謎解きはディナーのあとで
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そして181万4000部を売り上げた記録により『ハリー・ポッターと死の秘宝』を抜いて歴代売上部数総合3位及び文芸部門首位となる[8]。発行部数は2011年12月時で26刷り180万2000部[7]2012年10月5日には巻末にオリジナルのショートショートを収録した文庫版が発売され、単行本はその年の『2012年年間“本”ランキング』(集計期間は2011年11月21日から2012年11月18日まで)の文芸部門で8位となっている[9]

2011年11月10日に、第二作となる『謎解きはディナーのあとで2』が発売された。『きらら』2011年1月号から10月号にかけて連載された5編と書き下ろし1編を収録。発売初週で20万8000部を売り上げ、2011年11月17日に発表された11月21日付のオリコンBOOK(総合)週間ランキングで初登場1位を記録し、62万9000部の売り上げにより歴代売上部数は文芸部門で8位となった[8]。なお、発売売上20万越えは2011年に発売された文芸・小説ではこの第二作が初となる[10]。発行部数は2011年12月時で4刷り93万部[7]。『2011年年間“本”ランキング』では3位を記録しており、その翌年の2012年12月3日に発表された『2012年年間“本”ランキング』では2位へと順位を上げた[9]

2012年12月12日に第三作となる『謎解きはディナーのあとで3』が発売された。前作同様、『きらら』2012年1月号から10月号にかけて連載された5編と書き下ろし1編を収録。2012年12月20日に発表された12月24日付のオリコンBOOK(総合)週間ランキングで11万1000部の売り上げより初登場1位を記録し、これで三作全て初登場首位を獲得する実績を残した[11]

本作は、女性が主な読者層である小説誌『きらら』への掲載作品を依頼された著者が、女性読者を意識し、「ミステリーを読み慣れていない人向け」に考え出されたという経緯があり、「安楽椅子探偵の執事と新米刑事のお嬢様」という設定は、著者が執事喫茶のニュースを見たことから生み出されたものである。タイトルは著者の70もある案の中から決定したものであり、『きらら』掲載時のタイトルは『宝生麗子の謎解きはディナーのあとで』だった[5]

麗子と風祭が事件の捜査をし、その詳細を聞いた影山が、麗子への暴言の後に推理を語り、その終了と共に話が締めくくられる、というのが基本的なパターンとなっており、犯人や証拠の確保といった描写は(一部を除いて)ない。また、その影山の暴言が、謎を解くのに十分な全ての手掛かりが提示されたことを示す、「読者への挑戦状」と同じ役割を担っている[12]。作中でも「影山が麗子に対して丁寧かつ無礼な暴言を吐くときは、彼の頭の中で推理が確信に変わったときだ」という一文がある。

なお、本作での国立署は国立市のみならず、国分寺市立川市も管轄しているが、現実には国立市は立川市(ごく一部は東大和警察署)と共に立川警察署の管轄であり、国分寺市は小金井警察署の管轄である。

第三作でシリーズ終了を窺わせるエンディングとなっていたが、7年以上のブランクを経た後、『きらら』2020年1月号から第四作となる『新 謎解きはディナーのあとで』の連載が開始され、Web版に移行した2020年11月号まで掲載された。その後、『STORY BOX』へと発表の場を変え、2022年1月号より『新 謎解きはディナーのあとで 2』を連載中。

尚、第三作と第四作の間にも新作短編は発表されており、アンソロジー『VS. こち亀』(2016年9月 集英社)には秋本治の漫画『こちら葛飾区亀有公園前派出所』とコラボした「謎解きは葛飾区亀有公園の前で」が収録されている。更に、傑作選『謎解きはディナーのあとで ベスト版』(2019年12月 小学館文庫)には自選3編[13]の他に書き下ろしの「殺意のお飲み物をどうぞ」が収録されている。また、青柳碧人著『判決はCMのあとで ストロベリー・マーキュリー殺人事件』(2014年9月 角川文庫)の解説「解説は本編の前に」には麗子が、アイザック・アシモフ著『黒後家蜘蛛の会3【新版】』(2018年8月 創元推理文庫)の解説には麗子と影山が登場している。
メディアミックス

