財産
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(アダム・スミス著『国富論[15]

古典的自由主義は財産の労働説を支持している。彼らは、個人がそれぞれ自分の生命身体を所有しているとの見解を抱いており、従って人はその生命身体を使う労働での生産物を認知する必要があり、それは他者と自由に交換して取引できるという見解である。
「誰しもが自分の体という財産を持っている。これは本人自身だけのもので他に誰も権利を持たない。(ジョン・ロック著『統治二論』)「人々が社会に参画している理由は、自分の財産保護である。(ジョン・ロック著『統治二論』)「生命、自由、財産が存在するのは人間が法律を作ったからではない。逆であって、以前から生命、自由、財産が存在していた事実が、人間に法律を作らせたのである。(フレデリック・バスティア著『法』)

保守主義は、自由と財産が密接に結びついているという概念を支持している。私有財産の所有が広がれば広がるほど、国家や国民はより安定して生産的になる。保守主義者は、財産の経済的平準化(特に強制的なもの)は経済的進歩ではないと主張している。
「財産を私的所有から隔離して、全体主義国家(Leviathan)がすべての支配者になる...[中略]私有財産の基盤の上に偉大な文明が築かれる。保守主義者は、財産の所有が所有者に特定の義務を課すことを認めている。彼はこれらの道徳的、法的義務を喜んで受け入れる。(ラッセル・カーク著『慎重さの政治学(The Politics of Prudence)』)

社会主義の基本原則はこの概念の批判を中心としており、(とりわけ)財産を守るコストは私有財産の所有権からのリターンを上回り、財産権がその所有者に彼らの財産を発展させたり富を生み出すことを奨励したとしても、彼らは自分達の利益のためにそうしているだけで、それは他の人々や社会全体への利益と一致しない場合がある、と述べている。

自由主義的社会主義は、一般的に短い放棄期間で財産権を受け入れる。言い換えると、人は物品を(多かれ少なかれ)継続的に使用する必要があり、さもなければ所有権を失う。これは一般に「所有財産」または「用益権」と呼ばれる。従ってこの用益権システムにおける不在者の所有権は違法であり、労働者が自分と共に働く機械または他の機器を所有している。

共産主義は、生産手段共有制だけが不平等なり不当な結果の最小化と利益の最大化を保証すると主張している。それゆえ、人間は(財産とは対照的である)資本の私的所有を廃止すべきだと主張する。

共産主義も一部の社会主義も、資本の私的所有は本質的に非合法という思想を支持している。この議論は、資本の私的所有がいつもある階級に他の階級より多くの利益を生み出して、この私有資本を介して支配が起こる、という思想が中核である。共産主義者は、無産階級の人達による「苦労して獲得し、独力で獲得し、独力で稼いだ」個人財産に反対しない。社会主義も共産主義も、資本の私的所有(土地、工場、資源など)と私有財産(家、物質的な物など)を慎重に区別している。
関連する概念
合法な契約取引等

一般的な意味や説明行為者
販売金銭と引き換えに、動産・不動産やその所有権を与える。対比の概念は購入。売り手
共有複数当事者による共同運営として動産・不動産の使用を許可する。所有権者
賃貸補償金と引き換えに、動産・不動産の限定的かつ一時的(ただし潜在的に更新可能)な独占的使用を許可する貸し主
許諾上に同じだが、主に知的財産での利用料を払うライセンス契約について言う。許諾者
無形の財無形の財他人の所有財産を一定の目的のために使用収益する
用益物権やそれに類するもの。この特定権益は、同一の当事者によって権益と対象財産が所有されると、容易に破棄される場合がある。N/A
分与財産から生じる全ての財産権について特定部分の所有権ないし持分を別の当事者に与えられるのが特徴で、それ自体が財産の非実体的な形であるもの。具体例として株式など。
地役権一定の目的範囲で、他人の土地を自分の土地のために利用できる権利。 賃借権と違い、その効力は目的を達成する必要最小限度にとどまる。
先取特権先取特権法律の定める一定の債権を有する者が、他の債権者に優先して弁済を受けられる権利。 特定動産の先取特権(民法311条)と不動産先取特権(民法325条)を合わせて、特別の先取特権という。先取特権者
抵当権債務の担保に供した物について他の債権者に先立って自己の債権の弁済を受ける権利。 質権と違って引渡しを要しないため所有者は抵当権成立後も引き続き使用可能。抵当権設定者
質権(担保)債務不履行に備えて債権者に渡しておく債務者の所有物で、債権弁済を確保するためのもの。融資の返済が滞った時などに融資先の金融機関に差し出す財物[16]。債務者
利害衝突
(利益相反)僅少ないし矛盾のため財産を適切に使用・占有できずにいる、事実上の共有不能状態。 不動産でその解決に至った場合、当事者の一方がその場所から立ち退いたりする可能性がある。N/A
警備警備危害、使用、奪取への対抗手段や保護の程度。 隠し場所や戸締りから各種警報装置や人員配置に至るまで、警備対象物の規模および重要性によってその手法も様々である。警備員
保全管理上に同じだが、主に破産手続きにおける責任財産の保護に関していう。保全管理人[注釈 8]

