現代でも総人口や国家機関の人員が少ない小国の場合には軍と警察の組織が明確に分離していないことも多い。例えば、総人口が約10万人に対して軍の総兵力が518人しかいないトンガ軍の場合などは軍人の過半数が普段は警察官としての業務を行っており、軍と警察の組織が明確に分離していない。
複数の行政機関を設置するだけの経済的、人的リソースの無い小国では消防・警察の業務を軍が代行することが多い。
軍隊と社会詳細は「文民統制#社軍関係」を参照
軍隊と社会の関係は一般的に限定されたものとなりやすい。これは軍隊という組織がそもそも社会の内部で活動する組織ではないことや、軍隊そのものが平時の軍事活動の統率や防諜のために一つの閉鎖社会を形成していることなどによる。そのために軍隊と社会の関係が悪化すると軍隊への風当たりは強くなり、軍事費の縮小の機運が高まるなどの反応が起こる。このような場合には軍隊内部での綱紀粛正が重視される(一例として、自衛官の犯罪率は一貫して、日本の一般国民の一割程度を保っている)。これは上述の統率と言う観点からも必須である。また平時が続くと切迫した必要性の感覚が政治家や国民から失われるため、兵器開発や訓練、部隊維持のための費用が削減される傾向があり、場合によっては大規模な軍縮に繋がりうる。 歴史的には、7世紀末あるいは8世紀初めから11世紀までの古代日本では軍団と呼ばれる軍事組織が各地に設けられた。江戸時代末期には幕府陸軍や幕府海軍が設けられた。 明治時代になって設けられた大日本帝国陸海軍は、日清戦争、日露戦争、第一次世界大戦などで勝利を収めたが、第二次世界大戦での敗北に伴って解体された。 戦後、陸軍に代わる組織として設けられた警察予備隊は、保安庁の保安隊を経て現在の陸上自衛隊に、海軍に代わる組織として設けられた海上警備隊は、保安庁の警備隊を経て現在の海上自衛隊になっている。 日本政府は、現在の日本には日本国憲法第9条第2項に基づき「軍隊」は存在せず、その代わりの「防衛組織」である自衛隊があるとしている。自衛隊はそれぞれ他国の陸海空軍に相当する陸上自衛隊、海上自衛隊、航空自衛隊からなり、加えて自衛隊を管理・運営する防衛省が設置されている。 国外からは自衛隊が事実上の軍隊と見なされており、日本政府側でも中山太郎外務大臣の国会答弁において、「自衛隊は、憲法上必要最小限度を超える実力を保持し得ない等の厳しい制約を課せられております。通常の観念で考えられます軍隊ではありませんが、国際法上は軍隊として取り扱われておりまして、自衛官は軍隊の構成員に該当いたします[6]」と述べるなど軍隊と見なされていることを認識している。海外メディアでは陸上自衛隊を Japanese Army(日本陸軍の意)、海上自衛隊を Japanese Navy(日本海軍の意)、航空自衛隊を Japanese Air Force(日本空軍の意)に相当する語で呼ぶことがある。また、自衛隊自身も対外的に「軍」を自称することがあり、実際に2018年(平成30年)に発生した韓国軍による日本の哨戒機への火器管制レーダー照射事案の際に、哨戒機側は「This is Japan Navy(こちらは日本海軍)」と発言している[7]。 自衛隊(公式な英称は Self-Defence Force)という独自の呼称と建前は議論を呼び続けており、改称や改革論がたびたびなされる。改称の候補として自衛軍(英称は自衛隊と同じ)、防衛軍(Defence Force)、国防軍(National Defence Force)、国連待機部隊、国連待機軍[8]などがある。 これは、ある民間企業による各国の軍事力の総合ランキングである[9]。日本は軍事費(防衛費)を対GDP比率1%に抑えながら第4位である。 軍事力の指標 「軍隊」と意味が部分的に重なる類語がいくつかある。
日本の軍隊
軍事ランキング2018年の世界の軍事費を国別内訳を示す円グラフ(SIPRIによる)。数字の単位は10億米ドル
総合ランキング国最終軍事スコア現役軍人戦車軍用機攻撃ヘリコプター航空母艦潜水艦
1 アメリカ0.940.900.860.950.950.950.95
2 ロシア0.800.810.950.900.900.520.86
3 中国0.790.950.900.860.860.520.90
4 日本0.720.380.380.760.810.760.81
5 インド0.690.860.810.810.190.760.76
6 フランス0.610.330.240.670.430.900.57
7 韓国0.520.760.570.710.710.050.67
8 イタリア0.520.520.330.380.570.760.43
9 イギリス0.500.190.140.520.670.520.57
10 トルコ0.470.570.670.570.570.050.67
11 パキスタン0.410.710.620.480.480.050.52
12 エジプト0.340.620.760.620.380.050.14
13 台湾0.320.430.520.430.760.050.14
14 イスラエル0.320.240.710.330.480.050.33
15 オーストラリア0.300.050.050.100.240.520.43
16 タイ0.280.480.430.240.140.520.05
17 ポーランド0.230.140.480.190.290.050.33
18 ドイツ0.190.290.190.290.330.050.14
19 インドネシア0.120.670.290.050.100.050.10
20 カナダ0.100.100.100.140.050.050.14
ランキングに考慮された6つの要因とその重みは次のとおりである。
現役軍人(5%)
戦車(10%)
攻撃ヘリコプター(15%)
軍用機(20%)
航空母艦 (25%)
潜水艦(25%)
Source: Figure 56, Page 41, Credit Suisse September 2015[9]
類義語
