩の8割に達し、農地に占める小作地の割合は46%から10%に激減し[12]、耕地の半分以上が小作地である農家の割合も約半数から1割程度まで減少した。この結果、戦前日本の農村を特徴づけていた地主制度は完全に崩壊し、戦後日本の農村は自作農がほとんどとなった。このため、農地改革はGHQによる戦後改革のうち最も成功した改革といわれることがある[13]

一方で、水田、畑作地の解放は実施されたが、林野解放が行われなかったことから不徹底であったとされる。ただし農地を失い困窮した地主が山林や牧場を売り払ったことで、結果として解放された場所もある[注釈 3]

この農地改革を巡っては、施行されたばかりの日本国憲法の第29条第3項(財産権の保障)に反するとして、一部の地主が正当な価格での買取を求め訴訟を起こしたが、第29条第3項でいう正当な補償とは市場価格とは異なるという解釈がされ、請求は棄却された。また、元小作人らが取得した土地は、特に首都圏郊外においては住宅地やマンション用地として売りに出されるケースがあり、結果的に農業家の減少も招いた。
特徴

日本の農地改革は、受益者が中農的性格(専業的家族経営)を帯びており、都府県平均で経営規模3反未満の零細層は、原則として買受け対象から除外されたほか、農業諸施設の買収では、生産力の向上を基準に是非が判断された[2]。「中農主義」「生産力主義」 が加味されていた点は、日本の農地改革の特質である[2]

この農地改革は、日本の有職者の約半数が農業従事者であり、同時期に施行された選挙権の大幅拡大に連動されていた側面もあった。当事者によればナチス・ドイツの世襲農場法も範とした反共政策として意図されており[14]、政府やGHQがその勢力拡大を警戒していた日本共産党共産主義の力を大幅に削ぐことになった。従来、賃金労働者と並んで日本共産党の主要な支持層であった水田および畑作地の小作人の大部分が自作農、つまり土地資本を私有財産として持つようになり、その多くが保守系政党や戦後保守に取り込まれたためである[注釈 4]

結果として小規模農家が主流となり、大規模化・効率化が遅れたという指摘もある。2000年代以降の少子高齢化により、担い手が不足し耕作放棄地が増加したため、農林水産省農地中間管理機構を組織して、農地の大規模化や農業法人での経営を促す方針に転換している[15]


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