軍隊
[Wikipedia|▼Menu]
マキャヴェリは、それまで傭兵団に依存していたイタリアの軍事力を批判して、市民から構成される常備軍の必要性を主張し、彼の軍事力を重要視する現実主義の政治哲学と共に、この考え方は広くヨーロッパに普及した。また、軍事教練を段階的に実施して、部隊の錬度を高める教育法を論じた。
国民軍への変化

軍隊の組織が大きく変化した契機となった事件にフランス革命がある。フランス革命は貴族軍という従来の軍制を覆して国民軍に変化した。フランス革命の後に勃発したナポレオン戦争においてナポレオン1世徴兵制によって膨大な兵力を集中的に運用する戦法でヨーロッパでの覇権を確立した。これは当時のジョミニクラウゼヴィッツ等の軍事学者たちに大きな衝撃を与え、ナポレオンの戦史研究が進み、国民軍の必要が各国政府で認められ、徐々に広まっていった。軍人に求められる専門性が飛躍し、それまでの貴族軍人の制度は廃れ、専門知識や技能を身に着けた職業軍人が軍隊で台頭した。

国家制度の改革、徴兵制の普及、軍法兵站制度の確立、兵器の大量生産体制の充足等によってヨーロッパ諸国の軍隊は近代化された国民軍に成長した。蒸気機関の開発によって軍艦の技術が高度化し、海軍の常備化も進む。そのために、20世紀における第一次世界大戦では、西欧諸国は長期に亘る大規模な戦闘を継続することが可能となり、続く第二次世界大戦では、戦場から離れた国民までも軍事産業に動員し、戦略爆撃通商破壊作戦で住民や商船までもが攻撃されうるという、国家の総力を挙げた総力戦を戦うことが可能であった。
現代の軍隊

第一次世界大戦から使用されてきた航空機は、改良が重ねられて大きな軍事力の一角となったために、独立した空軍が創設され、さらに核兵器ミサイルなどの新しい軍事技術をも管理する組織になった。また旧来の軍隊が想定していた国家同士の大規模な戦闘ではなく、ゲリラ、テロ、コマンド部隊による攻撃などの新しい脅威に対抗することも求められている。主要国は技術の進展に合わせ、宇宙軍やサイバー部隊なども編成している。

民主国家では軍隊も予算に縛られており、兵器や技能などの「質」を高めることで人件費を減らす、分化された兵科の整理や陸海空を統合的に運用する統合軍などによりコンパクト化を進めている。
日本における発達史

奈良時代645年大化の改新伴造が組織され、7世紀には全国的に軍団として編制した。大宝律令養老律令によって中央に兵部省、首都に五衛府、地方に軍団・鎮守府防人を配備した。鎌倉時代鎌倉幕府では全国の御家人を戦時に運用する体制を整えて元寇を戦った。国内が内戦状態に陥った戦国時代においては集団戦法が主流となっていたために軽装の歩兵である足軽が登場する。当時の小銃の技術や築城技術の発達、また、安土桃山時代に入り織田信長豊臣秀吉兵農分離刀狩りを進め、江戸時代徳川幕府の体制で社会的身分としての武士身分が確立された。

江戸幕府では大名寄合旗本御家人が組織化されているが、大きな軍制の変化はない。しかし1853年マシュー・ペリー黒船来航に伴い西洋の知識が流入すると、フランス式の軍制が幕府軍に導入され始める。明治維新の後に軍制改革は特に活発化し、明治時代に大日本帝国陸軍および大日本帝国海軍(旧日本軍)を組織し常備軍徴兵制度を推進する。廃藩置県で日本の軍事力を鎮台として編制するが、後にこれは洋式軍制の模倣をして師団として再編される。1873年には徴兵令を発令して国民皆兵を導入し、日清日露戦争で軍備を増強した。

大正時代での第一次世界大戦で戦勝国の一員となり軍事大国として国際的地位をより確立させるが、昭和時代の第二次世界大戦後、全日本軍の無条件降伏を要求したポツダム宣言を受諾した日本の軍備は連合国軍最高司令官総司令部(GHQ/SCAP)の占領政策によって解体されたために不在であったが、朝鮮戦争を機に警察予備隊海上警備隊が創設され、保安隊警備隊を経て専守防衛を旨とする自衛隊陸上自衛隊海上自衛隊航空自衛隊)が発足し、現在に至る。
原理
存在意義

