超越瞑想は、ビジネスマンや学生に自己開発の技術として支持され、アメリカの学校や企業、軍隊、ブラジルの警察[16][17] で活用されたこともある。日本では1980年代半ばに京セラに導入され、その後トヨタ自動車や住友重機械工業、NECなどに顧客を広げ[18]、100以上の企業に福利厚生として導入されていたという超越瞑想の支持者の見解もある[19][20]。超越瞑想は世界中に普及しており、その効果を支持する意見は一定数存在し、学校で超越瞑想を教える資金を集めるためにデヴィッド・リンチ財団(英語版)を設立したデヴィッド・リンチなど、普及を行う著名人の熱烈な支持者もいる。
使うマントラ(真言)は、TM教師が個人面談し、個人の属性により一定のルールにしたがって適したものを選ぶ(そのため、すべての生徒のマントラが異なっているわけではない)[13]。マントラは、意味のない言葉であるともいわれるが、ヴェーダの一節[21] やヒンズー教の神の名にほかならないともいわれる[22]。1回の瞑想の時間は15分から20分。朝と夕方に1日2回、楽な姿勢で座り、目を閉じてマントラを心の中で唱えて瞑想する[4]。楽な姿勢であれば、どのように座ってもよい。マハリシは、超越瞑想では心をコントロールしたり、集中させることは一切しないと説明している[9][23][24]。非常に簡便な瞑想であるといわれるが、実際は様々な段階があり、徐々にレベルアップする[25]。レベルは7段階に分かれている[9]。上位プログラムとして「TMシディ・プログラム」があり、これには空中浮揚とも呼ばれる「ヨーガ飛行」(ヨーガのフライング)が含まれている[9]。大正大学文学部教授の星川啓慈は、最も簡便な超越瞑想を疲労回復に実践しているが、疲労やストレスをとるのに相当の効果があると述べている[25]。ただし、効果は人によって異なり、効果が自覚できなかったり、効果がないとしてやめる人も少なくないとも述べている[25]。その霊性を大衆レベルまで引き下げて提示しているが、儀式に参加していないものに修行の詳細が公開されることはない[26]。マハリシ財団が認定するTM教師の資格を持つ指導者から直接学ぶ必要があるとされ、書籍や映像での学習は行われない[10][13]。TM教師はマハリシ財団関連組織で教育を受け、そのコースは2015年時点では5ヶ月である[27]。
マントラと瞑想の結びつきは「科学的テクニック」とされ、「創造的知性の科学」と呼ばれる[4]。これによって潜在能力が開発され、活力、知性、充足感が引き出され、思考を「超越」するにまで至るという[4]。マハリシは、「超越」とは心が想念を超越すること、心を内側に向けて想念を越え、意識的な心を越えて純粋意識を体験することであり、純粋意識は絶対的な至福意識で、まったく変化がなく永遠であると述べている[12]。超越瞑想の「その最終目標は神実現」、自らの内にある<神>の価値に気付くこと、神意識に達することであるとされる[9]。
超越瞑想を行うことで、より高次の意識が育まれ、運がよくなる(自然の支援を受ける、と表現される)という[12]。グループで行うと、非常に強力な同調用を促して、環境に調和と肯定性の影響が生み出す(世界がより良くなる)という[28]。ある都市または国家の1%以上が超越瞑想を行うと(超越すると)、犯罪の減少、穀物の収穫量の増加などの社会へのよい影響「マハリシ効果」があることが統計的に示されているとしているが、因果関係は証明されておらず、チェリー・ピッキングや盲信、データのねつ造が指摘されている[22][29][30]。
超越瞑想は、広範囲にわたって効果が研究されてきた瞑想法の一つであり[31][32][33]、1970年代の最初の研究以来、350以上もの研究論文が科学誌に掲載されてきた[34][35][36]。補完・代替医療(補完的健康アプローチ)としても注目され[3]、アメリカ国立衛生研究所からの助成金を受けて、不安感・高血圧・心臓発作・脳卒中などに関する超越瞑想の研究が行われている[37][38]。超越瞑想の団体では、超越瞑想の効果が科学的根拠に基づくことが主張されているが[39]、従来の研究は支持者によるものが中心で、その研究方法と結果の妥当性に疑問がもたれている[13]。(とはいえ、瞑想実践の意義が否定されているわけではない[13]。)超越瞑想を始めとする瞑想療法は、健康な人には安全であると考えられているが、特定の精神疾患を持つ人が行った場合、稀に症状を引き起こし悪化させることが報告されている[3]。この問題については十分な研究がなされておらず、超越瞑想のリスクや副作用が言及されることは少ないが[40]、精神疾患がある場合は超越瞑想を行う前に医師に相談する必要がある[3]。
TM運動(超越瞑想の普及運動)は、精神的運動、新しい社会的運動とも呼ばれ[41]、宗教であるという見解もあるが、普及団体や支持者の多くは宗教ではないと主張しており、しばしば議論の的になっている[42][43]。この論争では、「宗教」の定義が問題になる[9]。学者のほとんどは宗教であると認識しており[13]、星川啓慈は「古代インドの宗教(とりわけヒンドゥー教)と密接な関連を持っていることには、なんらの疑いもない」と述べている[9]。超越瞑想の重要なテキスト『超越瞑想入門』では宗教的コスモロジーが示されており、占星術(ジョーティシュ・ヤギャ、ジョーティシュ・コンサルテーション)が大きな役割を持つ[9]。