「軍」は一つの軍隊全体を指す。また、軍隊の編制単位の一つ。
「軍団」は軍隊の編制単位の一つ。
「軍部」は政府・民間の文民機関の対義語として軍機関を指すのに用いられ、主に(政治的影響力を持つ)参謀や幕僚など高級将校団を指す。
「軍備」は装備や配備を指す。
脚注[脚注の使い方]
注釈^ 戦法上「遠方から識別しうる標識」を集団的に隠すこと(すなわち、有しないこと)はあり、また、国家によって運営されている正規軍でも実際上は戦争法規を遵守しないことも時としてあることは広く知られている。だが、そのようなものでもやはり「軍隊」と呼ばれている
^ これはこれで、実態とはそぐわないケースもある。
^ 孫子 (書物)謀攻篇第三に曰く、百戦百勝は善の善なる者に非ざるなり。戦わずして人の兵を屈するは、善の善なる者なり。q:孫子
^ 陸軍の基地は戦術上必要な点に置かれるため、平時に駐屯する場を基地とは言わない。ただし、日本陸軍では永久に一つの地に配備駐屯する地を衛戍地といい。アメリカ陸軍においても同様の地をフォート(砦)と表記している。
出典^ “軍隊(ぐんたい)の意味
^ 『世界大百科事典』より
^ a b 『世界大百科事典』より
^ 服部実『防衛学概論』(原書房、1980年)を参照
^ 防衛大学校・防衛学研究会『防衛学研究』第34号、2006年3月、108-112頁を参照
^ 平成2年10月18日第119回臨時国会衆議院本会議における中山太郎外務大臣答弁。
^ 韓国海軍艦艇による火器管制レーダー照射事案について - 韓国海軍の艦艇へ英語で呼びかける際にJapan Navyと発言している。
^ ⇒民主・菅代表、国連待機軍を提唱へ 自衛隊と別組織で2003年12月30日、朝日新聞
^ a b .mw-parser-output cite.citation{font-style:inherit;word-wrap:break-word}.mw-parser-output .citation q{quotes:"\"""\"""'""'"}.mw-parser-output .citation.cs-ja1 q,.mw-parser-output .citation.cs-ja2 q{quotes:"「""」""『""』"}.mw-parser-output .citation:target{background-color:rgba(0,127,255,0.133)}.mw-parser-output .id-lock-free a,.mw-parser-output .citation .cs1-lock-free a{background:url("//upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/6/65/Lock-green.svg")right 0.1em center/9px no-repeat}.mw-parser-output .id-lock-limited a,.mw-parser-output .id-lock-registration a,.mw-parser-output .citation .cs1-lock-limited a,.mw-parser-output .citation .cs1-lock-registration a{background:url("//upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/d/d6/Lock-gray-alt-2.svg")right 0.1em center/9px no-repeat}.mw-parser-output .id-lock-subscription a,.mw-parser-output .citation .cs1-lock-subscription a{background:url("//upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/a/aa/Lock-red-alt-2.svg")right 0.1em center/9px no-repeat}.mw-parser-output .cs1-ws-icon a{background:url("//upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/4/4c/Wikisource-logo.svg")right 0.1em center/12px no-repeat}.mw-parser-output .cs1-code{color:inherit;background:inherit;border:none;padding:inherit}.mw-parser-output .cs1-hidden-error{display:none;color:#d33}.mw-parser-output .cs1-visible-error{color:#d33}.mw-parser-output .cs1-maint{display:none;color:#3a3;margin-left:0.3em}.mw-parser-output .cs1-format{font-size:95%}.mw-parser-output .cs1-kern-left{padding-left:0.2em}.mw-parser-output .cs1-kern-right{padding-right:0.2em}.mw-parser-output .citation .mw-selflink{font-weight:inherit}O’Sullivan, Michael; Subramanian, Krithika (17 October 2015). The End of Globalization or a more Multipolar World? (Report). Credit Suisse AG. 2018年2月15日時点の ⇒オリジナルよりアーカイブ。