軍隊は、政治の実行手段の一つである軍事を司る。軍隊を保有することで、他国からの急迫不正の侵害を抑止し、保有戦力に相応した外交関係が保障され、国内政情を安定化する働きをもつ。

カール・フォン・クラウゼヴィッツは『戦争論』において、戦争の本旨とは、武力による実力行使であり、戦争を行う機関である軍隊は国家間の武力衝突を制御する組織と述べている。またマックス・ウェーバーの、国家とはある領域での合法的な武力行使を独占する集団、として定義する考えの中にも、軍隊がこの合法的な武力の行使を担当する組織、という意味が含まれていることになる。これら思想に見られるように軍隊は物理的な強制・加害行為をなしうる執行機関であり、国家権力の主要な権力資源である。

このような軍隊の存在意義についての議論は、古く古代ギリシアにまで遡ることができる。古代ギリシアの哲学者プラトンは、国家の独立を維持するためには、国の自足性が重要だと考えており、外国に軍事力や経済力で依存することはその国と従属関係を結ぶことになると論じ、国家が独自的な軍事力を持つことの必要性を説いている。この考え方は、近世ヨーロッパのにも通じており、実際に中世都市国家フィレンツェでは、傭兵のみに国防を任せることによって(傭兵が給料目当てでわざと戦争を長引かせて)国力が衰退した。その末期に生まれた外交官ニッコロ・マキャヴェッリは、自国民から編制された常備軍のみが信頼に足る国防力と論じ、外国軍や傭兵に依存した国の惰弱さを論じている。
機能

軍隊の機能は、大きく分けて武力の執行と武力による抑止という二点が挙げられる。武力の執行は「敵」と設定された相手を直接的に加害行為することであり、これは軍隊という組織の基本的な存在意義でもある。この武力の執行の政治的な意義は、国家の目的達成に寄与することであり、侵略や防衛などの安全保障政策のために運用される。敵の撃滅は軍事的合理性の上で行われる限りは戦時国際法により認められるが、この場合の敵とはすなわち交戦者資格を持つ敵軍であり、民間人や民用物に対する加害行為は認められていない。第二に上記の能力が持つ可能性によって「敵」からの侵略などの軍事行動を抑止することである。この武力による抑止は古来より存在していた[注釈 3]が、体系的に理解されたのは米国とソ連が核兵器を相互に配備した冷戦期であり、また国際関係において軍隊は国家の政治意思を反映したプレゼンスやパフォーマンスとしても機能している。以上のように物理的で具体的な暴力行為を行うこと、あるいはそれを行う潜在力があることにより対外的に抑止を行うことである(軍事力の項目も参照されたい)。
自己完結性

自己完結性とは、軍隊が食料エネルギー燃料電源)・通信・移動などの生存、ひいては作戦行動の遂行に必要なインフラを自分たちで用意する能力である。

軍事施設には武器弾薬、発電施設や通信施設などが常に維持・保管されており、一定の自己完結性を維持している。これは戦争においてインフラが破壊された地域、また砂漠山岳荒野などのインフラが元々無い地域で作戦行動をすることもあることを想定しているためである。

インフラが破壊され、消防が活動できなくなる大規模災害において軍隊が有用な理由はここにある。さらに軍隊では部隊の構成員や物品が不足した場合を考慮し、その能力を代替できるように準備がなされている。これは殊に指揮系統の維持は統率上の観点からも最重要とされる。

自衛隊においては、超長波や衛星電波を利用した(既存の電話回線やインターネットに頼らない)通信システム、各基地・駐屯地における燃料の確保の他、

食料:戦闘糧食II型野外炊具1号(改)


次ページ
記事の検索
おまかせリスト
▼オプションを表示
ブックマーク登録
mixiチェック!
Twitterに投稿
オプション/リンク一覧
話題のニュース
列車運行情報
暇つぶしWikipedia

Size:83 KB
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
担当:undef