軍事
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その理由として航空機が持つ飛距離が拡大したことで敵の前線を超えて後方地域に戦略爆撃を行うことが可能になったためであり、そのため制空権の争奪がこれからの戦争の主要な基軸となるためであった[14]。同様にアメリカの軍人ウィリアム・ミッチェルも『空軍による防衛』においてこれからの戦争の主力は航空戦力であり、独立空軍の創設を主張している。彼らの主張は当初は支持されなかったが、第二次世界大戦で航空戦力の有効性は認識されるようになる[15]。イギリスの軍人ウィリアム・テッダーは第二次世界大戦での航空戦力の働きを踏まえて、『戦争における空軍力』で航空優勢が陸海空いずれの作戦にとっても不可欠であると述べて航空戦力の普遍的な重要性を論じた。

航空戦力の本質にあるものは航空機であるが、この航空機もその偵察、戦闘、爆撃などの目的からさまざまな設計が施される。軍用機の種類としては偵察機戦闘機攻撃機爆撃機電子戦機空中給油機などの種類がある。しかし航空機の航空能力を継続的に発揮するために必要な航空基地も不可欠な要素である。航空基地での航空管制や後方支援の機能により航空機は航行が可能となる。航空機は戦術的機能を統合した航空団などに編制され、航空偵察、対航空作戦、航空阻止、近接航空支援、戦略爆撃などの航空作戦で運用される。
経済基盤詳細は「経済力」を参照

戦争能力は軍事力だけでなく経済的要素は国力の重要な構成要素である。なぜならば、経済が成長していれば政府は増加する税収から財政における軍事費の割合を拡大することが容易となるからである。ただし財政における軍事費の問題はいわゆる大砲とバターの支出がトレードオフの関係にある問題として把握されており、したがって自由主義の観点からしばしば軍備は民生を圧迫する危険性が指摘される。一方でケインズ主義の立場に立てば軍拡は公共事業の一環として考えることも可能であり、このように拡大する軍需で成長した軍需産業の構造は軍産複合体と呼ばれる。戦争能力における経済力とは軍事力の要素である兵器を供給するための労働力や資源、生産設備、資本などから判断できる。戦争に必要な経済力を獲得するために社会主義的な経済統制が実施される場合があり、戦時動員や配給制が具体的な施策として導入することができる。逆に敵の経済力を低下させるための政府や軍隊の経済対策として、経済制裁通商破壊海上封鎖、航空封鎖、市場価格への介入などが実施することが可能である[注釈 35]

経済と軍備の関係について検討した経済学者にイギリスの経済学者アダム・スミスがいる。スミスは『国富論』で市場経済の自由放任が財を適切に配分する原理を論じた。そして経済の自然な成長や植民地の運営のためには軍事力や行政能力が必要であり、またこれらは政府の財政状況に応じた規模に調整することを主張している。軍事力の造成のために必要な産業政策を論じたアメリカの政治家アレクサンダー・ハミルトンは軍務経験に基づいてアメリカの工業の保護を主張する『製造業に関する報告』を著している。この考えた方は後にドイツの経済学者フリードリヒ・リストに受け継がれ、ドイツが自給自足をするために必要な産業を育成しなければ、戦争には対応できない危険性を指摘している。このような戦争に必要な産業を育成する経済政策は世界大戦中に各国で総動員体制の導入に伴って遂行されることになる。
軍事ドクトリン
安全保障政策詳細は「安全保障」を参照

安全保障の概念とは、これはある主体が自らにとってかけがえのない何らかの価値を、何らかの脅威から何らかの手段によって守る、と定義できる[注釈 36]安全保障政策には大別して三つの主要な学派があり、それは軍備の維持増進によって敵対勢力との勢力均衡を維持する重要性を強調する現実主義の学派、経済的な交流を通じて彼我の相互依存を高めることを重要視する自由主義の学派、そして地球全体を統合された国際共同体と見なし、紛争予防と平和維持のシステムを準備し、人間と地球の安全を保障することの意義を主張するグローバリズムの学派の三つがある。つまり安全保障政策は何の価値を重要視するのか、またどの方法が適切であるかに関して論争的でありうる複雑な問題である。したがって、安全保障政策は軍事戦略の政治的コンテクストを形成するものであり、その方針によって兵員や兵器の定数、指揮系統や部隊編制の内容、また戦争における軍事戦略や作戦計画などが決定される。
戦略詳細は「戦略」を参照

戦略とは戦争において目的を達成するためにどのように行動すべきかを指し示した準備、運用、計画であり、またそれを策定するための理論または技術を言う[注釈 37]。しかしながら、戦略の概念は軍事思想史において論争的であったために画一的な定義が定まっているわけではない。その時代や地域の情勢によって戦略の概念はさまざまな文脈で用いられてきており、論者によってその内容は異なっている。しかしながら、戦略に基づいた思考は単に局地的な戦闘に勝利するだけでなく、より幅広い視野から戦争に勝利する意義があることは戦略家によって認められている。戦略という用語が普及する以前からそのような思考法の重要性は指摘されてきた。


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