豆腐
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この江戸時代の豆腐は、今日でいう木綿豆腐のみであった[9]

豆腐は庶民の生活に密着しており、江戸では物価統制の重要品目として奉行所から厳しく管理されていた。「豆腐値段引下令」に応じない豆腐屋は営業停止にされるため、豆腐屋は自由に売値を決めることは出来なかった[19]。また各大名の献立にもしばしばのぼる食材であった[20]下野国壬生藩の鳥居家の食事記録を調べると、菜は月に1日を除いて全て豆腐料理が出されていた[20]

一方、江戸において豆腐料理屋は評判で、江戸で初めて絹ごし豆腐を売った「笹の雪」はいまだに続いている老舗である。当時、庶民に親しまれたのは豆腐の田楽であり、豆腐を串に刺して焼き、赤みそを付けて食べる料理であった[21]

天明2年(1782年)に刊行された『豆腐百珍』には、100種類の豆腐料理が記述されている[20]。また、豆腐は様々な文学でも親しまれてきた。当時より、豆腐は行商もされており、前述の豆腐百珍は大きな人気を得るほど一般的な料理であった。行商の豆腐屋はラッパを鳴らしながら売り歩いていた。関東地方では、明治時代初期に乗合馬車鉄道馬車の御者が危険防止のために鳴らしていたものを、ある豆腐屋が「音が“トーフ”と聞こえる」ことに気づき、ラッパを吹きながら売り歩くことを始めたものである。その由来のようにラッパは「豆腐」の高低アクセントに合わせて2つの音高で「トーフー」と聞こえるように吹くことが多いが、地域や販売店によっても異なり、「トー」と「フー」が同じ音高の場合もある。2つの音高を使うラッパの場合、1つのリードで2つの音高が出る仕組みになっており、呼気と吸気で音高が変わる。スーパーなどが増えて歩き売りをする豆腐屋が減ったものの、近年では昭和の頃のように地域に密着した商売をする人も出て来ており豆腐屋のラッパが復刻されている[22][23][24]近畿地方では、豆腐屋はラッパではなく鐘(関東ではアイスクリーム屋が用いていた)を鳴らしていた[25]

近代工業が発達するに連れて豆腐の製造作業の機械化も進み、わずかの大豆から効率よく豆腐が大量生産できるようになり、より安価で提供されるようになった。柔らかいタイプの豆腐は昭和以前には[注 3]個人経営の豆腐屋で毎日作られ、動かすことで形が崩れることの無いよう、売る間際まで店頭の水槽の中に沈められているものであった。

現代日本でも豆腐は非常に一般的な食品であり、そのまま調味料をかけて食べられるほか、様々な料理に用いられている。冷奴湯豆腐味噌田楽などのように主要食材になるほか、汁物鍋料理の具材、料理のベースになる食材として使われるなど用途は多彩になっている。

技術進歩で、常温で120日保存可能な豆腐も販売されている[26]厚生労働省によると日本では、かつて細菌の繁殖で健康被害が発生したことから、1974年に、おおむね10以下の冷蔵保存か、水槽内で冷水を絶えず交換しながら保存するなどの製造・保存基準が定められたという。国内メーカーは1986年から常温保存用の豆腐(無菌充填など)を輸出しており、これに関して業界団体は災害時の販売・配布の観点からも基準の見直しを要望してきた[27][28][29]

水にさらさず直接容器にすくい上げたものは「寄せ豆腐」「おぼろ豆腐」と言う。ほぼ同様の沖縄の伝統食品として「ゆし豆腐(ゆしどうふ)」がある。

堅豆腐(固豆腐)や五箇山豆腐など非常に硬い豆腐があり、これは濃度の高い豆乳を使用したり、多めに凝固剤を使用したり、重石で脱水したりする事による。
沖縄諸島

沖縄県地方の豆腐も、日本同様中国との交易を通じて伝来したものであり、中国の豆腐と似ていて固くしまり、ずっしりとした重量をもち、「しま豆腐」と呼ばれる[30]。中国同様、生しぼりの豆乳で製造し、強く押圧して水分をしぼる[30]。しかし、天然の石膏が豊富で内陸が深く広大な中国大陸では凝固剤として石膏が用いられることが多いのに対し、琉球列島では日本同様「にがり」が凝固剤として用いられる[30]
朝鮮半島

朝鮮半島では「??(トゥブ)」といい、中国同様固い豆腐である[30]高知県土佐国)の「一升豆腐」は、安土桃山時代長宗我部元親李氏朝鮮より豆腐職人を連れ帰り、彼らに造らせた豆腐が起源だとされる[30]
ミャンマー

ミャンマーでは「トーフー」という[30]シャン族ヒヨコマメから豆腐を作っている(「ビルマ風豆腐」を参照)。
インドネシアインドネシア・スラカルタ(ジャワ島中部)の豆腐料理

インドネシアでは、同じ大豆由来のテンペ(茹でた大豆をケーキ状に発酵)ほどではないが豆腐(現地名 tafu もしくは tofu)も食されている。油で揚げることが多く、料理食材に使われるほか、スナックとしても人気で、ジャワ島の都市部などでは、塩などで味付けしたでき立て厚揚げ(tafu goreng タフゴレン)の屋台が見られる。


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