軍事力
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これら様々な政策に整合性を持たせおき、戦時に効率的に機能させることは実質的な軍事力に大きくかかわる。現代における戦略にはいくつかのレベルがあり、政治、経済、外交、文化宗教など平時から国民生活に深く関わる要素を政府が総合的に考慮したものが国家戦略、その下部にあるものが軍事戦略となる。この軍事戦略の場において、普段からの抑止力の維持や有事のための部隊の運用法を策定し、準備する。この戦略が合理的に確立されていれば、軍事力に関わるさまざまな決断を一定の方向性と迅速性を持って決定することができる。なお、戦略という用語そのものには、時代や地域によって考え方や定義が異なるので注意を要する。
指揮統制システム
軍事力の神経とも言うべき国、あるいは軍隊の情報システムである。指揮統制システムとは情報収集によって得た情報を速やかに伝達し、その情報を適切に処理分析した上で上層部が判断し、その命令が滞りなく下部組織に伝達されるまでの一連のシステムを指す。具体的には早期警戒衛星などの人工衛星や防空のためのレーダー施設などの、目にあたる部分、前線部隊などが装備する通信機器による神経にあたる部分が指揮統制システムを支えている。このシステムの精度によって指揮官と末端の連携や、制御などの要素が左右される。近年、コンピュータの技術の発展が著しく、アメリカ軍などの再編計画に見られるようにこの分野の変革が大きく進んでいる。米軍はこれをC4ISRと表現し、その改革に重点を置いている。具体的にはCommand(指揮),Control(統制),Communication(通信),Computing(コンピューター),Intelligence(情報),Surveillance(監視),Reconaissancce(偵察)の7項目に関する改革である。こうした指揮統制システムに欠陥があれば、戦時での部隊の運用や現状把握において大きな不利益を被ることとなる。
大量破壊兵器
その威力から戦略的な意味で特別視される。特に核兵器がもつ破壊(殺戮)能力は通常兵器のそれを凌駕するとされ、安易に使用すると核戦争を誘発してしまう可能性がある。したがって抑止力という概念的な軍事力と考えるのがほとんどであり『ヒロシマ』『ナガサキ』という核の黎明期での実験的な意味を込めた例を除いて実戦では使われていない。また核兵器に限らず生物兵器化学兵器という脅威も存在し、特にこの生物、化学兵器はそのクオリティを問わなければ日本のオウム真理教のような過激派組織でも製造できてしまうなど(核兵器に比べれば)入手が容易であるため「貧者の核兵器」と呼ばれることもある。これらの大量破壊兵器はNBC兵器とも言い、その使用によって引き起こされた被害をCBRNE災害と呼ぶ。
情報機関
情報面における二次的な軍事力の構成要素である。情報機関が行う諜報活動、例えばシギントヒューミントオシントなどから得られた情報は分析を通じて国家による意思決定をより的確なものへ昇華させ、また主に現場部隊が行う偵察スパイの行う諜報によって得られた情報を迅速に部隊に伝達することで、効率的な戦力運用も可能となる。また戦時における機密保持、防諜は、国家の意思決定における情報漏洩防止をはじめ、現場部隊レベルの戦術立案にも関わる重要事項である。
後方支援兵站
軍隊のあらゆる活動を支える非常に重要な要素。[要出典]大部隊であればあるほど、また部隊が機械化されていればいるほど、前線で必要となる物資は種類・数量ともに増加するので、国家間の戦争においては兵站の優劣がその勝敗までをも非常に大きく左右するとされる[要出典]。特に、戦争に参加する国家などの策源から遠く離れた地域での戦闘においては非常に大きな意味を持ち、必要な兵站の規模によっては経済財政に変化をもたらす。大規模兵力をその国家から離隔した地域に投入するときは兵站も大規模にならざるを得ないので、その分の食糧、武器弾薬が必要になり銃後の国民と前線の兵士双方の生活が圧迫されるのである。なお、時代や国によっては通信をはじめとした各種後方連絡線の機能もふくめて兵站(Logistics)と呼ぶ。
技術力(軍事技術
軍事力の構成要素である軍隊の兵器の発展に非常に大きく貢献し、兵器の能力は陸軍の戦車、海軍の軍艦、空軍の戦闘機といった主要装備品の能力、ひいては兵士個人の生存率にも大きく影響する[要出典]ため、米国などの先進国ではこの軍事力の基盤たりえる技術力を戦略上重要なものと位置づけ[要出典]、国家的な技術開発を推し進めている[要出典]。 
運用

