身長
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一般に、裏をべたに床につけ、背筋を伸ばした状態での、足裏から頭部の一番高い位置までの長さである[注 1][注 2]

身長は地域差が非常に大きい。また、後に述べるように先進国を主として近現代には大幅な身長の増加があったのをはじめ、同じや地域、時代によってもかなりの変異が見られる。

なお、身長は一日を通して一定ではなく、平均身長の男性で約2 cm程度の変化がある。これは、朝起きたときには椎間板が充分に水分を含んでいるが、夜寝る前には自重などにより圧迫され、かなり水分を放出するためといわれている。しかしこれらは個人の変異又は一時的なもので、人種あるいは地域集団に見られる身長の差や、時代による変化とは関係がない。

人の身体的な大きさは身長で表すのが一般的であるが、翻って動物全般の大きさをどのように測っているか比較すると、身長といった測り方はむしろ例外的で、人間以外の動物は、多くは全長 としての先端部からの先端部の長さを用いたり、体長として、の長さ(尾は含まない)を用いたりすることが一般的である。哺乳類恐竜の大半はが長く体長に比して体の高さが大きいので、体高を用いることがある。これは4本脚で直立した時のの高さの値で、を上に上げた高さではない(キリンの類を除く)。
身長の決定要因

個人の身長は主に成長ホルモンとそれを刺激する女性ホルモンの分泌によって左右される。女性ホルモンは成長ホルモンの分泌を刺激し身長の伸びを促すと共に骨端線の閉鎖を促し、骨端線が閉鎖され成長ホルモンを止めてしまう。女性は男性より女性ホルモンの分泌が多いため、思春期開始が男性より早く、身長の伸びのピークも男性より早いが、骨端線も男性より早く閉鎖してしまうため、男性より低身長となる。思春期における身長の伸びのピークは男女とも陰毛が発生する頃となっており、男性はこの時点で既に思春期に入っている事に気づきやすく(女性は思春期開始から生じる乳房の成長開始で思春期が始まった事に気づきやすい)、男性は変声、女性は初経を迎える頃には身長の伸びのピークが過ぎており、今後あまり伸びなくなる[19]。女性ホルモンが全く作用しない男性では骨端線が閉鎖しないため高身長となる[20]。先天的に脳下垂体に異常がある場合、成長ホルモンが多くまたは長期間排出されると巨人症となり、逆に少ないまたは短期間排出の場合には小人症となる。思春期開始時期の平均身長は男性は約145 cm、女性は約134.1 cmで、思春期の身長の伸びのピークは男性は平均約13歳、女性は平均約10.88歳(10歳10か月-10歳11か月)でピーク時の女性の平均身長は約142.4 cmである[21]

身長は主に脳下垂体から分泌される成長ホルモンとその影響によって左右されることが明らかである。成長ホルモンは睡眠時に多く分泌されるため睡眠は重要であるが、睡眠時間帯による成長ホルモンの分泌量の影響はない[22]

思春期の身長の伸びはあまり個人差がない[23]とされる。そのため、身長を伸ばすには思春期前の期間が長く、かつ思春期前までにどれだけ伸ばせるかが重要で、これが大人になってからの身長を左右しやすい。

気候の影響が言われる場合もある。ベルクマンの法則によると、同種の恒温動物では寒冷地に住む種が熱帯地に住む種に比べて大柄になるとされる。これは、体が大きくなると表面積が増えて放熱量が増えるものの、体積の増加によってそれ以上に生産量が増加し[注 3]、寒冷地での生存に有利になるためとされる。人類も北欧人の方が南欧人より東アジア人の方が東南アジア人より高身長である。人類においては同人種間では当てはまるが他人種間ではあまり当てはまらない。例としてアフリカのディンカ族は温暖な地域の部族だが高身長である。


妊娠中に牛乳を多く飲むと子供の身長が高くなるという研究結果がある[24]
生まれか育ちか

遺伝学と環境との正確な関係は複雑で不確実である。

いくつかの双生児を対象とした研究[25]によれば、ヒトの身長の差は60?80%の遺伝率があり、100年前のメンデル主義者と生物測定学者の議論以降、ポリジーン遺伝であると考えられている。18万人以上を対象としたゲノムワイド関連解析(GWAS)により、成人身長と関連する少なくとも180の遺伝子座において数百の遺伝的変異が同定されている[26]。その後、調査対象となった人の数は253,288人にまで拡大され、同定された遺伝的変異体の数は423の遺伝子座で697にまでなった[27]。比座高(座高と身長の比)を用いた別の研究では、これら697の変異体は(1)主に脚の長さを決定する変異体(2)主に背骨と頭の長さを決定する変異体(3)全体の体型に影響する変異体、という3つの特異的なクラスに分けることができると報告されている。この研究により、697の遺伝的変異体が全身長にどのように影響を及ぼすかについての生物学的メカニズムの洞察が得られた[28]。なお、これらの遺伝子座は、身長だけでなく他の特徴も決定する。例として、頭蓋内容積に対して同定された7つの遺伝子座のうちの4つは、以前にヒトの身長に関連する遺伝子座として特定されていた[29]

