貧困
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例えば先進国においては2021年の乳児の死亡者数は乳児1000人に対して10人以下であるが、1人当たりGDP(2019年)[13]の最も低い国20か国を見ると、乳児死亡率の平均は1000人に対して56.20(最高:アフガニスタン(106.75 世界最多)- 最低:マラウイ(34.19))になる[14]。また、2019年の先進国の平均寿命はいずれも75歳を超えるが、先の20か国の平均は62.9歳(最高:スーダン(69.1歳)- 最低:中央アフリカ共和国(53.1歳))である[6]。また、平均寿命50歳未満の国は、2010年時点では4か国(ハイチ:31.3歳、エスワティニレソト:47.4歳、中央アフリカ共和国:48.5歳)あったが、5年後に当たる2015年にはレソト(47.7歳)のみとなった。2019年時点で50歳未満の国は無くなっている。しかし、男女別に見た場合はレソトの男性の寿命が50歳に満たない47.7歳であった[6]
教育水準低下

多くの場合において貧困者には教育を受けるための費用や時間が無い。生活をしていくためには働かざるを得ず、また十分な収入を得られないため教育に対して投資できない。そのため貧しい国では識字率・就学率が低く、たとえ学校に通っていても教材・教師不足で十分な教育を受けていない例もある。

より貧しいものがより低い教育しか与えられないことは先進国においても見られるものであり、例えばアメリカ白人アフリカ系アメリカ人の間には、大学進学率に差が生じている。
過酷な労働・児童労働

貧困に陥ると生活の維持のために長時間働かざるを得ず、また危険な仕事でもせざるを得なくなる。また、このような状況では成人だけでなく児童も働くことが求められやすく、児童が十分な教育を受けられない要因ともなっている。貧困により人身売買売春・各種の犯罪を行うものも多く、中には兵士として内戦などに参加させられるものもある。そのため事故・病気などによる高い死亡率をもたらしている。

各国において過度の労働児童労働が規制されているが、貧困によって働かざるを得ないものに対して単純に禁止としてもその効果は薄く、貧困国の児童労働率は高い。

国際労働機関では、フィラデルフィア宣言において「一部の貧困は、全体の繁栄にとって危険である」と宣言している。不公平な労働条件による一部の貧困により普通の労働者も貧困に対する恐れを感じ、会社などによる権利侵害を容認せざるを得ない事態になる。これは労働者の保護が十分ではない国において助長され、経済的に豊かな国でも起こりうる。
治安の悪化バングラデシュ、鉄道線路にいるホームレスの男子児童(ストリートチルドレン

人間が貧困に陥ると、生活あるいは生命を維持・向上させるために犯罪に手を染めたり、犯罪組織などに関わったりする場合がある。また社会における貧困者が一定以上の数になると、都市の周辺にスラム(貧民街)を形成したり、都心部でホームレス及びストリートチルドレンとなるなどして都市環境が悪化して犯罪の温床となる。また、貧困によって人々の生活が困窮すると政府・国家に対する不満が増大し、暴動・略奪・内戦などに発展することもある。

このようにして治安が悪化すると一層経済活動が阻害され、また各種の援助も困難になって、更なる貧困を招く悪循環に陥る場合がある。
テロの誘発

貧困により治安悪化と政府・社会に対する不満が高まると、テロを人々が支持しやすくなる。また、犯罪の多発もあってテロリストの摘発が困難になることでテロ組織の温床となりやすい。加えて貧困はその政府に対するテロ攻撃の口実としても用いられる。

テロが行われると直接攻撃を受けた人間・施設のみならず、人々が恐怖を感じることによってその地域の観光業などが被害を受け、経済活動への影響も大きなものとなる。また、テロ対策にも相応のコストが必要であり、警備システムの導入など非生産的な分野への資金投入をせざるを得なくなって、生産性が低下して更なる貧困が助長される。
自然環境の破壊

貧困状態にある場合には将来を見据えた環境保護などは後回しにされ、現在の利益を得るために自然破壊が行われやすい。

自然破壊は合法的なものである場合も非合法なものである場合もあるが、森林を過度に伐採して木材を利用したり、過剰な焼畑や放牧、農耕に適さない土地の開墾が行われて結局砂漠化を招いたりする。また密猟がなされたり、大気汚染水質汚染が容認される。これらにより、自然環境や生態系が破壊されることとなる。

長い目で見れば、結局その自然・生態系の破壊は農地・牧草地の破壊・病気・水害などの自然災害をもたらし、その地域の更なる貧困を招く場合も多い。
原因と対策「開発援助」も参照

貧困の原因は個人について見ると、低賃金労働・失業・職が得られない・自身と家族と知人の病気及び介護養育借金負債)・浪費無気力精神疾患学生浪人見習い又は研究生などにおける無収入又は低収入状態・災害及び犯罪などによる財産喪失などが挙げられる。

また社会的・経済的な貧困の原因として、国家経営の破綻・戦争紛争人口爆発・耕作環境の悪条件と悪化・社会保障制度の不備・富の再分配機能の不足・経済活動における不況・高いインフレ・不適切な法律と規制・政府と社会の腐敗・乏しい教育機会などがある。また一部の特権階級貴族企業などによる搾取も挙げられる。

税制度の不備からビルトイン・スタビライザーがはたらかず、低所得層が不利益を被る状況も貧困の一因である。

かつて貧困は個人の怠惰によるものであり、そのような怠惰な個人が貧困に陥るのは当然であると考えられたが[要出典]、現在[いつ?]では多くの国において貧困は社会の問題であり、国家や社会によって対処されるべき課題と考えられている。


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