身長
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明治以降は増加に転じ急速に高くなった[注 4]

明治維新後には肉食の普及に伴って身長が伸びたとされる。この時代になるとナショナリズムや軍事上の理由もあって体格改良が国策となり、井上哲次郎は「体格に於ても、其他百般の事に於ても、多くは西洋人に劣る」「支那朝鮮二国よりも矮小なり」、三島通良は「野蛮人種ヲ除キ、最も矮小」と述べ、またその逆に海野幸徳は「日本人の矮小なるを恥づる必要もなきなり、身体の巨大なるものの中には愚人あり、白痴あり」と述べている[58]。東京帝国大学(現在の東京大学)男子学生を対象とした調査によると、1910年代から1940年代の30年間に3.1 cmの身長増加が認められ、同じく女子学生では1910年代から1950年代の40年間に3.4 cmの増加があり、戦前から男女共にほぼ10年間に1.0 cmという急速な身長の伸びが見られた事が分かる[59]

第二次大戦後には栄養状態が良くなりさらに伸び、1948年1994年の平均身長の比較では男子で約10 cm伸びて170.9 cm、女子で約6 cm伸びて158.1 cmに達した。しかし以降は高止まりしてむしろ数mm下がっており、日本人の身長のピークに達したと見られている[60]
急上昇の要因
栄養状態の改善

先進諸国での高身長化も含め、身長がどのような理由でどのように決まるかについては古今に様々な説があるが、一般には幼少期の栄養状態とその後の健康状態が身長の推移に影響を与えるといわれている[42]。ただし、身長の大小と栄養の間の相関性には不明な点も多い。近現代になって先進諸国では身長が大きくなったが、世界的には身長の高低と生活水準(文明)の高低は一致しないことが多いからである。例えば、世界の高い身長の集団はアフリカのサラ族(英語版。平均身長181.7 cm、以下同じ)、スマトラ島中央部のマレー人 (175.5 cm)、南米南部のパタゴンテウェルチェ族も参照。175.0 cm)、スウェーデン人 (174.4 cm) など、文化にも地域にも、共通点もまとまりもない[61]。一般に、コーカソイドは高身長の傾向があり、特に北欧に分布する北方人種は高い。モンゴロイドは中身長が多く、ネグロイドナイル川上流付近で平均180 cm以上の超高身長(サラ族、ディンカ族等)のものからネグリロ(ピグミー)のように150 cmを切るような超低身長まで幅広い変異を示す。こうした差異は生まれた時からあり、フランス人の新生児の身長の平均は50 cmなのに対し、インドシナ人の場合は46 cmしかない。人種あるいは地域によるこのような差がなぜ生じたのかは不明である。

2003年のユニセフによる「相次ぐ飢饉」による北朝鮮の栄養不良の影響に関する研究を引用した2004年の報告書では、若い成人男性の身長が著しく低いことが判明している。 対照的に、飢饉もなく「ますます西洋の影響を受けて食生活を楽しんでいる」韓国人は身長が伸びていた。身長差は、北の経済状況が南とほぼ同程度だった時期に育った40歳以上の韓国人にとっては最小限であり、一方で、身長格差は1990年代半ばに育った韓国人にとっては最も大きいもので、韓国人の身長が北よりも約12cmの身長差がある[62]。中国に亡命した北朝鮮の子供たちを対象とした韓国の人類学者による研究では、18歳の男性は栄養失調のために同年代の韓国人よりも13cm低いことがわかった[63]
社会階級

身長と実質賃金との間には相関関係が存在することが示唆されており、先進国ほど相関関係が高いことが示唆されている。興味深いことに、異なる社会階級の子どもたちの間では、子どもが2歳前後の時点ですでに身長の差が観察されていた[64]。インドネシアのデータを用いたバテン、シュテグル、ファンデルエンの研究では、経済発展と平均身長の正の関係が示唆されている[65]。インドネシアでは、人間の身長は自然または政治的ショックと同時に減少している[65]

アメリカ人とヨーロッパ人の平均身長は、急速な工業化の時期に減少したが、これはおそらく人口の急速な増加と経済的地位の広範な低下によるものである[66]。 これは、早期工業化成長のパズルとして知られているか、米国の文脈ではアンテベラム・パズルとして知られている。19世紀初頭のイギリスでは、イギリスの上流階級の若者(サンドハースト陸軍士官学校の学生)とイギリスの労働者階級の若者(マリン・ソサエティの少年)の平均身長の差は22 cmに達し、これまでに観測された中で最も高かった[67]

