貨幣
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実際、アメリカで発行される紙幣には「この紙幣は、公的および私的な、すべての債務に対する法定支払手段である」と明示され、カナダの紙幣には「この紙幣は法定支払手段である」、オーストラリアの紙幣には「このオーストラリア紙幣は、オーストラリアとその領土内において法定支払手段である」と書かれている[24]
日本における定義詳細は「通貨の単位及び貨幣の発行等に関する法律」を参照日本の硬貨(表)。1円(左上)、5円(右上)、10円(左中)、50円(右中)、100円(左下)、500円(右下)。

かつて貨幣は本位貨幣(本位金、銀貨)を指す言葉であり、政府紙幣銀行券とは区別されていた。明治4年(1871年)に造幣局が創業して以来、日本の法律上の「貨幣」とは、新貨条例および貨幣法に基づき発行された本位貨幣および補助貨幣を指した。臨時通貨法施行後は1988年3月末まで臨時補助貨幣のみの発行となったが、1988年(昭和63年)4月1日に通貨の単位及び貨幣の発行等に関する法律(昭和六十二年六月一日法律第四十二号)が施行されると、法的な本位貨幣と補助貨幣の区別はなくなり、すべて「貨幣」と称することになった。

「通貨の単位及び貨幣の発行等に関する法律」によれば、「通貨とは、貨幣及び日本銀行法 (平成九年法律第八十九号)第四十六条第一項 の規定により日本銀行が発行する銀行券をいう。」(同法2条3項) とされ、また「貨幣の種類は、五百円百円五十円十円五円及び一円の六種類とする。」(同法5条1項)と規定される。また、同法附則により貨幣とみなす臨時補助貨幣として同法律施行以前に発行された五百円?一円硬貨および記念硬貨が規定されている。この法律の施行により、明治時代から発行されていた本位貨幣の一円、二円、五円、十円、二十円の旧金貨(それぞれ額面の2倍に通用)と五円、十円、二十円の新金貨は1988年3月31日限りで廃止になり、名実ともに管理通貨制度に移行した。

したがって、現在の日本の法律上の貨幣とは、1948年(昭和23年)以降に発行された五円硬貨1951年(昭和26年)以降の十円硬貨1955年(昭和30年)以降の一円硬貨五十円硬貨1957年(昭和32年)以降の百円硬貨1982年(昭和57年)以降の五百円硬貨と、1964年(昭和39年)以降に記念のために発行された千円硬貨、五千円硬貨、一万円硬貨、五万円硬貨、十万円硬貨を指す。貨幣の一覧については、通常貨幣は「日本の硬貨」を、記念貨幣は「日本の記念貨幣」をそれぞれ参照のこと。

2021年(令和3年)現在の日本における法令用語としての「貨幣」は、もっぱら補助貨幣の性格を持つ硬貨のみを指し、「紙幣」及び「銀行券」とは区別されている。
民間取引における強制通用力

同法第7条により、貨幣は額面価格の20倍までに限って、強制通用力が認められている。すなわち、支払を受ける側は、貨幣の種類ごとに20枚までは受け取りを拒むことはできない。例えば、12,000円の買い物をして、五百円硬貨と百円硬貨各20枚で支払うことは認められる。ただし、21枚以上であっても、支払を受ける側が拒否せず受け取るのは自由である。
税金納付における無制限受領

税金等の公金の納付については、1937年(昭和12年)の大蔵省理財局長通達「補助貨ヲ無制限ニ公納受領ノ件」により、貨幣を無制限に受領すべきであるとされている[25]
損傷・鋳潰しに対する刑罰

なお、貨幣をみだりに損傷・鋳潰しすると、1年以下の懲役又は20万円以下の罰金に処せられる(貨幣損傷等取締法 ここで言う貨幣に銀行券は含まない)。
金銭

貨幣と関係して、日本の法制度における金銭について記述を行う。

金銭は、「
物 (法律)」(有体物)である。(民法88条2項)

金銭は、動産である。(民法86条2項)

社会学における貨幣詳細は「社会的交換理論」を参照

社会学では、貨幣による市場における交換は、貨幣尺度で反対給付が確定している経済的交換として捉えられ、たとえば長期的な利害を共有するコミュニティの内部におけるような、相互善意を前提した反対給付が確定しない社会的交換とは対比される。
特殊な貨幣詳細は「貨幣史#特殊な貨幣」を参照

離島、炭鉱などの場所や、世界各地のハンセン病療養所やコロニーなどの施設において、それぞれの用途に合わせて貨幣が発行されていた。
新しい貨幣

電子的、暗号化および電気通信もしくは無線通信技術の一部または全部の向上は、電子的な支払手段としての「電子マネー」(公共交通機関を利用する際に運賃などとして利用する「乗車カード」を含む)や、特定の国家による価値の保証を持たない貨幣としての「暗号通貨」の出現をもたらした。詳細は各かっこ内項目を参照
脚注[脚注の使い方]^ a b 広辞苑 第五版 p.546
^ a b デジタル大辞泉
^ 岩田『国際金融入門』 p8
^ 中野剛志『富国と強兵』東洋経済新報社、pp.54-55
^ 内藤敦之『内生的貨幣供給論の再構築』日本経済評論社、pp.25-26
^ a b ポランニー『人間の経済1』 第9章
^ 黒田『貨幣システムの世界史』 p11
^ 『3時間でわかる経済学入門』 p24
^ 『3時間でわかる経済学入門 』 p25
^ ヒューム「貨幣について」
^ スミス『諸国民の富』
^ リカード『経済学および課税の原理』
^ 日本経済新聞社編 『経済学の巨人 危機と闘う』 p33
^ 中野剛志『富国と強兵』東洋経済新報社、p.58
^ 金谷 『貨幣経済学』
^ 公共貨幣. 東洋経済出版社. (2015) 
^ Michael Mcleay, Amar Radia and Ryland Thomas 「Money in the Modern Economy: An Introduction」『Quarterly Bulletin』Bank of England, 2014a, Q1,pp.4-13
^ 中野剛志『富国と強兵』東洋経済新報社、pp.54-57
^ 藤井聡『MMTによる令和新経済論』晶文社2019年、pp.151-180
^ 藤井聡『MMTによる令和新経済論』晶文社2019年、pp.139-144
^ en:L. Randall Wray『MMT 現代貨幣理論入門』 島倉原完訳、鈴木正徳訳、東洋経済新報社、2019年、pp.110-114
^ en:L. Randall Wray『MMT 現代貨幣理論入門』 島倉原完訳、鈴木正徳訳、東洋経済新報社、2019年、pp.119-124
^ en:L. Randall Wray『MMT 現代貨幣理論入門』 島倉原完訳、鈴木正徳訳、東洋経済新報社、2019年、pp.173-179
^ L・ランダル・レイ『現代貨幣理論入門』東洋経済新報社2019年、p.117
^ 補助貨ヲ無制限ニ公納受領ノ件 - 財務省

参考文献

岩田規久男 『国際金融入門』 岩波書店・新版〈岩波新書〉、2009年。

金谷貞男 『貨幣経済学』 新世社、1992年。

黒田明伸 『貨幣システムの世界史』(増補新版) 岩波書店、2014年。

アダム・スミス 『国富論 国の豊かさの本質と原因についての研究』 山岡洋一訳、日本経済新聞社、2007年。

デイヴィッド・ヒューム 「貨幣について」(『政治論集』) 田中秀夫訳、京都大学学術出版会、2010年。

マーク・ボイル 『ぼくはお金を使わずに生きることにした』 紀伊國屋書店、2011年。


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