軽井沢スキーバス転落事故
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トップトラベルサービスの乗客1組2名、フジメイトトラベルの乗客1組2名の計4名を除き[15]、あとの35名はすべて「キースツアー」のスキー客で、バスの運行は「イーエスピー」が受託したもの[16]

バスは前日夜に東京・原宿を出発し、長野県斑尾高原のスキー場に向かっていた。週末に大学入試センター試験が行われる関係で多くの大学が休講となる時期にあたり、乗客の多くは首都圏の大学生であった。事故後、一部の乗客は車外へ投げ出されていた。長野県警自動車運転処罰法違反(過失致死傷)の疑いがあるとみて詳しい事故状況を捜査した[5][17][7][18]

高崎総合医療センターに搬送された23歳の男性は意識不明となっていたがその後意識が回復したことが発表された[19]
乗員

乗員は65歳のT運転手と57歳のK交代運転手の2人で、2人とも死亡した[4]。運転手からアルコールなどは検出されなかった[20]

Kは2003年に五日市観光(倒産)運転手時代、熱海で転落事故を起こしていたほか、ESPの運行管理者Yもこの時の同僚だったという[21]

NHKの報道ではTは入社1ヶ月前に前勤務先で行った運転適性検査では「事故を起こしかねない」という診断結果が出ていた[要出典]。
死者

死者15人全員の身元が判明しており、亡くなった乗客は全員大学生であった[22]首都大学東京によると、5人が乗車し、4人が負傷、1人が安否不明となっていたが[23]、その後この1人は死亡した[24]。犠牲者の中には早稲田大学(3人)や法政大学(3人)、東京農工大学(2名)、東海大学(1名)、東京外国語大学(1名)、広島国際大学(1名)など[24]。1月16日報道時点で死因が判明している12人は、頭を強く打ったことによる頭蓋内損傷が7人、首に損傷を負った頚椎損傷が4人、全身を強く打ったことによる多発性外傷が1人となっている[25]。また、15人目の男性は重体であったが、1月18日に脳挫傷により死亡した[26][27]。遺体の検分を担当した軽井沢病院副院長によれば、「犠牲者は瞬間的に頭部へ大きなダメージを受け、ほぼ全員が即死」であった[28]。事故現場には献花台が設けられた[29]
運行会社

事故を起こした警備会社「イーエスピー」(同名の音楽会社とは全く無関係)は、2008年の会社設立当初から警備業を営み[30]、後述のように親会社の関係から近年貸切バス事業にも参入し、当時はバス7台を所有していた[4]。イーエスピーの本社は東京都羽村市で、名称は「イーグル・セキュリティ・パトロール」の頭字語 (ESP) に由来する[31]。「イーグル」は親会社で同一敷地内にある中古車販売会社の商号で、埼玉県に本社を置くイーグルバスとは無関係である。

イーエスピーが運送事業許可を得てバス事業に参入したのは2014年4月で、まだ日も浅かった[32]一般監査を受けたのは2015年2月であった[4]日本バス協会は「貸切バス事業者安全性評価認定制度」により貸切バス会社の安全への取り組みを3段階で評価しているが、イーエスピーは事業認可から2年に満たないため評価対象になっていなかった[33]

イーエスピーは事故2日前の2016年1月13日、運転手の健康管理を怠るなどの法令違反があったとして、バス1台を20日間の運行停止とする行政処分を受けていた[4]

同社は事件後まもなく社名を「S」に変更しバス事業からは撤退。社長も交代している。
事故原因

関西大学社会安全学部の安部誠治教授は「バス事故としては深刻で、この20 - 30年では最悪の事故だ」「過労運転居眠り運転がなかったか、または、心筋梗塞などで意識を失った可能性も検討する必要がある」「バス業者の競争は激しく、ドライバー不足もあって、現場に無理を強いる業者もいる。国も制度を見直して規制を強化してきたが、十分ではなく、まだまだ見直す余地はある。どこに問題があったか事故原因とともに突き詰めなければならない」と述べた[34]
従業員の健康管理と労働環境

イーエスピーは2015年2月に国土交通省の立ち入り捜査を受けており、その際、運転手の健康診断、乗務前の健康及び酒気帯び確認、入社時の適性検査などを怠っていたことが判明し、この事故の2日前の2016年1月13日に、保有するバスの1台を20日間運行停止とする行政処分を受けていた[35][36]。なお、同社は「運転手の体調や車両に問題はなかった」としている[37]が、Tは一度も健康診断を受診していなかった[38](一方、Kは健康診断を受診していた[39])。

また、外国人観光客の急増などでバスの需要が高まり、バス運転手は人手不足となっている[40]。2000年の規制緩和によって参入が容易になったことから貸切バス事業者は急増し、2000年度の2,864社から2012年度は4,536社に増え、2011年には事業者の7割以上が運転手不足と回答している[40]

人手不足と同時に高齢化が進み、2012年時点の平均年齢は48.5歳で、2002年と比べて2.9歳高くなったほか全産業の平均年齢と比べると6歳も高く、さらに60歳以上の割合は16.4%となっている。事故車の運転手も65歳で、同乗していた別の運転手も57歳であった[40]。その上、1人当たりの総走行距離の増加、年次有給休暇の取得日数減少、賃金の減額(この低賃金も運転手不足の一因になっているとの指摘もある)など、労働環境は悪化しており、こうした事情が事故に繋がったという指摘もある[41][42]


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