資本
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宗教儀式や伝統主義(単にいままでそうしてきたというだけでその行動を是とする)を廃して、複式簿記・資本主義市場法則・近代法律学・数学・理論物理学といった近代科学的発想で行動する。すべては合理的な労働から得られるのであり、思いがけない幸せを神に祈るようなことは行ってはならない。雑多な宗教儀式や呪術は言うに及ばず、社会のしきたりに反すれば人に批判されるから妥協するとか、自分の見込んだ客にしか商品を売らないといった伝統主義的行動を捨てて、勤勉・質素・正直・慎重・周到といった自己の正義・徳性に従って行動する精神。

「労働を尊ぶ精神」。労働それ自身が救済であり、労働によって人間の価値が決まるとする精神である。金儲けを第一の目的とせず、食料や衣類など隣人が欲している物を「正当な価格で」売ることは、隣人愛の精神に合致している。利益のためではなく隣人のために禁欲的に働く。その結果として利益が出てくるならば善いことである。つまり正しい経済行為によって得られる利益は正しいとする精神である。この精神は、利益を悪として禁止するほどの抑圧・緊張のある社会にしかうまれない。

「時間は貨幣であり、貨幣は信用であり、信用は態度である」。一日に10シリング稼げる人が、半日なにもしないで5シリングしか稼がなかったとすれば、彼は5シリングを無駄にしている。高い信用があれば低利で融資を受けられ、より高利の経営によって利益を生じやすい。勤務時間中に遊技場に居る態度を債権者に見られれば、信用を失うであろう。納期や利子といった流通を促す発想であり、滞貨を発生させない精神でもある。

マックス・ウェーバーは、宗教とはエトスであると定義した上で(この定義では、例えば個人の悪徳は公共の美徳であり自由競争市場がベストであるという古典派の学説やマルクスの学説なども一種の宗教とみる)、このような精神改革を促したものこそ、隣人愛を説く一神教、すなわちキリスト教(特に宗教儀式を廃して合理化をすすめたプロテスタント)であるという。日本においては山本七平が、日本人の労働モラルの高さを支えた宗教として仏教の宗派である禅宗の「労働即仏行」を指摘している。

小室直樹は、古事記日本書紀に登場する天照大御神などの皇祖神がすでに自ら養蚕を行うなど労働を尊んでおり、日本人の労働モラルの高さは日本神話の影響であり、労働が原罪に対するペナルティーである欧米の一神教諸国とは事情が異なると分析している。さらに、近代資本主義という経済はどの国家でもなりたければなれるものではないとした上で、日本の近代資本主義発生の過程について、浅見絅斎の靖献遺言や山崎闇斎の崎門の学や山鹿素行の中朝事実に見られる勤王思想が一神教的教義を醸成し、幕末の下級武士たちに自己を捨てて目標へ邁進する禁欲的行動精神をもたらし、吉田松陰橋本左内などの勤王の志士がうまれて明治維新が発生し、その後は彼ら自身が資本家となり四民平等のリーダーとなることで日本の資本主義と民主主義が発進したのだと分析している。
脚注[脚注の使い方]
出典^ a b c d e f g 松村明編『大辞林』三省堂
^ 『「世界史の構造」を読む』 (インスクリプト刊) 「協同組合と宇野経済学」

参考文献

小室直樹著『論理の方法(社会科学のためのモデル)』東洋経済新報社, 2003年5月8日

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