軍事
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リデル=ハートは優勢な戦力を以って正面から敵を圧倒するのではなく、このような戦略的な機動を重要視していた[16]。リデル=ハートの戦略理論には導入された大戦略の概念や間接アプローチの軍事思想は最小限の戦力で戦争に勝利することの可能性を示している。
戦術

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詳細は「戦術」および「作戦」を参照

戦術 (Tactics) とは戦闘において戦闘力を効果的に運用するための科学、または技術であると考えられている[注釈 39]。その作戦の形態の相違から戦術学では陸軍の戦術、海軍の海戦術、空軍の航空戦術に分類されて研究される。どれほど優れた戦略であっても、その実行には優れた戦術をも必要とする。戦闘を効率的に指導するためには優勢な戦力を投入するだけではなく、それら戦力を状況に応じて適切に運用することの重要性が知られている。戦術の黎明期においては戦闘隊形の重要性や戦場機動の方式が研究されていなかった。しかし古代ギリシアのファランクスと呼ばれる歩兵の密集隊形を活用した戦闘法が導入され、また騎兵部隊が決定的な打撃力として戦場に登場すると戦闘陣形の選定や防御戦闘と攻撃戦闘の連携などの戦術的な選択肢が広がることになった。

劣勢でありながらも優れた戦術家の力量によって勝利した有名な戦史がある。マケドニアの国王アレクサンドロス3世(大王)はその戦術家の一人であり、ペルシア遠征でのガウガメラの戦いにおいてはペルシア軍に対して劣勢でありながらも敵部隊を誘致することで敵中央の戦力を希薄化させ、その地点に対して突破を実施したことで勝利することができた。またポエニ戦争においてはカルタゴの将軍ハンニバルカンナエの戦いで采配を発揮し、優勢なローマ軍に対して歩兵部隊の防御戦闘と騎兵部隊の包囲機動を組み合わせて模範的な包囲殲滅を実践してみせた。またプロイセンの国王フリードリヒ2世七年戦争ロイテンの戦いで優勢なオーストリア軍の横陣に対し、地形で部隊を隠匿しながら迅速に側面に接近し、側面攻撃をしかけることで勝利することができた。ナポレオン戦争ではフランスの国王ナポレオン1世は優勢なオーストリア軍とアウステルリッツの戦いで衝突したが、意図的な防御と後退行動を組み合わせて敵部隊を誘致した後にその中央を突破することで勝利を収めた。これらの戦史はいずれも戦力の劣勢を運用によって補っており、またその実施が成功したことから戦術的に高く評価されている。

スイスの軍人アントワーヌ・アンリ・ジョミニが『戦争概論』で示した戦術理論の体系は近代における戦術学の起源として示すことができる。なぜならば、ジョミニは戦場での勝利にとって不可欠な行動の原則が戦術には存在すると捉えることで、その原則をさまざまな戦闘状況に適用する方法を理論化した。ジョミニの学説は世界各地の士官学校の教範類で採用されており、戦力の集中や戦場での機動などの原則に関しては戦術学の基礎知識として普及した。このような原則はイギリスの軍人ジョン・フレデリック・チャールズ・フラーによってさらに発展させられ、目的、主導、統一、集中、機動、節約、警戒、奇襲、簡明から成る戦いの諸原則として整理された。戦術的な戦闘行動である攻撃防御についても、攻撃が主導的で能動的な戦闘行動である一方で戦力の消耗が激しく、逆に防御は従属的で受動的な戦闘行動でありながらも、消耗が少ないなどの特性が明らかにされていった。そして戦術研究が進むにつれてさらに戦闘陣形や戦闘行動を表す戦術用語や戦術的決心に求められる状況判断の思考法が確立されていった。
兵站詳細は「兵站」および「後方支援」を参照

兵站とは作戦中の部隊の活動を後方から支援する方法であり、具体的には物資の補給、兵器の整備、輸送の管理、衛生業務などの業務を指す。兵站は古来から戦争の勝敗を左右する重大な考慮事項であり、その基本的問題とは後方における根拠地の補給物資により、後方連絡線の輸送力を通じて、前線における部隊の補給所要を充足させることである。しかし根拠地での補給物資の不足、敵による後方連絡線の遮断、戦闘での戦力の消耗の増加などによって兵站の現実はより複雑である。したがって兵站とは単なる輸送計画ではなく、融通性、継続性、強靭性、効率性、創造性が求められる活動であると捉えなければならない。戦争において生じる不測事態に兵站は臨機応変に対処しなければならず、敵の妨害に直面してもその活動を維持しなければならない。さらに兵站問題として有限な物資を部隊にどのように配分するかという効率化の問題もある。しかも兵站は戦場の突発的な障害に即応するために創造的な問題解決が迫られる場合もある[注釈 40]

軍隊において兵站が体系化された背景には作戦や装備の複雑化がある。ジョミニは軍が行軍する際に兵站監が考慮しなければならない事項を列挙しており、それは交通路の選定、補給処の警戒、行軍の管制、輸送手段の確保、宿営の計画など細部に渡っている。図上での軍事作戦を具体化するためにはこのような緻密な兵站活動が必要であり、ジョミニは兵站学をあらゆる軍事知識を応用する科学であると捉えている。兵站の重要性については戦略、戦術との関係性からも検討することができる。アメリカの軍人ジョージ・C・ソープは『純粋兵站学』において戦争を演劇に例えて論じており、戦略が演技を指導する脚本であり、戦術が役者の役割であるならば、兵站とは舞台や備品、小道具を準備することであると位置づけた。つまり卓越した戦略や優れた戦術は兵站によって根拠付けられていると考えることができる。しかし兵站が重要であることがわかったとしても、軍事史において現実の兵站が計画通りいかなかった事例は数多い。この歴史的事実はマーチン・ファン・クレフェルトは『補給戦』において明らかにしており、つまり知性を活用したどれほど綿密な兵站の計画であったとしても、クラウゼヴィッツが提起した戦争での摩擦の力で常に破壊されるのである。兵站の使命とはそのような障害を克服して部隊を支援することであり、軍事にとって末端の研究領域ではなく、むしろ本質的な研究領域と見なすことができる。

兵站の活動を機能別で分類すると補給、輸送、整備、衛生に大別することができる。後方地域で遂行される支援はさらに多種多様であるが、これら四種類の業務は部隊の戦闘力を維持する上で特に緊要なものであると言える。補給とは部隊に対して行われる食糧、燃料、弾薬、医薬品等の消耗を提供することであり、補給所要の算定、補給物資の入手、補給物資の配分などの段階を踏んで行われる。また整備は車両や航空機、艦艇の状態を使用可能な状態に維持することであり、装備の破損状況によって使用部隊の整備、整備部隊の整備、外部委託の整備が行われる。輸送は人員や装備、物資の位置を適時において適所に移動させることであり、その地形や敵情に応じて陸海空の交通手段が選定され、安全性と秘匿性、迅速性と輸送力などの観点から判断されることになる。衛生は戦闘などで生じた人的戦闘力の消耗を回復するための活動であり、前線の部隊での処置、または後方の野戦病院での処置などが行われ、回復した兵員を復帰させる機能がある。


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