貧困
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ハーバー・ボッシュ法による窒素の化学肥料の誕生や過リン酸石灰によるリンの化学肥料の誕生によりマルサスの限界は克服されヨーロッパやアメリカの収穫量は増加した[9]が化学肥料を入手できるのは先進国のみであり、相対的な貧困は解消されなかった。
投資

貧困の原因として、投資の不足が挙げられることがある。投資不足によってインフラが整備されず、工場などの生産設備が整えられないため貧困となっているのであり、十分な投資がなされれば経済が発展して貧困が減少する、と考えられる。

そこで、比較的豊かな者から貧しい者へと投資することが求められる。貧しい者は現在の生活を維持するのが精一杯であり、新たに道路を建設したり生産設備を購入することが出来ないため、成長に必要な投資が生み出せず貧困から抜け出せない。貧しいものに投資して少し余裕が出来れば、その余裕の分を再び投資することで、経済成長の階段を登ることが出来るようになるのである。

このような考えは、収穫逓減の法則によっても支持される。この法則によれば貧しい社会に投資をすると、既に発展した社会に投資するよりも大きな収益と大きな成長が見込まれる。これは単純に言えば次のようなものである。機械を持っていない労働者に機械を与えると、大きく生産量は増加する。しかし既に5台の機械を持つ労働者にもう1台機械を与えても大して生産量は増加しない(機械が余るだけである)。そこで、貧困国へ投資することは合理的、効率的なものとなるはずである。

そして、実際に多くの先進国や国際機関などによって様々な開発援助が行われているが、援助が経済発展に繋がらなかった国家も多く存在する。このような国では以下のような問題が指摘される。

教育水準が低く労働者が機械を使用できない。

各種の産業水準が低いためハイテク機器の修理・維持ができない。

不適切な政策によって必要な原料・人員が手に入らない。

設備の建設・購入資金や援助物資が横領贈収賄などで消えてしまう。

戦争や内戦などによって設備が破壊される。

このような国家では、民間による投資もリスクが大きすぎて期待できず、むしろ海外に資金が流出することもよく見られている。
教育

貧困の原因として、教育水準の低さが挙げられることがある。十分な教育を受けられず労働者が単純労働にしか就けないことで、貧困を招いているのであり、教育を普及させることで貧困からの脱却ができると言われる。教育によって豊富に人材を育成すれば、投資を有効活用し、機械や資源を効果的に利用して経済発展が可能となると考えられる。

このような考えは、資金の効果的な利用という点からも支持される。資金は限られたものであるが、自国で産出しない限り経済発展に必要な様々な資源の多くは産出国から輸入せざるを得ない。一方で、人的資源ならば自国で教育によって増加させることができるのであり、しかも貧困国では教師の賃金も低い。このため多くの国が教育に力を入れており、また先進国・国際機関・あるいはNGOなどによって教育への支援が行われている。結果として、義務教育の普及率は大きく高められた。

しかしながら、義務教育の普及によっても経済発展を得られなかった国家も存在する。このような国では教育に関して以下のような問題点が指摘される。

教育機関における差別少数言語を使用することができない。[15]

教育資金や教材が横領などによって消える。

統計上は学校には行っていても、実際には教材・教師の不足で満足に授業を受けていない(生活苦により、教師が教材を売り払ってしまう例も見られる)。

人脈やコネ・賄賂などが重視され、教育を受けてもそれが適切に評価されないため、学習意欲が失われる。

教育を受けた人材がより環境の良い、国外に流出する。

また、教育水準の向上には学校教育だけでなく家庭や社会での教育も重要であるが、政治腐敗や社会の習慣から、教育に対する意欲・理解が低い場合、それらを外部から向上させるのは困難である。女性の教育水準の向上は経済発展のみならず、衛生知識の向上などによって健康状態を改善するのにも役立つとされるが、男性と比較して女性の教育には理解、協力を得がたい社会も多い。
腐敗

貧困の原因として、腐敗が挙げられることがある。横領贈収賄コネや金による採用・出世などの横行する腐敗した社会では正当に能力が評価されず、人々が努力をしようというインセンティブを失ってしまう。そうして努力を重ねる者がいなくなることで、社会全体が貧困に陥るのである。社会が改革され腐敗がなくなることによって、人々は将来に希望を持ち、教育や学習、努力に対してインセンティブを持つようになり、また他国からの援助なども貧困者に届くようになると考えられる。

しかし、政府や社会の腐敗を外部から改善することは難しい。[注釈 1]腐敗した国家は、経済が停滞しある意味において他国からの援助によって支えられているのではあるが、援助資金の使用に問題があったとしても、援助の打ち切りはなかなか行われない。

その理由の一つは、外交主管庁は、その部署の存続、発展のため予算を全て消費しなければならず(しない場合翌年の予算がカットされる)、援助を行って形式的にでも実績を挙げなければならないという点にある。そのため、援助資金を無駄にすることも黙認され、例年通りに援助が行われ、腐敗と貧困も温存される。

もう一つの理由は、人道的な観点から食糧や医薬品の援助の停止は難しく、ある意味において貧困者が援助を引き出す人質となっていることである。
市場競争・自由貿易

市場競争や自由貿易の利点と問題点については、以下のような主張がある。
利点

@media screen{.mw-parser-output .fix-domain{border-bottom:dashed 1px}}貧困の原因として、規制が多く市場競争や
自由貿易が行われないことが挙げられる。規制による経済活動の抑制やコスト負担がなくなれば、貧困が解消に向かう[要出典]。

自由貿易や規制緩和によって政府の権限が縮小されれば、汚職や政治腐敗も減少し、海外からの投資が増加する[要出典]。

競争によって経済発展を遂げるには、まず経済活動の基盤となるインフラが必要である[要出典]。

グローバリゼーションによる経済成長が、インドの極貧人口を2億人、中国では3億人減らした[16]

グローバル化は、格差を縮小させる効果もある。後進国が発展すれば、先進国で買う製品が安くなる。低所得者はエンゲル係数が高いため、食料品が安くなれば実質所得が増える[17]

問題点

自由貿易が賃金格差拡大を招いているという分析がある。ノーベル賞経済学者
エリック・マスキンとマイケル・クレマーが指摘するように、貿易が所得格差を縮小させるという従来のリカード比較優位説は実証性を欠いているとしている[18]


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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