日本の天皇のように君主に政治的な権限を持たせない君主国は、北欧やオランダ、スペイン、イギリスなどが挙げられる。君主の地位を何らかの文脈で「象徴」と表現するのは日本に特異のことではなく、以下のように複数の君主国に見られる。
日本の天皇以上に政治的な権限が制限されている例として、スウェーデン国王があげられる。1979年の憲法改正以後、首相任命などの形式的任命行為すら認められていない。政治から完全に分離され、国の対外的代表(元首)としての地位しかないため、象徴君主制という新たな区分を設けるべきではないかとする意見がある。ただし天皇とは異なり、スウェーデン軍の最高指揮官ではないものの、軍における最高の地位を与えられている。
イギリスの君主は国王大権と呼ばれる様々な特権・行政権を独占しているとされているものの、その行使は17世紀以降徐々に制限されるようになった。今日においては国王大権は政府によって決定され、君主による行使は政府の助言が必要とされており、イギリス君主は事実上政治的機能を喪失している[21]。ウォルター・バジョットは1867年、「イギリス憲政論(The English Constitution)」で成文法の憲法を持たないイギリスでヴィクトリア女王をsymbolと位置づける憲政論をしており、今日でもイギリスの君主制を言い表す言葉としてしばしば「象徴的国家元首(Symbolic Head of State)」という表現が使われる。
イギリスと同君連合の関係にあるカナダ政府およびカナダ王室は、君主の地位を「全カナダ国民の忠誠、統合、権威を象徴する個人(The personal symbol of allegiance, unity and authority for all Canadians)」である説明している[22]。
ルクセンブルク大公は憲法によりその地位を「国家の元首であり、国家の統合を象徴し、その独立を保証する者」と定義されている。
一方で、リヒテンシュタイン家は、象徴・儀礼的存在にとどまらず、強大な政治的権限を有している。そのため、ヨーロッパ最後の絶対君主制と言われる。またアラビア半島に位置する半数以上の君主国つまりサウジアラビア、アラブ首長国連邦(7首長国全て)、オマーンも絶対君主制である。
出典[脚注の使い方]^ “象徴天皇制に関する基礎的資料