侵害行為

一般的な意味や説明実行犯
不法侵入正当な理由なく他人が所有する不動産に侵入したり使用する、または要求されても他人の不動産から立ち退かない。
不法侵入
破壊行為有形財産またはその外観に対する破壊、損傷、改変。破壊者
窃盗他人の財物を所有者の意思に反して取得すること、または所有者の意思に反する財産所有権の機能的変更。泥棒
著作権侵害故意または過失による知的財産の無断複製および配布、また前段階でその複製が公開された知的財産の所有。海賊版
所有者の逸失利益の影響による侵害、または利益または個人的利益を伴う侵害。
剽窃知的財産(恐らく著作権で保護されている)かパブリックドメインかに関係なく、実際の著作者名を記さずに自分の創作であるかのように作品を発表すること。盗作

その他の行動

一般的な意味または説明行為者
不法占拠その不動産に所有権があろうとなかろうと、使われていなかったり放棄された不動産を占有すること(当該不動産に他人の所有権があって、要求されても立ち退かないような場合、この行為は不法侵入となる)。
スコッター
リバースエンジニアリング既存の他社製品を分解・解析して、その製造方法、動作原理、ソースコードといった技術情報を(知的財産で保護されている部分もいない部分も)得る開発手法。リバースエンジニア
代作出版時に他の当事者が著作者として記されることが明示的に許可されている文筆作品の創作。ゴーストライター

構成要件
労力と希少性

洋の東西を問わず、権力者の古墳からは貴石貴金属で作られた装飾品がしばしば発見される。すなわち、何らかの特定要件を満たす物を人々は古代より財産と考えてきたわけで、その本来的な財産として考えられる主な2つの根拠が、「労力」と「希少性」である。ジョン・ロックは、対象物に「自分の労働を混ぜる」[18](すなわち生産したり加工する)労力や、処女地を開墾して耕作する労力を強調した。ベンジャミン・タッカーは、財産のテロス(すなわち財産の目的が何なのか)を見定めようとして、希少性という解決策に辿り着いた。人々の要望に比べて物品が不足している時にだけ、その物品が財産になる[19]。例えば、狩猟採集社会だと土地は狩猟の場所であって減ることがないため、土地を財産とは考えなかった。農耕社会では耕作に適した場所と適さない場所という区別が生まれ、人々が耕作に適した希少な場所を求めてその土地を財産と考えるようになった。何かが経済的に希少となるには、ある人が使用すると他人がそれを使用できなくなる「排他性」が必要不可欠である。

知的財産は、先述した根拠2つのうち主に労力を根拠とするものである。人の体は、双方の基準からも当人の財産にあたる[注釈 9]。体という財産に関しては、中絶麻薬安楽死の問題でも論じられる。

誰の所有にも属さないものを西洋ではコモンズ(社会のあらゆる人達が使用できる文化的資源および天然資源)と呼ぶことがある[注釈 10]。所有権ほかの法律は明確な所有者のいないコモンズの数を減らす傾向があり、これがコモンズの悲劇によって起こる稀少資源の枯渇に対する保護を可能にする、と財産権の支持者は主張している。

なお、公海の深海底、月などの天体宇宙空間、南極大陸などは(先進国を中心に調査や探査が進められているものの)明確な所有者が定められていない。これは1970年の国連総会にて、特定の空間や資源は人類に共通した財産であると決議されたためで、これらは「人類の共同財産(common heritage of mankind)」とも呼ばれている[20]。米国とカナダでは、野生生物が一般的に法律で国や州の財産と定義されており、この野生生物の公的な所有権は野生生物保護の北米モデルと呼ばれている[21]
所有詳細は「所有権」を参照

例えば、国立印刷局で刷られた直後の(誰のものでもない)紙幣を、人は財産と呼ばない。中央銀行を経て市中に流通され、その紙幣を誰かが「所有」することで財産と呼ばれるようになる。

所有に関する法律は、対象となる財産(銃器、不動産、動産、動物など)の性質により国によって大きく異なる場合がある。個人は財産を直接所有できる。大半の社会では、企業、信託機関、国家や政府といった法人が財産を所有している。

多くの国では、制限的な相続と家族法によって女性は遺産相続に制限があり、男性だけが完全な相続の権利を有している。

古代の多くの法制度(例えば初期のローマ法)では、神殿等の宗教的な場所がそこに祀られた神ないし神々の財産だと見なされた。インカ帝国では、神々と見なされた逝去皇帝が死後も財産を支配していた[22]
日本の財産制度史

先述のとおり、農耕社会の形成によって日照や水はけなど耕作に適した土地を人々が財産と考えるようになったのであれば、世界史の観点では農耕生活が約1万年前の新石器時代に遡ることができ[23]、日本においては水田稲作が中国より伝播する縄文時代後晩期(約3000-4000年前)[24]から弥生時代までに、土地を財産と見なすようになったと考えられる。

弥生時代に入ると、権力者同士が国を超えて(使者を介して)財物をやりとりするようになった。金印として知られる漢委奴国王印は、光武帝が57年に奴国の朝賀使へ渡したものと『後漢書』に記されている。


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