象徴天皇制
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一般に「象徴」とは、無形で象徴的なものを表すための、有形で具体的なものである。例えば国旗・王冠・紋章・十字架・鳩は、国家・王位・家系・キリスト教・平和の象徴である。また物の象徴の他に、国王・大統領など人が象徴とされる場合もある。1931年のウェストミンスター憲章は前文で「国王はイギリス連邦を構成する諸国の自由な結合の象徴」と定める[4]
天皇の地位

「天皇は、日本国の象徴であり日本国民統合の象徴」(第1条)、「天皇は、この憲法の定める国事に関する行為のみを行ひ、国政に関する権能を有しない」(第4条)と規定されている。なお憲法には君主や元首の規定は存在しないため、天皇が君主または元首であるかは議論が存在する。詳細は「#議論」を参照
天皇の国事行為

天皇は日本国憲法の定める国事に関する行為のみを行うとされ、国政に直接関与する権能を有しない。天皇の行う国事行為は以下の通り。

国会指名に基づく内閣総理大臣の任命。

内閣の指名に基づく最高裁判所長官の任命。

憲法改正法律政令及び条約の公布。

国会の召集

衆議院の解散

国会議員の総選挙の施行の公示。

国務大臣や、その他の官吏の任免の認証。

外国への全権委任状、派遣する特命全権大使特命全権公使の信任状の認証。

大赦特赦、減刑、刑の執行の免除及び復権の認証。

栄典の授与。

批准書、条約など外交文書の認証。

外国の大使、公使の接受。

儀式を行うこと。

これらの天皇の国事行為は、内閣の助言と承認が必要とされ、内閣がその責任を負う(輔弼と同義)。
議論

象徴天皇制における天皇が、「君主」または「元首」であるか否かは学説上の議論がある。憲法や法令には「君主」や「元首」の規定や用語は存在しない。このため「君主」や「元首」の定義や解釈にもよる。
政府見解

国会答弁における政府側答弁には以下がある。国家の形態を君主制共和制とに分けまして、わが国がそのいずれに属するかということがまず問題になるわけでございますが、公選による大統領その他の元首を持つことが共和制の顕著な特質であるということが一般の学説でございまするので、わが国は共和制でないことはまず明らかであろうと思います。それでは、君主制をさらに専制君主制立憲君主制に分けるといたしますならば、わが国は近代的な意味の憲法を持っておりますし、その憲法に従って政治を行なう国家でございます以上、立憲君主制と言っても差しつかえないであろうと思います。もっとも、明治憲法下におきまするような統治権の総攬者としての天皇をいただくという意味での立憲君主制でないことは、これまた明らかでございます。(中略)学問上の定義の問題に帰する問題であると思います。日本はあくまで象徴天皇制という世界にも独自な形態であるということを申し上げておきます。 ? 1973年(昭和48年)6月28日 参議院内閣委員会、政府委員・吉國一郎内閣法制局長官答弁
天皇君主説

佐々木弘道は「象徴天皇制は日本独自の形式的な君主制」とする。日本国憲法第1章上、天皇は、その権限を第6条の任命権と第7条国事行為の限定列挙(加えて第4条2項の国事行為の委任に関する規定を含めることもある)により量的に限定され、かつ質的にも、第3条により政治的決定権を剥奪され、また6条において実質的決定権の所在を規定することで天皇の行為が形式的なものであることを明らかにしている。かくして天皇の権限は名目的・形式的なものに限定されている。一般的な英国型立憲君主制イギリスの君主制)に比して、このような君主権力がよりいっそう消極的な、日本独特の君主制である「天皇制」を象徴天皇制としている[5]

佐藤功は「国際法の観点からは対外的に国家を代表する地位にある国家機関を元首とよび、元首たる君主を有する国家形態を君主制とよぶ」ため、「(日本国憲法下の)日本国は伝統的・典型的な君主制には属さないが、同時に伝統的・典型的な共和制にも属さない」とし、「国民主権下の君主制」と呼ぶのが適当であろうとしている[6]


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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