J.W. ドラッカーとビンセント・タセナールの研究によると、オランダ人の一人当たりの実質GNPが年平均0.5%以上のペースで成長していたにもかかわらず、1830 - 57年にかけてオランダ人の平均身長は減少した。減少が最も大きかったのは都市部で、1847年には都市部の身長減は2.5 cmとなっていた。また、都市部の死亡率は農村部よりもはるかに高かった。1829年には、都市部と農村部のオランダ人の平均身長は164 cmだった。1856年までには、農村部のオランダ人の平均は162 cm(5フィート3.8インチ)、都市部のオランダ人は158.5 cm(5フィート2.4インチ)であった[68]
その他の要因

栄養以外にも、照明の発達による昼間時間の延長がホルモン分泌に影響を与えた結果であろうとする意見もあるが[注 5]、現在でも決定的と言えるものはない。多くの要素が、中にはまだ知られていない原因も含めて複雑に影響し合っている可能性が考えられる。従って、巨人症や小人症のような明らかな異常の場合を除き、人為的に身長を制御する事(背を高くしたい云々)は困難な上、安易に行なうのは肉体的もしくは精神的に大きな危険を伴う恐れがある。また、成人の身長は集団間で大きく異なることがよくある。例えば、チェコ共和国の女性の平均身長はマラウイの男性よりも高い。これは、遺伝的な違い、幼少期の生活習慣の違い(栄養、睡眠パターン、肉体労働)、またはその両方が原因である可能性がある。

なお、身長の低下は、性別、遺伝、環境要因にもより、中年期から始まる人もいるが、高齢者には普遍的な傾向が見られる。この身長の低下は、乾燥による椎間板の高さの低下、軟部組織の萎縮、変性疾患に伴う姿勢の変化などが原因である。2007年(平成20年)のある発表では、国別平均身長はオランダが1位。アメリカ合衆国が5位に転落したことに関して、ジャンクフード過剰摂取による一定の微量栄養素不足が原因[69]とも指摘されたが、不明である[70]
現代「疑う余地のない医学的な記録がある中で、最も身長の高い人間」としてギネスブックに記載されているロバート・ワドロー史上最も背の低い成人としてギネス世界記録に認定されているチャンドラ・バハドゥール・ダンギ

ディナル・アルプス山脈にいる人々、主に南スラブの人(モンテネグロと東ヘルツェゴビナ)は、男性が平均身長185.6cm、女性の平均身長が170.9cmで、世界で最も高いことが記録されている。他に平均身長の高い部族としてはディンカ族があり男性で183cm、女性で170cmというデータがある[42]。チベットではカンゼ族は背が高いことで知られている。カンゼ族の男性の身長は平均180cmである[71][72]

生きている男性で最も身長が高いのは、トルコ人のスルタン・キョセンで、251cmである。現在、最も背の高い夫婦は元バスケットボール選手の姚明葉莉(ともに中国人)で、それぞれ228.6cmと190.5cmで、合わせて419.1cmとなる。彼らは2007年8月6日に中国の上海で結婚した[73]

近代史の中で最も背の高い男性は、死亡時に272 cmの身長があった米国イリノイ州出身のロバート・パーシング・ワドロー (1918 - 1940) であった。また、記録上最も背の低い成人は、ネパール人のチャンドラ・バハドゥール・ダンギは54.6 cmであった。医学史上最も背の高い女性は、中国湖南省の曾金蓮で、彼女は17歳で亡くなったときに248 cmであった。
身長の測定身長計
身長の実測

通常、身長の測定には身長計が用いられる[74]。身長計の前に背を向けて立ち、スケールを頭頂部にまで下げたところで目盛を読む。最近はデジタルスケールのものもある。

身長は仰臥位で測定されることもあり頭頂部とかかと基部に三角定規などを当てマークしておきメジャーなどで測定する[74]。なお、起立不可能な患者や脊椎前彎患者などの身長の測定の場合には膝下高による推定身長による算定も用いられる[74]#身長の推定も参照)。

第二次世界大戦後の日本ではメートル法によりセンチメートル (cm)表記を主に使用するが[注 6]、それ以前は尺貫法によりを用いて表記していた。特に、成人男性の身長は5尺台 (約 150 - 180 [cm])であることが多いので、「5尺」を省略して寸だけで身長を表すことが広く行われていた。
身長の推定

イギリスの統計学者カール・ピアソンは、四肢の長管骨の長さからその個人の身長を推定する公式を発表し、事故死・犯罪被害者の白骨遺体はもちろん、化石人骨の身長を知るために広く用いられている。一例を示すと、推定身長 [cm] = 81.036+1.880×(大腿骨最大長 [cm])である(異なる人種や地域では式を修正する必要がある)。

