貿易
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また、国内取引の場合は現金・小切手・約束手形などがあるが、貿易取引では信用状(L/C)、D/PD/Aなどの特殊な決済方法が発達している[1]

地域により取引の準拠法や商慣習に違いがある[1]

地域により商品の輸送時間に違いがある[1]。遠距離の輸送となるため、運賃が上乗せコストとなるほか、商品が海上事故などに被災するリスクが高いため、保険料もコストとなる。

通関が存在する[1]。安全管理や輸入関税の徴収などのため輸出入通関手続が存在する[1]。この結果、関税などの直接的なコストのほか、通関書類などの作成にかかる間接コストも高い。

このように、国内取引と比べてコスト増の要因となる点が多いが、国内に存在しない希少価値のある商品を輸入すれば(あるいは、その商品が希少価値を持つ市場に輸出すれば)貿易にかかるコストを上回る利益が得られる可能性があり、その場合に貿易が行われることになる。
貿易の形態


直接貿易・間接貿易

直接貿易(直貿)とは、海外の輸入者、輸出者と直接に貿易をすることをいい[2]、間接貿易(間貿)とは商社などの仲介者を経由して貿易を行うことをいう[3]


輸出貿易・輸入貿易・仲介貿易・中継貿易

相手国に物を送り出す貿易形態を輸出貿易(Export Trade)、相手国からモノが送り込まれてくる貿易形態を輸入貿易(Import Trade)という[4]

また、仲介者が契約当事者となって外国相互間で行われる取引を行う貿易形態を仲介貿易または三国間貿易[5](Intermediary Trade または Triangle Business)という[4]

なお、A国からの貨物を、C国に輸入・加工し、B国に再輸出する貿易を中継貿易という[5]
委託加工貿易「加工貿易」を参照

委託者が外国の業者(加工者)に原材料の全量または一部を供給し、製品を委託国または第三国に送る貿易形態を委託加工貿易(Improvement Trade)という[4]。外国の業者に加工を委託する逆委託加工貿易と自国の業者が加工を受託する順委託加工貿易がある[5][4]
委託販売貿易

委託者から販売委託を受けた受託者が商品を輸入して販売し、売り上げた代金を送金するとともに、売れ残った商品を委託者または委託者の指示した者に積み戻して販売手数料を受け取る貿易形態[6]
対象による分類
サービス貿易
輸送・旅行・通信・建設・金融・保険・特許権使用料など、モノの動きではなく、サービスの提供によるカネの支払いまたは受け取りのこと。日本の旅行者が海外でホテル代を支払えばサービスの輸入、外国人旅行者が日本でホテル代を支払えばサービスの輸出となる。貿易統計ではなく国際収支統計で把握される。
技術貿易
国際的な技術提供契約によるカネの動きをいう。サービス貿易の一種。
その他の分類
企業内貿易
多国籍企業のA国の拠点からB国の拠点に向けて輸出が行われること。取引価格は企業内で決められるため、節税の目的で恣意的に価格を操作することによる移転価格の問題が起こる可能性がある。
求償貿易
輸入代金を通貨で支払うのではなく、等価値の貨物を輸出することで相殺する物々交換バーター貿易。冷戦時代、ソ連を中心とした社会主義ブロックで盛んに行われた。
個人輸入
消費者が、海外のカタログ販売業者などから国際郵便小包等で商品を直接取り寄せること。円高にもかかわらず円高差益があまり還元されなかった1980年代後半にブームとなる。
国境貿易
人の自由な移動が制限されている国家間において、ハンドキャリーで運ばれた商品を国境付近で取引すること。中越国境、中国・ロシア・北朝鮮国境のものが有名。
貿易に関する理論・政策詳細は「貿易理論」を参照

(政策論議を除く)国際貿易の理論は、デヴィッド・リカードが主著『政治経済学と課税の原理』第7章に提示した数値例から始まる[7]。リカードは、貿易が比較優位により起こるもので、絶対優位の差によるものでないことを明かにした。これにより、国際貿易状況が国内理論とは異なる論理に基づくものであることが明かになった(国際貿易理論の成立)。以後、19世紀には古典派貿易理論、20世紀にはヘクシャー・オリーンの理論、21世紀には新新貿易理論など多くの理論と研究が生まれている。
貿易による価格変動

