貿易摩擦
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資本の自由化が日米欧州三極間(特にフランス)で進行し、ミューチュアル・ファンドをばらまくメガバンクが世界展開した。

比較的未開拓のアジア市場は21世紀となってからグローバル化の洗礼を受けた。まず米韓自由貿易協定が結ばれた。米中の間でも、貿易・投資における障壁、中国の最恵国待遇(MFN)、中国のWTO加盟、といった問題を中心に摩擦が激化してきている[3]。韓国のようにあっさりといかないのは、中国と接するカザフスタンなどの中央アジア諸国でロシア・欧州の利権がもともと交錯しており、さらに中国がロシア・欧州の製品輸出先となっているからである。この構造は露清銀行インドシナ銀行が競り合った近現代とさほど変わってはいない(#帝国主義と貿易摩擦も入門として参照のこと)。
国際収支

輸出額(外国に売った額)から輸入額(外国から買った額)を引いた差額がプラスの場合は貿易黒字、マイナスの場合は貿易赤字と呼ばれるが、貿易の黒字・赤字に利益や損失という意味はない。貿易赤字国が「A国との貿易でわが国は巨額の損失を被った」と主張することがあるが、貿易赤字がいかに巨額であってもそのこと自体はその国が損をしたことを意味するものではない。また、かならずしも無理に2国間の貿易黒字・赤字を解消する理由もない。

貿易不均衡とは基本的に一国全体の貯蓄と投資の不均衡に過ぎない[4]。貿易赤字は「悪い」ことであり、その原因は自国の国際競争力の弱さや、貿易相手国の市場の閉鎖性にあるという考えは経済学的には完全な誤りである[4]。こうした考えは常に有害で危険な対外経済政策に結びつき、貿易摩擦・貿易戦争をもたらしてきた[4]

もっとも、貿易赤字が発生すれば、貿易黒字国との間で必ず貿易摩擦が起きるというものではない。例えば、日本とサウジアラビアなど産油国との貿易では、日本が赤字で産油国は黒字である。だからといって、黒字国である産油国に対して「内需拡大や市場開放を促進して、もっと日本製品を買うべきだ」といった要求が日本から出てはいない。日本は国内ではほぼ採れない原油を産油国から輸入しているのであり、それによって誰も困らないからである。もっとも、かつてはエネルギー資源として石油と代替性を持つ石炭が日本で採掘していた経緯があり、原油が輸入されることによって競争にさらされ、合理化(人員削減)に晒された炭鉱労働者の中から過激な労働争議が発生した(炭鉱騒動)。近年では坑内掘り炭鉱として日本で稼行しているのは、釧路コールマインのみであり、反対運動は見られない。

アメリカと日欧(とくにドイツ)では産業構造が似ており、鉄鋼造船半導体自動車のあらゆる局面で、しばしば貿易摩擦が発生した。ここでは、加工貿易国と資源国との間の交易とは別の要素(産業内競争)が働いており、特に企業間での競争を有利に導くための安値販売攻勢(ダンピング)に対しては、不公正貿易として関税を課すことができると国際合意されている。ここで問題とされるのは、国際収支の不均衡ではなく、独占禁止法理における不当廉売である。
帝国主義と貿易摩擦

イギリス(中国)との間に起きた阿片戦争は、貿易摩擦の極端な表れ(貿易戦争(英語版))だといえる。当時、イギリスでは上流階級のみならず、庶民の間でも茶を飲む風習が広まっており、清から茶などを輸入していた。一方、清はイギリスからほとんど何も買わなかったので、両国の貿易ではイギリスが赤字で清は黒字であった。これを問題視して、赤字を解消しようとして実施されたのが、当時イギリスの植民地であったインドで栽培したアヘンの密貿易であった。

アヘン中毒が蔓延して、清がアヘン取締りに乗り出すと、イギリスではアヘン商人が「わが国の国益が損なわれる」として、議会に働きかけた。ウィリアム・グラッドストンは「こんな恥ずべき戦争は、イギリスの歴史に残る汚点となる」といって批判したが、投票の結果、わずかな票差で開戦が決定された。香港が長くイギリス領だったのは、阿片戦争の結果(南京条約のため)である。また、日本の下関戦争も貿易摩擦から起きたものであった。
ジャパンバッシング

日本では、1970年代以降日本車の海外輸出超過によって、アメリカ合衆国アメリカ車製造に影響を与えたとして、政治問題となった。日本では「日米自動車摩擦」と呼んでいたが、アメリカでは端的に「デトロイト問題」と呼んでいた(デトロイトには自動車産業が集中していた)。

アメリカ側は、日本に対して牛肉オレンジなどの農産物の輸入拡大を求めたほか、内需拡大や市場開放をも迫った(これを背景に日本航空ボーイング747を113機も導入し、旅客機維持費が経営を圧迫して、破綻の一因となる)。また、一部のアメリカの労働者は、抗議活動の一環として日本車を破壊するパフォーマンスを行った。


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