軍事力の運用にはさまざまな手法が存在し、災害復興支援から総力戦までのいくつかの段階がある。また、その目的も多岐にわたる。
軍事力

軍事力の使用は現代の国際法において原則的に禁止となっている武力攻撃(armed attack:国家に対して武力を以て攻撃すること)や武力行使(use of force:武力を使用すること)にあたらないように注意を要する[要出典]が、幅広い強制力と影響力を持つ有用な手段である。軍事力は国際関係政治社会経済などさまざまな要素に大きな影響を与えるものであり、国家のさまざまな選択肢の中でも特に重要性が高いものであるため、政策の決定者には適切な戦略と適切な情勢分析、政治判断に基づく慎重な決断が求められる[要出典]。また軍事力の使用はあらゆる方面における大きなコストを負担することになる[要出典]ので、その予想される利益や損害などを総合的に考慮しながら一定のプランに基づいて使用する必要性がある。以下にその運用例を示す。

間接的な行使 - 平和維持活動・海上航路の警備麻薬取締り・災害復興支援・船舶護衛・文民支援・国民教育・警備活動・軍事顧問の派遣など。

制限的な行使 - 平和創出の活動・対反乱作戦・軍事プレゼンスの強化・暴動鎮圧平和維持活動・軍事援助・間接的な封鎖・脅迫など。

直接的な行使 - ゲリラ作戦・テロ作戦・制海権及び航空優勢の獲得・国境封鎖・火力攻撃・陸軍部隊の侵攻・政経中枢の占領など。

外交と軍事力

外交と軍事力には歴史的、機能的に深い関係があり、国際政治において、軍事力は外交手段のひとつと考えられている。なぜなら効果的な軍事力の運用には総合的な外交力の発揮が必要不可欠であり、また、軍事力は外交政策において時には必要な手段だからである。また、抑止戦略には軍事力の存在が必要不可欠とされている。(外交外交交渉を参照)
経済と軍事力

経済と軍事力の関係は軍事技術の高度化と兵器の高額化とともに高まっている[要出典]。兵器開発プロジェクトに投じられる資金は軍需産業とその下請企業にとって莫大な収益であり、また世界における最先端の武器兵器を開発して海外への輸出を進めることに成功すれば、その軍需産業は極めて安定的な顧客層を獲得することができる。

軍事力を維持・向上させるためには、直接的に経済活動に貢献しない軍に対して大量の予算と労働力を投入する必要があり、経済的基盤を伴わない軍事力の拡張は、多くの場合、国家自体の衰退・崩壊をもたらす[要出典]。
参考文献

出典は列挙するだけでなく、脚注などを用いてどの記述の情報源であるかを明記してください。記事の信頼性向上にご協力をお願いいたします。(2016年3月)


石津朋之編『戦争の本質と軍事力の諸相』彩流社、2004年

中山隆志「軍事力の概念」防衛大学校・防衛学研究会編『軍事学入門』かや書房、2000年、pp.14-25.

西川吉光『国際政治と軍事力 現代軍事戦略論』北樹出版、1989年

平間洋一「軍事力の役割」防衛大学校安全保障学研究会編『最新版 安全保障学入門』亜紀書房、2005年、pp.69-76.

Dunnigan, J. F. 1988. How to make war: A comprehensive guide to modern war. New York: Quill.

ダニガン著、岡芳輝訳『新・戦争のテクノロジー』河出書房新社、1992年


George, A., and Craig, G. A. (1983) 2006. Force and Statecraft: Diplomatic Problems of Our Time. Oxford Univ. Press.

ジョージ、クレイグ著、木村修三・五味俊樹・高杉忠明・滝田賢治・村田晃嗣訳『軍事力と現代外交 歴史と理論で学ぶ平和の条件』有斐閣、1997年


Kenedy, P. M. 1987. The Rise and Fall of the Great Powers: Economic Change and Military Conflict from 1500 to 2000. Vintage Books.


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