軍隊における階級呼称一覧
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これらの一部には律令制近衛府衛門府兵衛府鎮守府などにおける四等官の官職名や漢籍に掲載されている古代中国の官職名にも見られる名称が用いられた[注 8] [注 9] [注 10]

日本語では軍人の階級呼称は、海兵隊員海兵隊軍人)を除いて「陸軍大将」「海軍大将」「空軍大将」のように軍種と階級を組み合わせて呼ぶのが一般的である。

海兵隊員の階級は「海兵大将」のように「隊」の字が削られることがある。ただし、第二次世界大戦後、特にアメリカ海兵隊の階級呼称については「海兵隊大将」のような表記も見られる。

西洋語表記に準じて、陸軍、空軍、海兵隊等の将官を将軍general、ゼネラル/ジェネラル)、海軍等の将官を提督[注 11](admiral、アドミラル)と呼ぶことがしばしばある。
現代の分類

ほとんどの現代の軍隊では階級を大きく3種類に区別している。それらはジュネーヴ諸条約で、いくぶん曖昧な区分「士官」、「下士官」及び「兵」として区別されている。

以下に個別の詳細を示す。
士官・将校

士官、ないし将校は、職権の保持によって、他の軍人から区別される。士官は指導者や指揮権保持者として訓練される。この2つの語はほぼ同義であるが、厳密には異なる場合もある。詳細はそれぞれの記事参照。

士官・将校はさらに「将官」、「佐官」、「尉官」の3段階に分けられる。
将官

長期間にわたり単独で作戦を実施することが期待される典型的な部隊や編制旅団以上の部隊や艦隊戦隊等)を指揮する士官が将官である。将官の階級は、典型的には大将中将少将准将が含まれる。ロシアやかつてのドイツでは上級大将が置かれた。

いくつかの軍では、元帥のように、別の肩書きを付与された上記の例より上位の階級が一つ以上ある場合がある。それらの階級はしばしば、ドイツカナダのように廃止されたり、あるいはイギリスアメリカ合衆国のように戦時や名誉昇任に制限されたりすることがある。

いくつかの肩書きは純粋には階級ではなく、将軍の職務や、名誉的な肩書きである。実例をあげると、フランス陸軍では、軍将軍/陸軍大将General d'armee)及び、軍団将軍/陸軍中将(General de corps d'armee)は師団将軍/陸軍少将General de division)の職務である。またフランス元帥(Marechal de France)は最高司令部の官職に由来するが、フランス元帥に授与された実務上の指揮権はしばしば失われた。
佐官

佐官は、単独で短期間の作戦を実施できることが期待される典型的な部隊(大隊及び連隊、大型軍艦、飛行戦隊)を指揮する上級士官である。佐官は一般的には参謀の職務もつとめる。

典型的な佐官の階級には大佐中佐少佐が含まれる。多くのイギリス連邦の国では、最上級の佐官(Brigadier)が旅団長 をつとめる。准将(Brigadier General)がその職務をつとめる国もある。一部の海軍では代将(Commodore)の階級も使用される。

日本の律令官制では、「佐(サ/すけ)」は、「大将」(「督」に相当)の下位、「中将・少将」と同等の武官であったため(詳細は近衛府を参照)、平均すると軍全体を指揮する「将」の下位であるということから、この字が充てられたのであろうと思われる。

しかしながら、「佐」とは文字通り「補佐」の意味である。漢字文化圏では、参謀や副官、副指揮官ならともかく、部隊指揮官の階級(とくに前近代のヨーロッパでは傭兵隊長と連隊長はほぼ同義であった)としては違和感がある。そのため中国語圏では、「佐」ではなくて「校」が用いられる。事実上は日本軍の下位組織であった満州国軍においても、中国式の訳語が踏襲された。古代中国の前漢では、将軍の下位の部隊長クラスの官位として「校尉」があり、ここから取られている。また、上記の「将校」の語も、将官と校官を総称した意味である。

指揮官クラスの人材を指す「将領」という漢語があるためか、韓国軍では、「あずかる」という意味を持つ「領」の字が充てられている。
尉官

尉官の階級は3つか4つの最下級士官の階級である。配下の部隊は、単独で長時間の作戦を実施することを一般的には期待されていない。いくつかの部隊では尉官も参謀の役割をつとめる。

典型的な尉官の階級には大尉中尉少尉が含まれる。イギリス海軍のように二階級式を取っている場合もある。

日本の律令官制では、大尉・少尉は、佐より下位の官位であったために、この字が充てられた。古代中国の前漢においては、太尉は軍事を担当する官位の最高位であった。その後の中国では太尉という官職は消滅し、中国人民解放軍と中華民国国軍でも尉官はこの字が充てられている。
准士官

