コンテは古代の狩猟採集社会における土地のような、希少でない物品からなる共同の「国家的」財産に肯定的だった。農業は狩猟採集よりもはるかに効率的だったので、誰かが耕作向けに割り当てた私有財産(土地)は残りの狩猟採集民に一人当たりの土地をより多く残しており、それゆえ彼らに害を及ぼさなかった。したがって、この種の土地収用はロックの但し書き (Lockean proviso) に反しておらず「まだ十分に、良いものが残っていた」との主張である。後年の理論家は、コンテの分析を財産の社会主義的批判に対して使用している。
ピエール=ジョゼフ・プルードン: 財産は窃盗詳細は「:en:Property is theft!」を参照
1840年の論文『財産とは何か?』の中で、ピエール・ジョゼフ・プルードンは「財産は窃盗だ!」と答えている。天然資源において、彼は「法律上の」財産と「事実上の」財産の2種類を判定し、前者は違法だと論じている。プルードンの結論は「財産は公正たるべきあり可能ならその状態に対して必然的に平等でなければならない」である。
天然資源における労働の産物を財産(用益権)としたプルードンの分析はより微妙なものである。彼は、土地自体は財産たり得ず人類の管財者として個々の所有者によって維持されるべきであり、労働の産物が生産者の財産たるべきだと主張している。プルードンは、労働なしに得られた富は何であれその富を生み出すのに労働した人々から盗まれたもの、という道理を説いた。プルードンによれば、労働の産物を雇用主に引き渡す(それで雇用主が賃金を払う)という自発的な契約でさえ盗難であった。
プルードンの財産論は世に出始めた社会主義運動に多大な影響を与え、プルードンの思想を修正したミハイル・バクーニンのような無政府主義の理論家に啓蒙を与えた。 フレデリック・バスティアの財産に関する主な論文は、1850年の著書『経済調和論』の第8章に見られる[60]。伝統的な財産理論から根本的な見直しを行い、彼は財産を物理的対象ではなく、むしろ物事に関連している人々の関係だと定義した。したがって、コップ一杯の水を所有しているという発言は「私はこの水を正当に他人に贈与したり交換したりできる」の短縮形にすぎないという。本質的に、人が所有するものは対象物ではなく対象物の価値である。「価値」についてバスティアは「市場価値」を意味するとして、これは実用性とは全く異なるものだと次のように強調している「相互関係において、我々は物事の実用性の所有者ではなく価値の所有者であり、そして価値とは相互的な役務から生み出された評価である」。 バスティアは、技術進歩と分業の結果として共同体の富の在庫は時間経過と共に増加すると理論づけた。未熟練の労働者が例えば小麦100リットルを買うために費やす労働時間は、歳月が経つほど(熟練度向上により)減少し、したがって「無償」の満足感に至る[61]。かくして、私有財産は絶え間なく自らを破壊し、共同体の富に変わっていく。 私有財産に対する共同体の富の割合の増加は、人類の平等に向かう傾向を生むという。 このように私有財産が共同体領域に変化したからといって、私有財産が完全に消滅するわけではないとバスティアは指摘する。それどころか、このことは人間が進歩するにつれて新たにより洗練された要望と欲求を継続的に生み出す理由であると述べている。 レオ13世 (ローマ教皇)は、1891年に発表したレールム・ノヴァールムにて「人が賃金労働に従事する時、人を仕事へ駆り立てる理由や動機は財産を得ること、その後それを自分の所有物として保持することであるのは確かに否定できない」と記した。 天体物理学者で哲学者のアンドリュー・J・ガランボス ガランボスは、財産が非強制的な社会構造に不可欠だと説いた。彼は自由を「あらゆる個人が自分の財産を完全に(100%)支配しているときに存在する社会的条件である」と定義した。ガランボスは、財産を次の要素を持つものと定義している[62]。 財産とは、個人の人生における非生殖的なあらゆる派生物であり、これは子供が両親の財産ではないことを意味する[63]。上の定義に従えば、子供の生命は本人の「原始財産」であり、親や保護者が所有する財産ではない。 ガランボスは、実際のところ行政府は財産を保護するために存在しており、国家が財産を攻撃すると繰り返し強調した。例えば、国家は人々がそのようなサービスを望むか否かにかかわらず、税金の形でそのサービスへの支払いを要求する[注釈 15]。個人のお金は当人の財産なので、税金という形でのお金の没収は財産に対する攻撃である。徴兵制も同様に、人の原始財産に対する攻撃である。 自然人が財産を所有し契約を結ぶ権利を享受していると考えている現代の政治思想家は、ジョン・ロックについて2つの見方がある。一方はロック礼賛派で、ウィリアム・H・ハット エルナンド・デ・ソト (経済学者) デ・ソトによると、上記のすべてが経済成長を促進する[64]。学識者達は、財産または土地に金銭的価値を割り当てることによりコモディティ化することが伝統的な文化遺産を(特に先住民族から)奪ってしまう事を指摘して、財産が考慮される資本主義の枠組みを批判している[65][66]。これらの学者達は、財産の個人的な性質と現代西洋社会が支持する富の創造との相容れないアイデンティティの関連を指摘している[65]。
フレデリック・バスティア: 財産は価値
ローマ教皇レオ13世
アンドリュー・J・ガランボス: 財産の精緻な定義
原始財産、これは個人の生命である。
一次財産、これには観念や思考や行動が含まれる。
二次財産には、個人の一次財産の派生物である全ての有形および無形の所有物が含まれる。
現代的見解
資産を保護する地域社会の協定からの個人の独立増大
明確で、証明可能で、保護可能な所有権
一国全体での財産規則と財産情報の標準化および統合
経済取引での不正行為に対する処罰の確実性向上に由来する信頼性増加
各企業の共有リスクと所有権および同リスクに対する保険でのより直接的な想定を可能にする、より公的で複雑な書面による所有権声明
より多くの物が融資の担保として機能できるため、新規事業向け融資の活用性向上
信用履歴や資産価値等に関する情報への容易なアクセスと信頼性向上
財産の所有権を文書化する声明の代替可能性、標準化、移動可能性の向上(これによって、各企業にとっての国内市場や、個人ほかの主体による複雑なネットワークを介した財産の容易な移動などの構造に関する道が開かれる)。
焼畑農業慣行の最小化による生物多様性の保護強化
関連項目
財産権
自然享受権
資本主義
物的財産または不動産
人的財産または動産
リーエン
所有権
徴税と窃盗
贈与/喜捨
接収/押収
土地収用
国有化
課税
脚注[脚注の使い方]
注釈^ 特に日本では、このうち国が所有するものを国有財産、地方自治体が所有するものを公有財産と区別している(前者は国有財産法で、後者は地方自治法238条で規定されている)。
^ 組合制度による特殊な共有制度(合有と呼ばれる)で、日本では民法668条などで規定されている[3]。
^ 他人の土地を一定の目的のために使用収益する権利で、民法上は地上権、永小作権、地役権、入会権の4種が規定されている[8]。
^ 海外で散見される偽ブランドのコピー商品や、著作権を無視した海賊版などが顕著な違法事案例。後者については、動画共有サイトへの違法アップロードも後を絶たない。
^ 日本国内でも、三菱地所プロパティマネジメントやプロパティエージェントなど不動産関連の企業名でしばしば使われている。
^ 具体的には、奴隷制、徴兵制、成年以下の子どもの権利、結婚、中絶、売春、麻薬、安楽死、臓器提供に関連した諸問題がある。
^ ここでは土地と労働と資本を指す。