たとえば小麦があまり取れないので小麦の価格が高い国Aが、小麦が多く取れるので小麦の価格が安い国Bから小麦を輸入する場合を考える。

A国では輸入により、小麦が以前よりも多く出回る事になるので、小麦の価格は下がる。一方B国では輸出により小麦の量が減るので、小麦の価格は上がる。しかしA国での小麦の価格とB国での小麦の価格が逆転する事はない。B国のほうが小麦が安いからこそ輸出で利益を得られるのであるから、価格が逆転する前に輸出が止まる為である。なお自由貿易で、かつ関税や輸出入のコストが無視できるほど小さければ、輸出入により両国での小麦の価格が一致する。
貿易の利益詳細は「貿易理論#貿易の利益」を参照

貿易は(完全競争の下では)それに関わった双方の国に利益(総余剰)をもたらす事が知られている。貿易の利益には、さまざまなタイプがある。以下はその一例である[8]

これを再び小麦を例にして説明する。簡単の為、両国では同じ通貨を使っているものとして話をすすめるが、別の通貨を使っていたとしても結論は同じである。

輸入によりA国では小麦の価格が下がる。仮に一袋あたり100円価格が下がったとする。するとA国の小麦農家の利益は1袋あたり100円少なくなってしまうが、この減少分は価格低下によりA国の消費者が小麦を100円安く買える分の利益で相殺される。しかも小麦の価格が下がったのであるから、A国の消費者は小麦を単に安く買えるだけでなく、以前より多くの小麦を買えるという利益も得られる。よって国全体で見た場合、A国では貿易により利益が生じる。

B国では逆に小麦の値段が上がる。仮に一袋あたり50円価格が上がったとする。するとB国の消費者は一袋小麦を買うのに50円多く払わねばならず、損をする。しかしその分、B国の小麦農家の儲けは一袋あたり50円多くなるので、消費者の損は小麦農家の儲けにより相殺される。

また値段が上がったせいでB国内で小麦が売れる量が減少してしまうが、余った小麦は、より売れ行きがよいA国で売る事ができる。しかも前述のように、A国の方が小麦の値段はB国のそれを下回らない。よって小麦農家の利益は貿易により増加する。従って国全体で見た場合、B国でも貿易により利益が生じている。

以上のように、国全体で見た場合、貿易に関わったA国、B国の双方に利益が出る。しかし国内での利益には偏りが生じる。A国では、小麦農家は損しているが、消費者はそれを上回る得をしている。一方逆にB国では消費者は損をしているが、小麦農家はそれを上回る得をしている。
保護貿易

自由貿易は利益を偏在化させ、比較劣位の産業など一部の人々の損失となる為、時として反発を招く。このため一部産業における輸入を規制し、国内産業を保護しようとする政策(保護貿易保護主義)が存在する。保護貿易の手段としては、関税の賦課(アンチ・ダンピング課税相殺関税等)や、輸入数量規制(輸入割当セーフガード等)などが用いられる。世界の主要国も自由貿易を標榜しているものの、国内の有力産業、衰退産業を保護する政治的な目的で何らかの規制を行っている。
貿易促進政策

貿易は、外貨の獲得を通じて直接に国富の増大につながると同時に、安価な輸入品の流入による物価の抑制、食料やエネルギー等必需品の安定的確保などの観点から、各国政府が国の政策として促進を行っている。貿易促進のあり方は国によって異なる。

具体的には、以下のような施策が行われる。

国の外郭団体として、貿易促進を専門に行う機関を設立し、市場調査、引合、貿易相談などの業務を一貫して行わせる。日本の
日本貿易振興機構(ジェトロ)、韓国の大韓貿易振興公社(KOTRA)、オーストラリアオーストラリア貿易促進庁(Austrade)、ニュージーランドのTRADENZなどがある。

国または国の機関が、当該国の輸出品及び文化的背景についてのPRを海外で行い、輸出品のブランドイメージを高める。

信用危険、戦争危険などの貿易に関連するリスクについて、国または国の機関が貿易保険サービスを提供する。日本では独立行政法人日本貿易保険が実施。

見本市メッセ)産業を振興することにより、貿易の商談成立を促進する。ドイツの例が有名。

特定分野の輸出品について、国が品質検査を行い、輸出品の品質レベルを保証することによって輸出促進を図る。戦後しばらくの間日本でも行われていた。

港湾施設を整備し、貿易関連業者のコスト低減を図る。


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