豊臣秀保
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吉野川上流の上西川の滝の辺りを散策している時、秀俊は、数十丈の断崖より、稚児小姓に飛び降りろと命じた。小姓は(理不尽な仕打ちに)怒りを堪えきれずに、いきなり跳びかかって秀俊に抱きついたまま、深流に飛び込んでともに溺死したとする[16][17][18]

多聞院日記』では、4月12日に十津川にいって(治療のための)祈祷をしたが15日に危篤になって16日に十津川において死去したので京に遺体を送って葬儀をした、とあるだけだが、渡辺世祐は上記の話を取り入れてか十津川の地神の怒りに触れて溺死したとする説を支持している[19]

しかし桑田忠親の研究によると、より信憑性が高いと考えられている同時代の史料である駒井重勝の『駒井日記』の4月10日から18日の記述でも、秀保は疱瘡麻疹を患っていて、文禄4年(1595年)4月に病気療養の湯治のために大和の十津川へ赴いたとし[1]、その病状は10日頃から悪化し、13日の夜には吉田浄慶盛勝[注釈 8]、16日の夜には曲直瀬正琳などの医師の投薬を受けた結果、14日には一時回復を見せたが、再び15日の朝から病状が悪化。翌16日の早暁に病死したことが判明したという[1]

桑田は、秀保を「秀俊」とする誤記や悪業には特に注意を払っていないが、文禄3年とする時期は整合しないので誤りと指摘し、さらに4月15日の朝から重篤となった病勢は『駒井日記』から明らかなのだから、吉野川を逍遙したり小姓の勇気を試したりして溺死したというようなことは到底信じられないと、単なる風説、俗説、喧伝の類いとする[1]
出生について

藤田恒春は秀保の生年が正しければ次兄秀勝とは10歳も歳が離れており、ともが46歳の時に産まれたことになるので、秀保はともの実子ではなく養子と考えた方が自然であろうとしている[20]。また、『武徳編年集成』には「三好吉房の庶子」と書かれている。これに対し菊地浩之は秀保は既に養子であった丹羽長秀の三男仙丸を外してまで秀長の養嗣子に据えられており、その背景にあったのは秀吉・秀長との血縁しか考えられず、やはり秀保はともの実子であったと見做すのが妥当であろうと述べている[21]
郷土の伝承

奈良県郡山町(現大和郡山市)の『郡山町史』には豊臣秀俊(秀保)に関わる下記の二つの池の成り立ちについての伝承が記されている。長兄秀次の殺生関白の悪評の影響か、十津川での溺死の逸話同様に極端に暴君として描かれている。

尼が池 - 秀俊は臨月の婦人を捕らえ「腹を割いて胎児を見せよ」と命じた。妊婦は驚き、尼となって助命嘆願をしたが許されなかったため、腹を割いて胎児を出し、池に身を投げたという[注釈 9]

蛇が池 - 秀俊が忍術師に「この池から大蛇を出して見よ」と命じた。忍術師が呪文を唱えると、涸れ池が水で満ちていき、大蛇が出現して秀俊をひと呑みにしようとしたため、秀俊は慌てふためいて郡山城に逃げ帰った。そのため、家臣は二度と大蛇が出現しないように池底の穴を大石で埋めたという。

家臣



藤堂高虎

桑山重晴

杉若無心



宇多頼忠

本多俊政

島清興



小堀政一

横浜一庵

横浜茂勝



登場する作品
テレビドラマ


おんな太閤記』(1981年NHK大河ドラマ、演:廣貴久→中越司)

真田丸』(2016年、NHK大河ドラマ、演:三津谷亮

関連図書

桑田忠親「羽柴秀保につきて」(『国史学』19号、1934年6月)

北堀光信「羽柴秀保と聚楽行幸」(『奈良歴史研究』 第68号、2007年7月)

脚注[脚注の使い方]
注釈^ a b 『武徳編年集成』『野史』では文禄3年4月25日1594年6月13日)没とする。
^ 多くの資料や小瀬甫庵の『太閤記』などでは秀保のは秀俊となっているが、これは誤記で、かつて秀俊と名乗っていた小早川秀秋と混同したためと考えられている。
^ 秀保の結婚により、先に秀長の養子とされた丹羽長秀の子仙丸は家老の藤堂高虎の養子に転じた。
^ a b 従来、秀保の内室の実名をおきくと比定する説があったが、『駒井日記』文禄三年三月三日の条に”大和御うへ様”と”大和おきく様”という言葉が同時に出てきて、秀保の奥方様を意味する「大和御うへ様」と「おきく様」は別人で、おきくは秀保の内室ではないことが分かり、おきく様の方が毛利秀元の妻となった秀長の娘の実名であろうと比定された。
^ 加賀藩第4代藩主の前田綱紀が残した文書[13]
^ 『東西歴覧記』による[2]


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