貨幣
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人類の歴史における主な貨幣は長らく公共貨幣であった。たとえば、古代ギリシャのエレクトロン貨、日本の和同開珎藩札太政官札などは、公共貨幣である。今日でも、公共貨幣は、政府発行貨幣(主に硬貨)として、わずかながら存続している。

近代の銀行制度の普及にともなって、中央銀行券、要求払預金などの債務貨幣の流通量が主流を占めるようになった。中央銀行券は、発行済みの債務証書(国債・社債など)と引き換えに、中央銀行の負債として発行される。要求払預金は、いつでも現金化できることを前提として支払手段として流通するため、一般に貨幣の一種とみなされる。要求払預金の多くは、銀行貸付にともなって、預金者の借用証書と引き換えに市中銀行の負債として「発行」される。また、その一部は、中央銀行券(債務貨幣)を市中銀行に預けることによって、その代用貨幣として「発行」される。
世代重複モデル
貨幣的成長モデル
マルクス経済学詳細は「マルクス経済学」を参照

マルクス経済学は一般的な通貨の3機能(尺度、保蔵、交換)に加え、債権債務の支払手段として信用創造された貨幣(一種の信用貨幣)、国際的な決済や支払いに用いる世界貨幣労働価値説との関係を指摘している。
現代貨幣理論(MMT)詳細は「現代貨幣理論」を参照

現代貨幣理論では、貨幣は負債の一形式であり、経済において交換手段として受け入れられた特殊な負債とされる[17]。特に現代経済においては、すべての経済主体が信頼する借用書のこと。今日、多くの国において貨幣として流通するものは、現金中央銀行券と鋳貨)と預金通貨(銀行預金)とされている。現代経済では貨幣の大半が銀行預金であり、借入れの需要に対する商業銀行の貸出しによって、預金という貨幣が新たに創造され、返済されることで消滅する[18]。また、政府支出によって銀行預金が創造され、納税することで消滅する[19]。現代の貨幣の信用・価値は国家の徴税権によって保証されている[20]

現代貨幣理論では表券主義の立場を取っており、公式な計算尺度として認められる貨幣を決定し発行する権限を持っているのは主権を有する政府としている[21]

国が国民に納税義務を課し名目的に納税額を決めることで、国民の中に貨幣需要が生まれ、副次的な働きとしてその国の中で国定貨幣による取引が生まれるとしており、租税が貨幣を流通させる[22]

貨幣と商品の交換レートは、市場を通じて決定されるか政府支出時に公務員の給与や公的事業の発注額によって決定されると考えられている。

政府の発行した貨幣は、納税手段として受け取ることを政府が約束しているため、政府の負債である。銀行預金は中央銀行や政府の発行した通貨との交換や他行との取引に利用できること等を約束しているため、民間銀行預金は民間銀行にとっての負債である。また、私的な支払手形や小切手は銀行預金との交換を約束している。このように政府や中央銀行の負債、民間銀行の負債、民間銀行以外の私的な負債といった負債ピラミッドが存在しており、ピラミッドが存在しているため貨幣による決済が可能と説明している[23]

そして貨幣が財政支出や民間銀行の信用創造によって創造および流通および消滅するプロセスと仕組みに焦点を当てている(en:Monetary circuit theory)。
法律における貨幣

法律により強制通用力が認められる通貨を法定通貨と呼ぶ。法定通貨は造幣局が製造し政府が発行する硬貨と、中央銀行が発行する銀行券に区別され、法令における貨幣とはこのうち、硬貨のことを言う。

実際、アメリカで発行される紙幣には「この紙幣は、公的および私的な、すべての債務に対する法定支払手段である」と明示され、カナダの紙幣には「この紙幣は法定支払手段である」、オーストラリアの紙幣には「このオーストラリア紙幣は、オーストラリアとその領土内において法定支払手段である」と書かれている[24]
日本における定義詳細は「通貨の単位及び貨幣の発行等に関する法律」を参照日本の硬貨(表)。1円(左上)、5円(右上)、10円(左中)、50円(右中)、100円(左下)、500円(右下)。

かつて貨幣は本位貨幣(本位金、銀貨)を指す言葉であり、政府紙幣銀行券とは区別されていた。明治4年(1871年)に造幣局が創業して以来、日本の法律上の「貨幣」とは、新貨条例および貨幣法に基づき発行された本位貨幣および補助貨幣を指した。臨時通貨法施行後は1988年3月末まで臨時補助貨幣のみの発行となったが、1988年(昭和63年)4月1日に通貨の単位及び貨幣の発行等に関する法律(昭和六十二年六月一日法律第四十二号)が施行されると、法的な本位貨幣と補助貨幣の区別はなくなり、すべて「貨幣」と称することになった。

「通貨の単位及び貨幣の発行等に関する法律」によれば、「通貨とは、貨幣及び日本銀行法 (平成九年法律第八十九号)第四十六条第一項 の規定により日本銀行が発行する銀行券をいう。」(同法2条3項) とされ、また「貨幣の種類は、五百円百円五十円十円五円及び一円の六種類とする。」(同法5条1項)と規定される。また、同法附則により貨幣とみなす臨時補助貨幣として同法律施行以前に発行された五百円?一円硬貨および記念硬貨が規定されている。この法律の施行により、明治時代から発行されていた本位貨幣の一円、二円、五円、十円、二十円の旧金貨(それぞれ額面の2倍に通用)と五円、十円、二十円の新金貨は1988年3月31日限りで廃止になり、名実ともに管理通貨制度に移行した。

したがって、現在の日本の法律上の貨幣とは、1948年(昭和23年)以降に発行された五円硬貨1951年(昭和26年)以降の十円硬貨1955年(昭和30年)以降の一円硬貨五十円硬貨1957年(昭和32年)以降の百円硬貨1982年(昭和57年)以降の五百円硬貨と、1964年(昭和39年)以降に記念のために発行された千円硬貨、五千円硬貨、一万円硬貨、五万円硬貨、十万円硬貨を指す。


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