2019年に発表された研究では、日本人約19万人のゲノム解析が行われて身長に関わる573の遺伝的変異を同定され、新たに身長に影響するSLC27A3とCYP26B1という二つの遺伝子が特定された[30]。また、低頻度の遺伝的変異は身長を高くさせる傾向があり、これは身長を高くする遺伝的変異が日本人の集団では自然淘汰を受けていたことを示唆し、高身長が日本人にとって何らかの不利な影響を及ぼしていた可能性を示している[30]

環境が身長に及ぼす影響は、米国に住む人類学者のバリー・ボギンとグアテマラマヤ族の子どもたちの共同研究によって示されている。1970年初頭、ボギンが初めてグアテマラを訪れたとき、マヤ族男性の平均身長は157.5cm、女性は142.2cmであった。ボギンは、最大100万人のグアテマラ人が米国に逃れたグアテマラ内戦後に、別の一連の測定を行った。彼はアメリカに住む6歳から12歳のマヤ難民の身長が、グアテマラ在住の同年齢のマヤ人よりもかなり高いことを発見した[31]。2000年までにアメリカのマヤ族の子供は、同年齢のグアテマラのマヤ族よりも10.24cm背が高くなっていたが、これは主に栄養状態と健康管理の改善によるものであった[32]。ボギンはまた、アメリカのマヤの子供たちはグアテマラのマヤより平均で7.02cmほど脚が長く、比座高が有意に低いことを明らかにした[32][33]

シルック族ディンカ族のようなスーダンのナイロート族の人々は、世界でも最も背の高い人々と言われてきた。ロバーツが1953?54年に調査したディンカ族の男性は平均181.3cmの身長で、シルック族の男性は平均182.6cmの身長であった[34]。ナイロート族の特徴は、長い脚、狭い体、短い幹を持つことで、暑い気候に適応している[35]。しかし、1995年にエチオピア南西部で測定されたディンカ族およびシルック族の難民の男性の身長は、それぞれ平均176.4 cmと172.6 cmしかなかった。調査が指摘しているように、ナイロート族の人々は「幼児期および青年期に良好な環境条件に恵まれていれば、遺伝物質の十分な発現が可能となり、身長が高くなることがある」とされた[36]。1955年から現在まで自国で内戦が続いた結果、難民になる前にこれらの人々は、貧困にさらされていたのである。
他器官への影響

身長が伸びる際、骨格系があらゆる方向に伸び、眼軸長(角膜網膜までの距離)も伸びて近視に繋がる場合があるという仮説がある[37]。また、マルファン症候群という症候群がある。高身長には限らないが、遺伝的な予想身長よりも背が高くなった場合に起こりうるものだという。

バストのサイズとウェストや体重、身長などとの関係について、1997年に発表された日本人の若年成人女子を対象とした調査によると、バストサイズとウェストの相関係数は0.78585、ヒップとの相関係数は0.70181、体重との相関係数は0.78300と高い相関を示したが、身長との相関係数は0.19439であり低い相関を示した[38]。このことは、ブラカップの遺伝率が56%であるが、その遺伝的分散のうち総分散の3分の1がBMIに影響する遺伝子と共通しているためだと考えられる[39]
身長に関する俗説
牛乳を飲むと背が伸びる
他にも「小魚を食べる」などがある。共通するのはカルシウムを多く摂取しようという事である。カルシウムの摂取が身長の伸びにどう関与するかは明確ではない。また、人が一日に摂取できるカルシウムの量は決まっている。身長を伸ばすためには蛋白質が重要で、カルシウムは骨を硬くするだけという指摘もある。@media screen{.mw-parser-output .fix-domain{border-bottom:dashed 1px}}もっとも、牛乳には蛋白質も含まれているため、摂取量の差が身長の差に現れる可能性はある(あくまで可能性に過ぎない)。[独自研究?]
バスケットボールバレーボールなどのジャンプ系の運動が効果がある
このような「ジャンプ系」の運動に限らず、体をひねる・そらす・曲げるなどの体をまんべんなく動かす全身運動による刺激が、関節液(軟骨に栄養を届かせる)の循環をよくし、骨の成長を促すという意見もある[40]。しかし、こうした競技では身長の高さが有利となるので、選手の身長が実際に高いことは、身長の伸長を促進することの証左とはならない。また、同様にジャンプやその他全身運動を伴うトランポリンの競技者は、平均して身長はさほど高くない[41]
成長過程.mw-parser-output .ambox{border:1px solid #a2a9b1;border-left:10px solid #36c;background-color:#fbfbfb;box-sizing:border-box}.mw-parser-output .ambox+link+.ambox,.mw-parser-output .ambox+link+style+.ambox,.mw-parser-output .ambox+link+link+.ambox,.mw-parser-output .ambox+.mw-empty-elt+link+.ambox,.mw-parser-output .ambox+.mw-empty-elt+link+style+.ambox,.mw-parser-output .ambox+.mw-empty-elt+link+link+.ambox{margin-top:-1px}html body.mediawiki .mw-parser-output .ambox.mbox-small-left{margin:4px 1em 4px 0;overflow:hidden;width:238px;border-collapse:collapse;font-size:88%;line-height:1.25em}.mw-parser-output .ambox-speedy{border-left:10px solid #b32424;background-color:#fee7e6}.mw-parser-output .ambox-delete{border-left:10px solid #b32424}.mw-parser-output .ambox-content{border-left:10px solid #f28500}.mw-parser-output .ambox-style{border-left:10px solid #fc3}.mw-parser-output .ambox-move{border-left:10px solid #9932cc}.mw-parser-output .ambox-protection{border-left:10px solid #a2a9b1}.mw-parser-output .ambox .mbox-text{border:none;padding:0.25em 0.5em;width:100%;font-size:90%}.mw-parser-output .ambox .mbox-image{border:none;padding:2px 0 2px 0.5em;text-align:center}.mw-parser-output .ambox .mbox-imageright{border:none;padding:2px 0.5em 2px 0;text-align:center}.mw-parser-output .ambox .mbox-empty-cell{border:none;padding:0;width:1px}.mw-parser-output .ambox .mbox-image-div{width:52px}html.client-js body.skin-minerva .mw-parser-output .mbox-text-span{margin-left:23px!important}@media(min-width:720px){.mw-parser-output .ambox{margin:0 10%}}

