身長
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いくつかの双生児を対象とした研究[24]によれば、ヒトの身長の差は60?80%の遺伝率があり、100年前のメンデル主義者と生物測定学者の議論以降、ポリジーン遺伝であると考えられている。18万人以上を対象としたゲノムワイド関連解析(GWAS)により、成人身長と関連する少なくとも180の遺伝子座において数百の遺伝的変異が同定されている[25]。その後、調査対象となった人の数は253,288人にまで拡大され、同定された遺伝的変異体の数は423の遺伝子座で697にまでなった[26]。比座高(座高と身長の比)を用いた別の研究では、これら697の変異体は(1)主に脚の長さを決定する変異体(2)主に背骨と頭の長さを決定する変異体(3)全体の体型に影響する変異体、という3つの特異的なクラスに分けることができると報告されている。この研究により、697の遺伝的変異体が全身長にどのように影響を及ぼすかについての生物学的メカニズムの洞察が得られた[27]。なお、これらの遺伝子座は、身長だけでなく他の特徴も決定する。例として、頭蓋内容積に対して同定された7つの遺伝子座のうちの4つは、以前にヒトの身長に関連する遺伝子座として特定されていた[28]

2019年に発表された研究では、日本人約19万人のゲノム解析が行われて身長に関わる573の遺伝的変異を同定され、新たに身長に影響するSLC27A3とCYP26B1という二つの遺伝子が特定された[29]。また、低頻度の遺伝的変異は身長を高くさせる傾向があり、これは身長を高くする遺伝的変異が日本人の集団では自然淘汰を受けていたことを示唆し、高身長が日本人にとって何らかの不利な影響を及ぼしていた可能性を示している[29]

環境が身長に及ぼす影響は、米国に住む人類学者のバリー・ボギンとグアテマラマヤ族の子どもたちの共同研究によって示されている。1970年初頭、ボギンが初めてグアテマラを訪れたとき、マヤ族男性の平均身長は157.5cm、女性は142.2cmであった。ボギンは、最大100万人のグアテマラ人が米国に逃れたグアテマラ内戦後に、別の一連の測定を行った。彼はアメリカに住む6歳から12歳のマヤ難民の身長が、グアテマラ在住の同年齢のマヤ人よりもかなり高いことを発見した[30]。2000年までにアメリカのマヤ族の子供は、同年齢のグアテマラのマヤ族よりも10.24cm背が高くなっていたが、これは主に栄養状態と健康管理の改善によるものであった[31]。ボギンはまた、アメリカのマヤの子供たちはグアテマラのマヤより平均で7.02cmほど脚が長く、比座高が有意に低いことを明らかにした[31][32]

シルック族ディンカ族のようなスーダンのナイロート族の人々は、世界でも最も背の高い人々と言われてきた。ロバーツが1953?54年に調査したディンカ族の男性は平均181.3cmの身長で、シルック族の男性は平均182.6cmの身長であった[33]。ナイロート族の特徴は、長い脚、狭い体、短い幹を持つことで、暑い気候に適応している[34]。しかし、1995年にエチオピア南西部で測定されたディンカ族およびシルック族の難民の男性の身長は、それぞれ平均176.4 cmと172.6 cmしかなかった。調査が指摘しているように、ナイロート族の人々は「幼児期および青年期に良好な環境条件に恵まれていれば、遺伝物質の十分な発現が可能となり、身長が高くなることがある」とされた[35]。1955年から現在まで自国で内戦が続いた結果、難民になる前にこれらの人々は、貧困にさらされていたのである。
他器官への影響

身長が伸びる際、骨格系があらゆる方向に伸び、眼軸長(角膜網膜までの距離)も伸びて近視に繋がる場合があるという仮説がある[36]。また、マルファン症候群という症候群がある。高身長には限らないが、遺伝的な予想身長よりも背が高くなった場合に起こりうるものだという。