准士官はそれぞれの国や軍種で扱われ方が少し異なる混合した階級である。准士官は、精鋭の上級下士官であったり、士官と下士官の間の完全に分離された格付けであったりする、通常は専門職の階級である。
下士官・兵

下士官・兵は士官や准士官の下の階級であり、軍人の大多数を構成する。
下士官

下士官は、士官の指揮の下で、他の軍の構成員を監督する代理権限を許可され重要な監督責任を負う。

上級下士官は尉官よりも軍歴が長いことが多く、上級下士官が公式にもつ責任と非公式に受ける敬意は尉官に勝るとも劣らない場合が多い。いくつかの国では、准士官の階級は専門職に対する階級とし最も功績ある下士官に対する階級を下士官に留めおく場合もある(最先任最上級曹長など)。

下士官の階級は典型的にはかなり多くの格付けの曹長、軍曹、伍長(陸軍、海兵隊と空軍)、兵曹(海軍と沿岸警備隊)である。

指揮権限がないは通常は○○兵のような肩書きをもつ。いくつかの国や軍種では、異なる兵科では肩書きも異なる。兵の階級には様々な格付けがあるかもしれないが、しかしそれらは通常は権限が増えるのではなく給与の変化を反映しているに過ぎない。これらが技術的に階級であるかどうかは、国や軍種による。
階級符号
NATO階級符号

北米と西欧の多国間軍事同盟である北大西洋条約機構(NATO)では、STANAG 2116で「NATO軍人階級符号」(the NATO codes for grades of military personnel)を制定している。STANAG 2116の別表では加盟各国の軍隊の階級と NATO 階級符号との対応が定められている。

士官:OF-1からOF-10(昇順)。英語のOfficersに由来する。

見習士官:OF(D)。英語のOfficers Designateに由来する。

准士官:WO-1からWO-5(昇順)。英語のWarrant Officersに由来する。

その他の階級:OR-1からOR-9(昇順)。英語のOther Ranksに由来する。

NATOではOR-5からOR-9に含まれる階級は下士官とみなされるが、加盟各国の軍隊の下士官の範囲とは必ずしも一致しない。なお、一般的な制度における准士官は上級の下士官として「その他の階級」に含まれるが、ギリシャ軍イタリア軍ポーランド軍ルーマニア軍及びアメリカ軍の准士官は、少尉と下士官の間の「士官」にも「その他の階級」にも含まれない独立した階級である。そして、NATOは事実上アメリカ合衆国を盟主とする軍事同盟であるため、米軍のシステムに合わせて准士官の階級符号は別に設けられている。
アメリカ軍給与等級

アメリカ軍では軍人の基本給と階級の対応付けに使用する連邦政府規準として給与等級 (pay grade) を定めている。この給与等級はアメリカ合衆国連邦政府における職階制給与制度に含まれる。

士官:O-1からO-11(昇順)。英語のOfficersに由来する。O-1とO-2はNATO階級符号のOF-1に、O-3以上はそれぞれNATO 階級符号 OF-2以上に相当する。

准士官:W-1からW-5(昇順)。英語のWarrant Officersに由来する。W-1からW-5はそれぞれNATO階級符号のWO-1からWO-5に相当する。

下士官兵:E-1からE-9(昇順)。英語のEnlisted personnelに由来する。E-1からE-9はそれぞれNATO階級符号の OR-1からOR-9 に相当する。

アメリカ軍の下士官はE-4以上に分類される。ただし、兵であってもE-4以上に分類されることがある。
社会主義国における階級制度の廃止

ソビエト労農赤軍1918 - 1935年)、中国人民解放軍1965 - 1988年)、及びアルバニア軍(1966 - 1991年)などの社会主義国の軍隊では、社会主義の理念から、自国の軍隊を帝国主義諸国の軍隊と区別するために、軍隊の階級制度を廃止した。ただし、いずれの場合も、よく誤解されるように軍隊の職制(司令官・師団長など)を廃止したわけではなく、指揮命令系統自体は存在した。

これらの諸国では後に階級制度は復活し、現在はほとんどの社会主義国の軍隊に階級制度が存在している。しかし、朝鮮人民軍のように「階級」ではなく「軍事称号」という名称を使っている例もある。厳密にいえば、赤軍の階級制度の「廃止」の場合も、「将軍」(: генера?л)を「司令官」(: команди?р)とするような言い換えにすぎなかった。


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