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成長の内分泌調節における主な経路

身長の成長は、その様々な要因によって決定され、主に前脳下垂体から分泌されるソマトトロピンヒト成長ホルモン (hGH))によって調節された細胞分裂を介して骨を長くすることから生じている。ソマトトロピンはまた、肝臓によって主に別の成長を誘導するホルモンであるインスリン様成長因子1 (IGF-1) の放出を刺激する。この2つのホルモンは、体のほとんどの組織で機能し、他の多くの機能を持っており、生涯にわたって分泌され続けている。分泌の大部分は沸き起こり、(特に思春期の場合)睡眠中に最大となる。

線状成長の大部分は、徐々に骨化して硬い骨を形成する長骨の骨端部の軟骨の成長として生じる。脚は成人の身長の約半分を占めており、脚の長さには性差があり、男性の方が比例して脚が長くなる。この成長の一部は、長い骨の成長スパートが停止したか、または遅くなった後に発生する。成長期の成長の大部分は長骨の成長である。さらに、個体群間や時間の経過による身長の変化は、主に脚の長さの変化によるものである。身長の残りの部分は頭蓋骨で構成されている。身長は性的二型であり、統計的には多かれ少なかれ正規分布を示すが、裾の重い分布を示す[要出典]。対数正規分布は、任意に大きな信頼度では非物理的に負の身長値を得ることができる非負の下限信頼度を保証する以外にも、データに等しく適合することが示されている[42]
身長異常

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男性の身長と年齢(米国CDC)女性の身長と年齢(米国CDC)

身長の集団内変動のほとんどは遺伝的なものである。低身長と高身長は通常、健康上の問題ではない。また、正常値からの偏差の程度が有意な場合、遺伝性の低身長は家族性の低身長として知られており、高身長は家族性の高身長として知られている。その人の身長が正常であるかどうかは、家族の身長を比較したり、急激な変化がないかどうかの成長傾向を分析したりすることで確認することが可能である。しかし、成長異常の原因となる病気や障害はさまざまなものがある。

特に極端な身長の場合は、小児期の下垂体肥大症に起因する巨人症や、様々な原因を持つ小人症など、病的なものがある。まれに、極端な身長の原因が見つからない場合もあり、非常に背の低い人は特発性低身長と呼ばれることがある。2003年に米国食品医薬品局(FDA)は、人口平均(人口の約1.2%の最低値)より2.25標準偏差以下の人にヒト成長ホルモン治療を承認した。十分な成長ホルモンが脳下垂体によって産生または分泌されない場合、成長ホルモン欠乏症の患者は治療を受けることができる。この治療は、成長を促進するために、純粋な成長ホルモンを厚い組織に注入することもある。さらにまれな発生、または少なくともあまり知られていない「問題」は、特発性高身長である。
人の身長の歴史

先行人類ではホモ・ハイデルベルゲンシスの身長が男性で175 cm、女性で157 cmくらいと推定されている[43]。また、ホモ・ネアンデルターレンシスの身長は男性で166 cm、女性で154 cmくらいと推定されている[43]古代ギリシャのヒトの平均身長は男性で164 cm、女性で155 cmくらいだったとみられている[43]。 19世紀半ば以前は、身長には増加と減少の周期があったが[44]、骨格の検査では石器時代から1800年代初頭までの身長に有意な差は見られない[45]

経済学者ジョン・コムロスとフランチェスコ・チンニェッラの研究によると、18世紀前半のイギリス人男性の平均身長は165 cm、アイルランド人男性の平均身長は168 cmであった。イギリス人、ドイツ人、スコットランド人兵士の推定平均身長は 163.6 - 165.9 [cm] で、アイルランド人の平均身長は167.9 cmであった。北米の男性奴隷と受刑者の平均身長は171 cmであった[46]


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