超新星
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.Ia型超新星の発見第1号は SN 2002bj と呼ばれる超新星である。爆発自体は2002年に確認されており、当初はII型超新星に分類されていたが、II型超新星で本来放出されるはずの物質が確認されなかった。また、太陽の100億倍という明るさを放ったのちに急速に光が衰え、爆発から約20日後には不可視化光になったという点が典型的なIa型とも異なった。減光期間や化学組成などを分析した結果、2007年に提唱された新しいタイプの.Ia型であるとされた[8]
Ib型, Ic型

I型の中でヘリウムの吸収線が見られるものをIb型、見られないものをIc型と呼ぶ。これらについては機構がよく分かっていない。II型と同様、恒星の一生の最後に迎える大爆発であるが、その前に水素を使い果たしてしまい、水素の吸収線が見られないと考えられる。水素がない星としては重い星が強い恒星風でヘリウムコアがむき出しになったウォルフライエ星が考えられる。またヘリウムもない星としては同じくウォルフライエ星の中でヘリウム層を失ったWO星が知られており関連性が指摘されている[9]。その他には近接連星における質量移動も候補と考えられる[9]
II型

水素の吸収線が見られるものをII型と分類する。渦巻銀河棒渦巻銀河の腕の部分に現れることが多い。II型の分類はスペクトルによらず、光度の変化によりなされる。光度曲線に平坦期(光度がほとんど一定になる時期)があるものをIIP型 (P: Plateau)、最大光度の後、単調に(直線的に)光度が減少するものをIIL型 (L: Linear) と呼んでいる。

太陽の約8倍より重い星の場合、核融合反応を繰り返すことによって、赤色超巨星に進化した段階ではネオンマグネシウムからなる縮退した中心核が作られ、その周囲の殻状の領域で炭素の核融合が進むようになる。中心核の質量が増えると、やがて陽子の電子捕獲反応が起きて中心核内部に中性子過剰核が増える。これによって電子の縮退圧が弱まるため、重力収縮が打ち勝って一気に崩壊する。また、太陽の10倍程度よりも重い星では中心核が縮退することなく核融合が進み、最後に鉄56の中心核ができる。鉄56の中心核は重力収縮しながら温度を上げていき、約1010Kに達すると黒体放射により生じた高エネルギーのガンマ線を吸収してヘリウムと中性子に分解してしまう(鉄の光分解)。これによってやはり中心核が一気に重力崩壊を起こす。この爆縮的崩壊の反動による衝撃波などで外層部は猛烈な核融合反応を起こし、II型の超新星となる。しかし爆発のメカニズムは詳しくわかっていない。内部コアで生じた衝撃波は典型的な爆発の運動エネルギーと比べて二桁ほど大きいにもかかわらずニュートリノ放出によって弱まるため外部コアを通り抜けられないと考えられている。現在では弱まった衝撃波をどのように復活させるかが議論されており、ニュートリノ加熱メカニズムが有力視されているものの未だうまくいっていない[10]

超新星SN 1987AはII型であったが、一度赤色超巨星に膨張した星が収縮して高温の星になってから爆発するという特異な過程をとり、最大光度も通常のII型超新星より暗いものであった。原因として、マゼラン銀河は通常の銀河に比べて進化が遅く、水素・ヘリウム以外の重元素の比率が小さいことが挙げられている。
極超新星詳細は「極超新星」を参照

超新星のうち、特に爆発エネルギーが大きいもの(通常の10倍以上)を、特に極超新星と呼び区別している。スペクトルにおいて、水素、珪素、ヘリウムの各吸収線が見られず、さらに従来のIc型とも類似性が認められない。
主な超新星

