1990年代には移民による送金が資金洗浄の手段に使われ、バラカートが規制の果てに営業を停止した[30]。 年表につづく世界金融危機は、シャドー・バンキング危機であると同時にマネロン危機でもあった。年金の目減り、公的資金の注入、労働市場の悪化、(合併による)顧客情報の集約、それら一切のグローバル化。不条理は金融の意義を問う契機となった。2009年5月に『バチカン株式会社(Vaticano S. p. A.)』が出版され、宗教事業協会の資金洗浄に関する証拠書類を暴露した。この書籍は年表以前の状況にも言及し、多くの人々を啓蒙した。2010年、ワコビアの2925億ポンドともいわれる資金洗浄が摘発された[23][39]。この2010年には、年金と生命保険を通じた資金洗浄をテーマとする報告書も発表された[40]。 『マネーロンダリングの代理人 暴かれた巨大決済会社の暗部(徳間書店 2002年、原題Revelation$)』の著者ドゥニ・ロベール(Denis Robert
国際規制年表
1986年10月27日 - アメリカ合衆国連邦法としてマネロン規制法(Money Laundering Control Act)が発効した。それまでは銀行秘書法(Bank Secrecy Act)でしか資金洗浄は規制されていなかった[31]。1960年代から麻薬価格の上昇と機関化現象の進行にともなって、資金洗浄は旨みを増し手口を複雑化させていた。
1988年12月 - 「麻薬及び向精神薬の不正取引の防止に関する国際連合条約」(ウィーン条約)(麻薬新条約)採択。
1989年07月 - アルシュ・サミット開催(フランス)。金融活動作業部会(FATF)設立[7]。
1990年04月 - FATF、資金洗浄対策に関する「40の勧告」提言(1996年に改訂)[7]。
1990年08月01日 - スイス刑法305条の2「資金の洗浄」および同条の3「金融業における注意の欠如」が施行された[32]。
1992年07月 - 麻薬特例法に各種マネロン対策規定が盛り込まれた[33]。
1995年06月 - ハリファクス・サミット開催(カナダ)。薬物犯罪以外の重大犯罪に関する資金洗浄対策についても討議。
1996年06月 - FATF「40の勧告」改訂[7] マネー・ローンダリング対策を、薬物犯罪からそれ以外の重大犯罪に拡大した。
1998年05月- バーミンガム・サミット開催(イギリス)。先進国間で、資金洗浄情報分析機関(FIU[注釈 9])の設置に合意[33]。
2000年02月 - 日本政府が、金融監督庁(現在の金融庁)のもとに「特定金融情報室」を設置。
2000年06月 - FATF、資金洗浄対策に非協力的な15カ国・地域(Non-Cooperative Countries and Territories, ⇒一覧)を公表。
2000年11月 - 国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約(TOC条約、パレルモ条約)
2001年10月 - 9.11米国同時多発テロを契機に[注釈 10]、テロリズムに対する資金供与の防止に関する国際条約 FATF臨時総会、テロ資金供与に関する「8つの特別勧告」[7]
2002年12月 - 8000万ドル超の麻薬マネーがマン島などの生命保険に使われた事実が報道される[34]。
2003年06月 - FATF「40の勧告」改訂 非金融業者(不動産・貴金属・宝石等取扱業者等)、職業的専門家(法律家・会計士等)に対して、疑わしい報告義務を課す[7]。秋から合衆国で政界を巻き込み生保・投信スキャンダル。
2005年12月 - ABNアムロ銀行に8000万ドルの制裁金、マネロン防止規制違反[35]。同行取引先にバンク・オブ・ニューヨークとリパブリック銀行[36]。ファースト・マーチャント(First Merchant Bank)が調査の切り口に[17]。
2006年10月 - FATF、資金洗浄対策に非協力的で、特別の注意を払うべき国や地域は、無くなったと発表した[37]。
2007年04月 - 犯罪収益移転防止法の一部施行を受け、FIUが金融庁から国家公安委員会へ移管。
2007年08月 - アメリカン・エキスプレスに制裁金6500万ドル、子会社の銀行(AEBI)がマネロン防止規制違反[38][17]。
マネロン危機
2012年は老舗に災難がふりかかった。スタンダードチャータード銀行がマネロン規制に反してイラン政府を助けたのを、ニューヨーク州金融サービス局(New York State Department of Financial Services)が同年8月にとがめた[23]。2014年に同局は制裁金3億ドルを命令した。もう一つの事件は国際為替指標と関わって世界から非難を浴びた。HSBCはLIBORの不正操作と資金洗浄を並行して捜査されて、後者においては制裁金12億ポンドを命令された[23][42]。
2013年5月28日、米ネット決済サービスリバティー・リザーブ(英語版)が起訴された事件が報道され、犯罪者が同サービスを利用して60億ドルを資金洗浄したことも付け加えられた[43][44]。6月、三菱UFJ銀行がニューヨーク州のマネロン規制違反で2.5億ドルを支払うことに合意した[45]。8月から米司法省が本腰を入れて銀行群を捜査するようになった[46]。同年8月にはジェームズ・ジョセフ・バルジャーが資金洗浄をふくむ罪で起訴され、11月に終身刑を言い渡された。