赤血球
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この赤血球膜外面側表面に多く現れたホスファチジルセリンもマクロファージによる貪食の標的になると考えられている[67][34][38][70]
赤血球と臨床
赤血球に関する基準値

赤血球に関する一般的な項目の基準値[注 10][2]を挙げる。

赤血球数 男性420-554万個/μL 女性384-488万個/μL

ヘモグロビン濃度 (Hb) 男性13.8-16.6g/dL 女性11.3-15.5g/dL(基準下限値を下回ると貧血とされる)

ヘマトクリット(Ht:赤血球容積率)男性40.2-49.4% 女性34.4-45.6%(血液の濃さであり、貧血で数字は小さくなる)

MCV(赤血球1個の容積)76-96fL(赤血球の大きさであり、ヘマトクリット÷赤血球数で求められる。鉄欠乏性貧血では小さくなる)

MCH (en)(赤血球1個あたりのヘモグロビン量)27-35pg(ヘモグロビン濃度÷赤血球数で求められる)

MCHC (en)(赤血球容積に対するヘモグロビン量)29.7-34.7g/dL(ヘモグロビン濃度÷ヘマトクリットで求められる)[4]

比重 1.090-1.120 (血漿の比重は1.024-1.030なので、試験管の中で長時間放置、あるいは遠心分離を行うと下に沈殿する)[71]

ヘモグロビンA1c(グリコヘモグロビン)4.3%-5.8%(ヘモグロビンにグルコース血糖)が結び付いたものであり糖尿病で高値になる)[注 11][72]

血液型詳細は「血液型」を参照

赤血球の表面には250種以上の表面抗原があるが、A/B型抗原はその代表的な抗原である。赤血球の表面にA抗原があるとA型、B抗原があるとB型、AとB、両方の抗原があるとAB型、両抗原がないとO型とする[73]。逆に血漿中には各抗原に反応する抗体があり、通常A型の血漿中には抗B抗体があり、B型の血漿中には抗A抗体があり、AB型の血漿中には抗A抗体も抗B抗体のどちらもなし、O型の血漿には抗A抗体と抗B抗体両方が存在する[73](血漿中の抗体を調べることで血液型を判定することを裏試験ともいう[73])。

表面抗原に、それぞれ対応する抗体が反応すると赤血球は凝集してしまう。
重要な栄養素

他の細胞と同様に、赤血球は、タンパク質あるいは脂質といった物質から構成されている。一方で一部の微量な栄養素が、赤血球を生成する上で重要な役目を担っているとされる。特に体内で合成することのできないビタミンB12、および葉酸は臨床上重要な栄養素とされる。

成人の体内には 3-4g の鉄があるがその2/3はヘモグロビンの構成材として赤血球中にあり、古くなった赤血球は脾臓や肝臓で壊されるが、その際に鉄は回収され、失われるのは1日あたり数mg に過ぎない[74]。しかし、出血などで鉄を多く失うとヘモグロビンの合成に必要な鉄分が不足し、一般的には鉄欠乏性貧血の典型として赤血球は小型であったり低色素型になる[75]

ビタミンB12 はコバルトを含むビタミンの総称で、ある種のバクテリアしか生産することはできないが、食物連鎖によって動物は十分な量の B12 を体内に持っており、ヒトも肉類、魚類、乳製品などの動物性食品を食することで B12 を取り入れるので普通の状態では体内に数年分の量の B12 を貯えている。B12 は食物ではタンパク質と結び付いているが、胃酸によってタンパク質から遊離し、胃壁から分泌される内因子 (IF) と B12 とが膵液の作用によって結び付くことで B12 は回腸から吸収されるようになる。したがって胃の切除者、萎縮性胃炎での内因子分泌障害(悪性貧血)などで内因子が不足したり、あるいは腸の吸収障害、あるいは極端な菜食主義者などでは数年ののちに B12 は不足する。B12 が不足すると細胞の DNA の合成が障害されて、赤血球系造血では巨赤芽球(その名の通り巨大な赤芽球)が産生され、それは正常な赤血球に分化できないため無効造血となり巨赤芽球性貧血に陥る[76][77]

葉酸はレバー、緑黄色野菜、果物などに含まれている水溶性ビタミンであるが、B12 と共に働いて赤血球の成熟に関わる。通常では葉酸は食物から酵素の働きで空腸から吸収され、体内に数か月分の量が貯えられているが、何らかの理由で不足すると B12 の不足と同様に赤血球は DNA の合成が阻害され、正常な成熟ができずに巨赤芽球性貧血になる[78]
赤血球の変形
浸透圧による変形血漿の浸透圧による変化

赤血球は外部からの力が掛からずとも、様々な要因で変形することがある。赤血球膜には水分を効率的に輸送する輸送タンパク質アクアポリンがあり、浸透圧の低い、例えば真水に赤血球を入れると赤血球は水を吸収して膨らみ、赤血球膜が膨張の圧力に耐えられなくなると終いには破裂する(溶血)。逆に濃い塩水中などでは赤血球は水分を失う。人の生理食塩水(等張液)は0.9%だが、正常な赤血球は食塩水では濃度0.5%が溶血するかしないかのギリギリの濃度である。0.48-0.5%で溶血し始め、0.4-0.42%で50%が溶血し、0.33-0.35%ですべて溶血する[注 12][79][80]。遺伝性球状赤血球症などのように赤血球膜に異常があり脆弱であると、膨張に耐える力が弱いためにより容易に溶血する[79]
疾患による変形

ウニ状赤血球または金平糖の様な形状の有棘赤血球は解糖系酵素異常症尿毒症、血清βリポ蛋白欠乏血症、肝機能障害、便秘や下痢など腸の異常時などに現れ[81]、涙滴状の赤血球は骨髄線維症や癌の骨転移で現れる[82]。各種の溶血性疾患などでは粉々にされ破片となった破砕赤血球が見られ[83]、ある種の遺伝性の貧血病では鎌状赤血球が見られる[84]。赤血球が破裂したり、膜異常などで赤血球が壊れることを溶血と言い、大量に溶血すると貧血を招くばかりでなく、赤血球の内部に高濃度に存在していたカリウムが放出され一時的に高カリウム血症になる。元々高カリウム血症の者が大量の溶血を起こすと高カリウム状態が高度になり徐脈不整脈など心臓の異常が出現し最悪死に到る[注 13][85]。さらにヘモグロビンが分解される過程で生じるビリルビンによって高ビリルビン血症となり黄疸を生じ、特に出生時低体重児では生命の危険を伴うことがある[86]涙滴赤血球鎌状赤血球

赤血球に影響が現れる主な疾患

赤血球に影響が現れる疾患は無数にあるが、その中で成書において赤血球系の疾患として取り上げられた主なものを記す[87]

汎血球減少性疾患
再生不良性貧血骨髄異形成症候群急性白血病など

主に赤血球数もしくはヘモグロビン量が減少する疾患
赤芽球癆、腎性貧血、巨赤芽球性貧血鉄欠乏性貧血、無トランスフェリン血症、鉄芽球性貧血自己免疫性溶血性貧血[88]鎌状赤血球症[注 14]サラセミア発作性夜間ヘモグロビン尿症、脾機能亢進症など

赤血球数が増加する病気(多血症[注 15]
真性多血症など

色素代謝異常
ポルフィリン症メトヘモグロビン血症など
赤血球とレオロジー「レオロジー」、「ヘモレオロジー」、および「血液サラサラ」も参照


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