また、足のサイズからも予測が可能である。単位はセンチ (cm)。男性:80.44+3.53×(足裏長さ[cm])女性:71.09+3.65×(足裏長さ[cm])

個人の身長は両親の身長から大まかに推測計算することが可能である。予測身長と呼ばれ、日本人に対しては下記の計算法がある[75]。男子 (両親の身長の合計 + 13 [cm])/2女子 (両親の身長の合計 - 13 [cm])/2

実際の身長はこの値から上下に9 cm程ばらつく(±2σの範囲)[75]。他にも幾つか細部が異なる計算方法もある。
身長の調査
平均身長日本人の平均身長の推移[76][77]

平成30年国民健康・栄養調査によると、日本人男性の20歳以上の平均身長は 168.0±7.1 [cm]で20 - 29歳の平均身長は 171.7±5.9 [cm]であり、日本人女性の20歳以上の平均身長は 154.5±7.0 [cm]で20 - 29歳の平均身長は158.7±5.7 [cm]であった[8]日本人の平均身長(年齢別)(出典:令和2年度体力・運動能力調査結果の概要)[78]

2009年のOECDの調査に掲載された2005年の日本人男性(20?49歳)の平均身長は172cmであり、日本人女性(20?49歳)の平均身長は158cmであった[79]
分布と割合17歳の日本人の身長の分布[80]@media all and (max-width:720px){body.skin-minerva .mw-parser-output div.mw-graph{min-width:auto!important;max-width:100%;overflow-x:auto;overflow-y:visible}}.mw-parser-output .mw-graph-img{width:inherit;height:inherit}

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現在、技術上の問題で一時的にグラフが表示されなくなっています。
  17歳の日本人女子の身長の割合[80]

文部科学省の平成30年度「学校保健統計調査 身長の年齢別分布」に日本人の身長の年齢別分布が公開されている[80]。17歳時点での日本人の身長分布は、男女共に正規分布を描いていた。また割合を見ていくと、17歳の日本人男子の身長の中央値は170 cmであるが、その付近である165 - 170 cmと170 - 175 cmで全体の割合の半分以上の61.19%を占めている[80]。そして150 cm未満は0.02%、155 cm未満は0.24%、160 cm未満は2.70%であり、180 cm以上が6.44%を占めている。17歳の日本人女子の身長の中央値は157 cmであるが、155 - 160 cmで全体の35.91%を占めている[80]
パーセンタイル値

文部科学省の平成30年度の学校保健統計調査には、「年齢別 性別 身長の3,10,25,50,75,90および97パーセンタイル値」が公開されている[81]。それによると、男子女子でそれぞれ以下の表のようになっている。

なお、パーセンタイルとは、計測値の統計的分布上で「小さいほうから数えて何%目の値はどれくらいであるのか」という見方をする統計的表示法である。例えば、日本人男子の17歳時点での181cmという身長は97パーセンタイルに位置するが、これは、100人の17歳男子を身長が低い方から高い方に並べて集めたときに、身長が低い方から数えて97番目(上から3番目)に181cmの男子がいるということである。また、50パーセンタイルは中央値である。

年齢別 身長の3,10,25,50,75,90および97パーセンタイル値(男子)[81]年齢身長 (cm)
3%10%25%50%75%90%97%
5歳101104107110113116119
6歳107110113116119122125
7歳113115119122125129132
8歳118121124128131135138
9歳123126129133137141144
10歳127131134138142146151
11歳132136140144149154159
12歳138142147152158163167
13歳144149154160165169173
14歳152156161165169173177
15歳157160164168172175179
16歳158162165169173177181
17歳159163166170174178181

年齢別 身長の3,10,25,50,75,90および97パーセンタイル値(女子)[81]年齢身長 (cm)
3%10%25%50%75%90%97%
5歳100103106109112115118
6歳106109112115118121124
7歳111114117121124128131
8歳117120123127130134138
9歳122125129133137141145
10歳127131135139144148153
11歳133137142147151155158
12歳140144148152155159162
13歳144148151154158161165
14歳146149152156160163166
15歳147150153157160163167
16歳147150153157161164167
17歳148151154157161164167

日本人の身長は、他の運動・身体データと共に、文部科学省のスポーツ・青少年局参事官生涯スポーツ課が年齢別体格測定として調査結果を公表している。

平成19年度体力・運動能力調査調査結果統計表 (日本語)

平成20年度体力・運動能力調査調査結果統計表 (日本語)

平成21年度体力・運動能力調査結果の概要及び報告書について (日本語)

平成22年度体力・運動能力調査結果の概要及び報告書について (日本語)

世界における平均身長詳細は「List of average human height worldwide」を参照このポロシャツには、世界の平均身長の差を示すテキスタイルラベルが表示されている。


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