バストのサイズとウェストや体重、身長などとの関係について、1997年に発表された日本人の若年成人女子を対象とした調査によると、バストサイズとウェストの相関係数は0.78585、ヒップとの相関係数は0.70181、体重との相関係数は0.78300と高い相関を示したが、身長との相関係数は0.19439であり低い相関を示した[37]。このことは、ブラカップの遺伝率が56%であるが、その遺伝的分散のうち総分散の3分の1がBMIに影響する遺伝子と共通しているためだと考えられる[38]
身長に関する俗説
牛乳を飲むと背が伸びる
他にも「小魚を食べる」などがある。共通するのはカルシウムを多く摂取しようという事である。カルシウムの摂取が身長の伸びにどう関与するかは明確ではない。また、人が一日に摂取できるカルシウムの量は決まっている。身長を伸ばすためには蛋白質が重要で、カルシウムは骨を硬くするだけという指摘もある。@media screen{.mw-parser-output .fix-domain{border-bottom:dashed 1px}}もっとも、牛乳には蛋白質も含まれているため、摂取量の差が身長の差に現れる可能性はある(あくまで可能性に過ぎない)。[独自研究?]
バスケットボールバレーボールなどのジャンプ系の運動が効果がある
このような「ジャンプ系」の運動に限らず、体をひねる・そらす・曲げるなどの体をまんべんなく動かす全身運動による刺激が、関節液(軟骨に栄養を届かせる)の循環をよくし、骨の成長を促すという意見もある[39]。しかし、こうした競技では身長の高さが有利となるので、選手の身長が実際に高いことは、身長の伸長を促進することの証左とはならない。また、同様にジャンプやその他全身運動を伴うトランポリンの競技者は、平均して身長はさほど高くない[40]
成長過程.mw-parser-output .ambox{border:1px solid #a2a9b1;border-left:10px solid #36c;background-color:#fbfbfb;box-sizing:border-box}.mw-parser-output .ambox+link+.ambox,.mw-parser-output .ambox+link+style+.ambox,.mw-parser-output .ambox+link+link+.ambox,.mw-parser-output .ambox+.mw-empty-elt+link+.ambox,.mw-parser-output .ambox+.mw-empty-elt+link+style+.ambox,.mw-parser-output .ambox+.mw-empty-elt+link+link+.ambox{margin-top:-1px}html body.mediawiki .mw-parser-output .ambox.mbox-small-left{margin:4px 1em 4px 0;overflow:hidden;width:238px;border-collapse:collapse;font-size:88%;line-height:1.25em}.mw-parser-output .ambox-speedy{border-left:10px solid #b32424;background-color:#fee7e6}.mw-parser-output .ambox-delete{border-left:10px solid #b32424}.mw-parser-output .ambox-content{border-left:10px solid #f28500}.mw-parser-output .ambox-style{border-left:10px solid #fc3}.mw-parser-output .ambox-move{border-left:10px solid #9932cc}.mw-parser-output .ambox-protection{border-left:10px solid #a2a9b1}.mw-parser-output .ambox .mbox-text{border:none;padding:0.25em 0.5em;width:100%;font-size:90%}.mw-parser-output .ambox .mbox-image{border:none;padding:2px 0 2px 0.5em;text-align:center}.mw-parser-output .ambox .mbox-imageright{border:none;padding:2px 0.5em 2px 0;text-align:center}.mw-parser-output .ambox .mbox-empty-cell{border:none;padding:0;width:1px}.mw-parser-output .ambox .mbox-image-div{width:52px}html.client-js body.skin-minerva .mw-parser-output .mbox-text-span{margin-left:23px!important}@media(min-width:720px){.mw-parser-output .ambox{margin:0 10%}}

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成長の内分泌調節における主な経路

身長の成長は、その様々な要因によって決定され、主に前脳下垂体から分泌されるソマトトロピンヒト成長ホルモン (hGH))によって調節された細胞分裂を介して骨を長くすることから生じている。ソマトトロピンはまた、肝臓によって主に別の成長を誘導するホルモンであるインスリン様成長因子1 (IGF-1) の放出を刺激する。この2つのホルモンは、体のほとんどの組織で機能し、他の多くの機能を持っており、生涯にわたって分泌され続けている。分泌の大部分は沸き起こり、(特に思春期の場合)睡眠中に最大となる。

線状成長の大部分は、徐々に骨化して硬い骨を形成する長骨の骨端部の軟骨の成長として生じる。脚は成人の身長の約半分を占めており、脚の長さには性差があり、男性の方が比例して脚が長くなる。この成長の一部は、長い骨の成長スパートが停止したか、または遅くなった後に発生する。成長期の成長の大部分は長骨の成長である。さらに、個体群間や時間の経過による身長の変化は、主に脚の長さの変化によるものである。身長の残りの部分は頭蓋骨で構成されている。身長は性的二型であり、統計的には多かれ少なかれ正規分布を示すが、裾の重い分布を示す[要出典]。対数正規分布は、任意に大きな信頼度では非物理的に負の身長値を得ることができる非負の下限信頼度を保証する以外にも、データに等しく適合することが示されている[41]
身長異常

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男性の身長と年齢(米国CDC)女性の身長と年齢(米国CDC)

身長の集団内変動のほとんどは遺伝的なものである。低身長と高身長は通常、健康上の問題ではない。また、正常値からの偏差の程度が有意な場合、遺伝性の低身長は家族性の低身長として知られており、高身長は家族性の高身長として知られている。その人の身長が正常であるかどうかは、家族の身長を比較したり、急激な変化がないかどうかの成長傾向を分析したりすることで確認することが可能である。しかし、成長異常の原因となる病気や障害はさまざまなものがある。

特に極端な身長の場合は、小児期の下垂体肥大症に起因する巨人症や、様々な原因を持つ小人症など、病的なものがある。まれに、極端な身長の原因が見つからない場合もあり、非常に背の低い人は特発性低身長と呼ばれることがある。2003年に米国食品医薬品局(FDA)は、人口平均(人口の約1.2%の最低値)より2.25標準偏差以下の人にヒト成長ホルモン治療を承認した。十分な成長ホルモンが脳下垂体によって産生または分泌されない場合、成長ホルモン欠乏症の患者は治療を受けることができる。この治療は、成長を促進するために、純粋な成長ホルモンを厚い組織に注入することもある。さらにまれな発生、または少なくともあまり知られていない「問題」は、特発性高身長である。
人の身長の歴史

