「警備犬」とは異なります。
ニュージーランドの警察犬
(犬種はジャーマン・シェパード・ドッグ)
警察犬(けいさつけん)とは、警察など法執行機関の捜査活動に利用するイヌ(犬)。ヒトの4千倍?6千倍といわれる犬の鋭い嗅覚等の能力を高度に訓練し、足跡追及能力や臭気選別能力を利用する。1896年に、ドイツ帝国のヒルデスハイム市警察で初めて採用された[1]。 警察犬は、1896年にドイツ帝国のヒルデスハイム市警察で、警察官と一緒にパトロールする犬として採用されたことが最初とされている[1]。 1899年、ベルギーのヘント市で警察官を補助するために警察犬が採用された[1]。 アメリカ合衆国では1907年、ニューヨーク市警がベルギーのヘント警察をモデルに警察犬を導入した[2]。アメリカの警察はCanineの当て字「K9」をよく使い、映画タイトルにも採用されている(『K-9/友情に輝く星』)。 1908年、英国ケント州で警察官を補助するためにエアデールテリアが警察犬として採用された[1]。 日本では1912年(大正2年)に、警視庁が大英帝国からコリーとラブラドールレトリバーの2頭を採用したのが始まりである(ただし防犯広報目的で採用)[1][3][4]。当時は「探偵犬」と呼ばれていた[5]。1940年(昭和15年)に、警視庁は警察犬舎を設けて警察犬6頭を飼育したが、太平洋戦争に伴い一時廃止[1]。1952年(昭和27年)には警察犬制度の採用が再度検討され、民間訓練士に12頭の犬を警察犬として嘱託する嘱託警察犬制度が創設された[1]。さらに1956年(昭和31年)には警視庁において本格的な直轄警察犬制度が発足した[1]。 日本の警察犬には、警察が所有し使用する直轄犬と、警察による試験や毎年度の審査に合格して、要請を受け非常勤の警察犬として働く嘱託犬の2種類がある[6][7]。また広義には、日本警察犬協会が警察犬としての能力を認定している7犬種を警察犬ということもある。 警察犬の訓練においては、服従訓練、嗅覚訓練、警戒訓練が行われる[8]。 直轄犬は国費で養われ、全国の警察の約半数が採用しており、2022年時点で約160頭いる[6]。2004年時点では、警視庁鑑識課だけでも32頭が使用され[4]、その他各道府県警鑑識課でも使われている。 なお、警視庁警備部警備二課には、警察の捜索活動を行う警察犬だけではなく、爆発物探知や犯人制圧、災害救助犬のように被災者の捜索救難など複数の任務を行う事が可能な警備犬がいる。 2020年(令和2年)10月24日に、行方不明者の捜索にあたっていた兵庫県警察の警察犬「クレバ号」が突然走り出し、その拍子に鑑識課員の手からリード(引き綱)が離れて逃走してしまった。県警は鑑識課員ら約40人態勢で連日捜索を続け、ヘリコプターも投入した、捜索3日目となった10月27日午前に、逃げ出した場所から南西へ約100メートル離れた山頂付近で、木にリードが絡まって動けなくなっていたクレバ号を鑑識課員が見つけた、といったニュースが流れ、今後の処遇は決まっていない、などと伝えられた[9]。すると全国から「叱らず優しく接してあげて」「これからも警察犬としての活躍を応援している」などとクレバ号を応援する声が90件ほども寄せられ、それを受けて県警は「チャンスを与えたい」と再訓練を行い[10]、GPSをつけて2021年2月に現場に復帰し、復帰4日目には手柄をあげた。なお2020年のクレバ号逃走の件を踏まえて兵庫県警では(クレバ号に限らず)直轄警察犬については、GPS付きの首輪をつけるようになった[10]。 日本全国の警察犬は、警察の直轄、嘱託を合わせて2022年末時点で、1244頭[11]。 直轄犬に引退制度はないが、高齢や傷病で警察犬としての役割が難しくなった場合は国に申請すれば交代が認められる[6]。警察関係者以外への譲渡は認められていないため、一線を退いた元警察犬を個人的に飼う警官もいる[6]。 亡くなった警察犬については、1968年に東京家畜博愛院に警察犬慰霊碑が建立され、年に2回慰霊祭が行われている[12]。 中華人民共和国では2019年より、雲南省昆明市、北京市の公安当局がクローン技術により誕生した警察犬を導入している[13]。 家庭で飼育される犬種は約60種にのぼるが、このうち警察犬に適するのは数種に限られる[1]。特にジャーマン・シェパード・ドッグは、鋭い感覚を持っていること、運動ができること、頭の良さ、我慢強さ、落ち着きなどの理由から警察犬として最も適しているといわれている[1]。 警察犬の主な犬種犬種特徴
警察犬の活動
足跡追及活動人の残した臭いをもとに犯人や犯人の遺留品、行方不明者を捜索する[1]。
臭気選別活動犯罪現場に残された犯人の遺留物を保管しておき、容疑者が判明したときなどに、その物と容疑者の臭いを嗅ぎわけ調べる[1]。
捜索活動一定の地域内で迷子や行方不明者、遺留品などを捜索する[1]。
犯人確保逃走しようとする犯人に飛びかかったり、腕などに噛み付いたりして逃走を防止する。
各国の警察犬
ドイツの警察犬
ベルギーの警察犬
アメリカ合衆国の警察犬
英国の警察犬
日本の警察犬
引退後と慰霊
中国の警察犬
警察犬の犬種
ジャーマン・シェパード・ドッグ1880年頃、ドイツ中部および南部の山岳地方に存在した牧羊犬から、高度な能力を有する軍用犬を目指して開発された犬種。第一次世界大戦でヴァイマル共和国軍が軍用犬として採用し、優秀さが認められた。世界中の公安機関で警察犬として利用されており、日本でも第二次世界大戦前、軍用犬として採用されている。日本国内の警察犬で一番登録数の多い犬種である。
ドーベルマン19世紀末にドイツのテューリンゲンでルイス・ドーベルマンが開発した犬種。軍用犬としても用いられた。断尾、断耳されることが多い。
エアデール・テリア英国のテリア種で猟犬として使われ、英国やカナダなどで警察犬としての実績をもつ。
コリー英国北部スコットランドのハイランド地方の原産で、テレビドラマ『名犬ラッシー』で有名になった。
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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
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