超新星

星座
銀河
距離
最大光度

残骸・別名備考
SN 01850185年けんたうるす/ケンタウルス座銀河系3,300光年-8RCW 86最古の観測記録
SN 03930393年さそり座銀河系-1RX J1713.7-3946 ?
SN 10061006年おおかみ座銀河系7,200光年-9I
SN 10541054年おうし座銀河系7,000光年-6II?かに星雲宋史』「天文志」、『明月記』など
SN 11811181年かしおへや/カシオペヤ座銀河系> 26,000光年0II3C 58
SN 15721572年かしおへや/カシオペヤ座銀河系8,000?9,800光年-4Iティコの星
SN 16041604年へびつかい座銀河系20,000光年以内-2.5Iケプラーの星銀河系で最後
SN 1885A1885年あんとろめた/アンドロメダ座アンドロメダ銀河254万光年5.8Iaアンドロメダ座S星他銀河で初の発見
SN 1987A1987年かじき座大マゼラン雲157,000光年2.9II肉眼で見えた最後
SN 2002bj2002年うさぎ座NGC 18211億5600万光年Ia. .Ia2009年の解析により新型超新星と確認
SN 2005ap2005年かみのけ/かみのけ座SDSS J130114+274347億光年II観測史上最大光度の超新星
SN 2006gy2006年へるせうす/ペルセウス座NGC 12602億3800万光年15.0II最大級の超新星
SN 2009dc2009年かんむり座UGC 10064Iaチャンドラセカール限界を超えた初の爆発

年は地球における発見年
超新星元素合成詳細は「超新星元素合成」を参照

超新星はその爆発の際の極高温により、恒星での元素合成ではできなかった重元素の合成を可能にする。より重い元素はその多くがこの過程を経ることによって生成されたものである。

超新星爆発は、重粒子線も大量に発生させ、極高温と粒子の密度の高さから、r過程などを経て重元素が合成されていく。超新星爆発によって理論上生成可能な元素はおおよそカリホルニウムにまで及ぶ。
周囲の星への影響「ガンマ線バースト」も参照

超新星爆発が発生すると、強烈なガンマ線が周囲に一斉に放たれる。このガンマ線の威力は凄まじく、超新星爆発を起こした恒星から半径5光年以内の惑星表面に住む生命体は絶滅し、25光年以内の惑星に住む生命体は半数が死に、50光年以内の惑星に住む生命体は壊滅的な打撃を受けるとされる。[11]ガンマ線は地表を容赦なく汚染して生命体が住めない環境にしてしまい、そこから地表に生命体が住めるようになる環境に戻るまでには数年を要すると言われている[12]。しかし、地下深くにすむバクテリアなどの生物は直接的影響はほぼなく、生き残ることが出来る。

現在、地球周辺で近いうちにII型超新星爆発を起こすと予測されている星は、約600光年離れたアンタレスと、約640光年の距離にあるベテルギウスである。これらの星が超新星爆発を起こした際には地球にも若干の影響が出ると言われているが、地球から距離が離れすぎているためにガンマ線の威力は弱まり[注 2]、オゾン層が多少傷つく程度で惑星および生命体への影響はほとんどないと予測されている[12]。またガンマ線は自転軸の2度の範囲に放出されることが判明しており、その後の観測から地球はベテルギウスの自転軸から20度の位置にあることもわかっていることから、ベテルギウスからのガンマ線は地球に影響を及ぼさないと考えられている。

仮に地球から8.6光年離れたシリウスA、あるいは25.3光年離れたベガがII型超新星爆発を起こしたとすると、地球に住む生命はほぼ確実に絶滅するか壊滅的な打撃を受けることになるが、シリウスAの質量は太陽の2倍強、またベガの質量は太陽の3倍程度であるために超新星爆発は起こさず、いずれも赤色巨星となって膨張した外層部により惑星状星雲を形成し、残った中心核が白色矮星となる可能性が濃厚である。

我々が住んでいる地球も一部の三葉虫の絶滅など、周囲の星の超新星爆発の影響を受けたと思われる痕跡がいくつか発見されている[13]
超新星残骸詳細は「超新星残骸」を参照超新星残骸 おうし座のかに星雲。月の1/5程度の直径に見えるSN 1987A 複数のリング構造が見える。超新星爆発によるニュートリノが観測された最初の超新星残骸

超新星残骸(ちょうしんせいざんがい、: Supernova remnant[14])とは、超新星爆発の後に残る星雲状の天体である[14]

超新星爆発の結果として中性子星が作られることがあるが、発見されている中性子星の周囲に超新星残骸があるものは少ない。これは超新星爆発のわずかな非対称性によって中性子星が爆発の中心から弾き飛ばされてしまうためと考えられている。

超新星爆発で放出される物質はほぼ球対称に拡がるため、地球から観測した場合には超新星残骸は円弧状の形に見えるものが多いが、かに星雲のように不規則な形状のものもある。


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