貧困
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日本における定義は、「等価可処分所得(世帯の可処分所得を世帯人員の平方根で割って調整した所得)の中央値の半分に満たない世帯員」(この「中央値の半分」という基準は科学的根拠に欠けるということが研究者の共通した認識となっている[10])のことで、この割合を示すものが相対的貧困率である。預貯金や不動産などの資産は考慮していない[11]

相対的な基準を用いると、一定の計算式によって貧困か否かが判断されるため、判断者による恣意が入り込む余地は少ないものとなる。しかし、平均値との比較によって判断するため、国全体が貧しい場合には絶対的に見て相当貧困な状況にあっても、貧困でないとされる場合がある。また、ある発展途上国の貧困でないものは、ある先進国の貧困者よりずっと貧しい、ということにもなる。

ある国や地域の中で貧困という部類に分類されるかどうかが表されるのであり、経済格差という面から見た基準である。
貧困や不平等度を測る尺度

貧困についての統計は、貧困がある国や地域においてどの程度のものであるかを示す統計である。貧困の状況を調査するため、様々な主体によって様々な統計がとられており、貧困対策の基礎的情報となる。しかし、それぞれの統計で貧困の基準や捉えることの出来る貧困の状況が異なるため、貧困の理解に際しては複数の統計を注意深く分析することが求められる[誰?]。
貧困者数・貧困率

貧困者数とは、その国や地域において何人の貧困線以下の者が存在するかを示した指標であり、これを全人口に対する比率としたものが貧困率である。

貧困率には絶対的貧困率と相対的貧困率とがあり、前者は当該国や地域で生活していける最低水準を下回る収入しか得られない国民が全国民に占める割合を表す。一方の後者は自身の所得が全国民の所得の中央値の半分に満たない国民の割合を表す(詳細は貧困線を参照)。

これらの指標は、そこで用いられている基準がどのようなものであるか、の他にも貧困の程度については考慮されていないことに留意する必要がある。より深刻な貧困の方がより大きな問題である。しかし、例えば格差の拡大によって貧困線を僅かに下回っていたものが、最底辺の酷い貧困に追いやられたとしても、これらの指標は変化しない。貧困者数や貧困率は改善しているものの、貧困者の貧困の程度は悪化している場合もある。
貧困ギャップ

貧困ギャップとは、貧困線をどの程度下回っているかを表した指標である。貧困線を下回る人々の不足額を足しあわせて平均を求め、その貧困線に対する比率を求めたものであり、貧困の程度を示したものといえる。

しかしこの指標では、貧困者数や貧困率の変化について捉えることができない。また、貧困者同士の格差の拡大を捉えることはできず、例えば貧困者から別の貧困者に所得が移転し、一方の貧困者はましになったもののもう一方の貧困者の貧困が酷くなった場合、この指標は変化しない。

貧困線を大きく下回るものをより重視した、貧困線からの不足額を2乗して足しあわせる指標なども用いられる。
その他の尺度

詳細は当該項目参照。

ジニ係数

ダルトン・アトキンソン尺度

統計に影響するもの

ここではその他の統計に影響を与えるものを挙げる。
家族規模多くの貧困に関する基準は1人当たりで計算される。しかし通常消費活動は世帯単位で行われ、規模の経済により一般的に大規模な世帯の方が同じ1人当たりの収入でも生活水準は高くなる。これは大人数の世帯の方がより効率的に食糧・衣料・耐久消費財・家屋などを利用できるためである。等価可処分所得など、世帯規模の影響を考慮した指標もあるが、どのように家族規模を考慮するかによって貧困に関する数値は異なったものとなる。またこれにより、貧困の指標は社会の家族規模の変化(核家族化など)に影響を受ける。
家族構成・人口構成多くの貧困に関する基準は1人当たりで計算される。しかし1人当たりに必要となる収入は子供か成人あるいは高齢者かで異なったものとなる。それらを考慮するかしないか、あるいはどのように考慮するかによって貧困に関する数値は異なったものとなる。またこれにより、貧困の指標は少子化高齢化の影響を受ける。
調査対象の偏り統計全般に言えることであるが、貧困の統計においても調査対象が偏ったものとなる可能性がある。例えば政府の統計であれば、富裕層の方が政府に協力的である可能性がある。あるいは、若者の方が個人情報の記述に抵抗を覚える可能性がある。また、読み書きできない貧困者は、調査に対して回答できない可能性がある。その統計資料がどの程度信用に値するかは様々である。
その他の統計

上記のような直接貧困に関する統計の他に失業率識字率死亡率・乳児死亡率・GDP家計調査所得再分配調査など各種の統計が貧困に関した判断・理解に参照される。
問題

貧困はそれ自体が望ましくないものである。加えて広い分野において影響を与えており、様々な問題の要因となっている。
病気・飢餓平均寿命の統計に基づく世界地図(2019年,WHO)[6]栄養失調の子供。ダダーブケニア

特に著しい貧困は病気・飢餓・短い寿命をもたらす。貧困によって十分な食糧・清潔な水・必要な医薬品などを得られない場合、多くの人々(とりわけ弱者である子供)に様々な病気がもたらされる。中には治療の困難な病気もあるが、多くの人々が下痢による脱水症状百日咳肺炎マラリアなどの治療され得るもので死んでいる。また、飢餓によって餓死・栄養不足で失明ヨード欠乏症などになるものも多い。

石井光太によれば、食材の鮮度の関係からスラムには火と油を使った高カロリーな料理が共通して見られ、野菜を買う余裕が無く、必要なカロリーをそういったジャンクフードで補う低所得者・失業者には「貧困によって生まれる早死にしやすい肥満[12]という現象が見られるという。

このような状況は乳児死亡率・平均寿命にも現れている。例えば先進国においては2021年の乳児の死亡者数は乳児1000人に対して10人以下であるが、1人当たりGDP(2019年)[13]の最も低い国20か国を見ると、乳児死亡率の平均は1000人に対して56.20(最高:アフガニスタン(106.75 世界最多)- 最低:マラウイ(34.19))になる[14]


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