先行人類ではホモ・ハイデルベルゲンシスの身長が男性で175 cm、女性で157 cmくらいと推定されている[42]。また、ホモ・ネアンデルターレンシスの身長は男性で166 cm、女性で154 cmくらいと推定されている[42]古代ギリシャのヒトの平均身長は男性で164 cm、女性で155 cmくらいだったとみられている[42]。 19世紀半ば以前は、身長には増加と減少の周期があったが[43]、骨格の検査では石器時代から1800年代初頭までの身長に有意な差は見られない[44]

経済学者ジョン・コムロスとフランチェスコ・チンニェッラの研究によると、18世紀前半のイギリス人男性の平均身長は165 cm、アイルランド人男性の平均身長は168 cmであった。イギリス人、ドイツ人、スコットランド人兵士の推定平均身長は 163.6 - 165.9 [cm] で、アイルランド人の平均身長は167.9 cmであった。北米の男性奴隷と受刑者の平均身長は171 cmであった[45]。また、1770年代後半のアメリカ生まれの植民地時代の兵士は、同時期に英国海兵隊に従軍していたイギリス人兵士よりも平均で7.6cm以上背が高かった[46]
身長の急上昇1897年のイギリスとアイルランドの男性の平均身長を示す地図。

一般的に、19世紀を通じて地域の身長レベルに大きな差はなかった[47]。 このような一様な身長分布の唯一の例外は、アングロサクソンの入植地地域の人々で平均よりも身長が高い人と、平均以下の身長を持つ東南アジアの人々であった。しかし、19世紀末から第一次グローバリゼーション期の中頃になると、豊かな国と貧しい国の間で身長が乖離し始めた[48]。バテンとブルーム(2014)は、19世紀には、身長の重要な決定要因は、その地域での牛・肉・牛乳の入手可能性と、その地域の疾病環境であったことを発見している[49]。しかし、20世紀後半になると、技術や貿易がより重要になり、農産物の地域的な入手可能性の影響が減少した。

19世紀半ば以降の150年間で、先進国の人間の平均身長は最大10cm増加している[50]。 しかし、こうした増加はほぼ横ばいになっているようである[44][50]1870年代初頭から1980年までのヨーロッパ15カ国の男性の平均身長を調査した所、1870年の平均が167.7cmだったのが1980年には177.8 cmになっている。国によって若干の差異があり、スペインは約163cmから約175cm、スウェーデンは約170 cmから約180 cmに伸びている[51][52]。埋葬物から得られたデータによると、1850年以前のオランダ・ライデンの男女の平均身長はそれぞれ166.7cmと156.7cmであったことが示されている。1865年の19歳のオランダの孤児の平均身長は160cmであったが[53]、今日のオランダ人は世界で最も身長が高く、若い男性の平均身長は183.8cmである[54]。18世紀から19世紀にかけて、北米のヨーロッパ系の人々は、ヨーロッパの人々よりもはるかに背が高く、世界で最も背が高かった[55]。 プレインズネイティブアメリカンの元々の先住民族もまた、当時世界で最も背が高かった人の1つであった[56]

日本では歴史を遡ると、成人男子の場合、縄文時代には156 cmから160 cmであったが、古墳時代には165 cmほどになり、平安時代初期にピークとなった以降は減少に転じ、江戸時代には157 cmと、歴史時代では最も低くなった。明治以降は増加に転じ急速に高くなった[注 4]

明治維新後には肉食の普及に伴って身長が伸びたとされる。この時代になるとナショナリズムや軍事上の理由もあって体格改良が国策となり、井上哲次郎は「体格に於ても、其他百般の事に於ても、多くは西洋人に劣る」「支那朝鮮二国よりも矮小なり」、三島通良は「野蛮人種ヲ除キ、最も矮小」と述べ、またその逆に海野幸徳は「日本人の矮小なるを恥づる必要もなきなり、身体の巨大なるものの中には愚人あり、白痴あり」と述べている[58]。東京帝国大学(現在の東京大学)男子学生を対象とした調査によると、1910年代から1940年代の30年間に3.1 cmの身長増加が認められ、同じく女子学生では1910年代から1950年代の40年間に3.4 cmの増加があり、戦前から男女共にほぼ10年間に1.0 cmという急速な身長の伸びが見られた事が分かる[59]

第二次大戦後には栄養状態が良くなりさらに伸び、1948年1994年の平均身長の比較では男子で約10 cm伸びて170.9 cm、女子で約6 cm伸びて158.1 cmに達した。しかし以降は高止まりしてむしろ数mm下がっており、日本人の身長のピークに達したと見られている[60]
急上昇の要因
栄養状態の改善

先進諸国での高身長化も含め、身長がどのような理由でどのように決まるかについては古今に様々な説があるが、一般には幼少期の栄養状態とその後の健康状態が身長の推移に影響を与えるといわれている[42]


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