Web朗読:2011年4月12日の本屋大賞授賞式にて特別劇場が放映され、宝生麗子を
竹達彩奈が、執事・影山を櫻井孝宏が演じた。また、2011年6月より、動画サイトYouTubeにて第1話「殺人現場では靴をお脱ぎください」の特別朗読バージョンが公開されている。ナレーションは三宅健太が担当している。

漫画:『プチコミック』(小学館)にて2011年5月号より川瀬あや作画で漫画化される。コミックス2巻まで発売されており、本誌では不定期連載された。

テレビドラマフジテレビテレビドラマ化、2011年10月18日から同年12月20日まで連続ドラマを、2012年3月27日に特別編が放送された。また、2013年8月には劇場版が公開された。

舞台:劇団「拙者ムニエル」主宰の村上大樹脚本・演出により舞台化され、2012年8月31日から9月9日の間に天王洲 銀河劇場で公演された。

朗読劇ニッポン朗読アカデミーのスピンオフ企画として福本岳史の脚本、菅沼尚宏の演出により朗読劇化され、2017年と2018年に公演された。

オーディオブックオトバンクにてオーディオブック化され、各役に担当がいる形で1巻の内容が2017年5月27日より配信開始された。Audibleでもオーディオブック化されたが、こちらは一人語りで、シリーズの全巻が2021年6月18日から順に配信開始された。

登場人物
宝生 麗子(ほうしょう れいこ)
主人公。
警視庁国立署の新米刑事。その正体は世界的な企業グループ「宝生グループ」の総帥の一人娘で、一流大学を優秀な成績で卒業した正真正銘の「お嬢様」。卒業後、父親の意向に沿った花嫁修業や、グループ企業での腰掛け就職を潔しとせず、警察官になる。職場ではこのことを秘密にし、バーバリーのシンプルなパンツスーツを地味に着こなし、アルマーニの黒縁伊達眼鏡をかけるなど刑事らしい堅実な印象の維持に努めている。彼女がお嬢様だとは知らない上司の風祭警部の迷推理に振り回されつつも、刑事としての仕事は真面目にこなしているが、時々ムキになって風祭と言い合いをすることもある。プライベートでは主にワンピース姿を基調とした服装で、お嬢様として振る舞っており、非番の日はパーティや買い物に出かける。おしゃれ欲求が強く、ファッションでは特に帽子に目がない。衣装選びの長さで影山を呆れさせることもしばしば。ファッションに限らず買い物が好きで、熱を上げるあまり、後でどうして買ったのかわからないものを買ってしまうことがあるほか、買い物のために八時間も影山を車で待機させたこともある。苦手なものは風祭警部と煙草の煙、そして影山の毒舌。事件のことを影山に話した時は決まって影山の毒舌・暴言により散々にこきおろされ、初めの頃はクビを宣告し、以降も怒りのあまりワイングラスを割ったり何か物を投げつけようとするなど憤慨することがしばしばだが、影山の推理の腕だけは確かだと信頼しており、刑事として事件が迷宮入りになることは避けたいので、結局解雇することはできず、彼の推理を聞いて事件を解決している。激昂すると一人称が普段の「わたし」から「あたし」に変わり、「?だっつーの!」が口癖となる。「2」の頃になると不意を突いた暴言に椅子から転がり落ちる、美術品を割るなど、リアクションが大きくなっている。学生時代はモテていた(本人談)が、現在恋人はいない様子。後輩が先に結婚した際には密かに嫉妬し、卒業後の進路に問題があったかと悩んだこともある。風祭警部から何度も食事やドライブなどの誘いを受けているが、すべて断っている。彼に好意がないこと以上に、彼の愛車ジャガーに乗ることが敗北だという彼女独自の理屈による方が大きく、宝生家のガレージにはジャガーは一台も置いていない。麗子は彼の分身のようなそのジャガーが、「発情したオス」のような気がしてならないと思っている。風祭警部以外にも、軽薄な男性には嫌悪や不信感をあらわにする事が多い。ただし、ある事件の際に、犯人の襲撃から自分を身を挺して守った風祭を、彼のジャガーで病院に送ったことがある。風祭は麗子を庇った直後に寝てしまっていてその時の記憶が無く、麗子自身もこの出来事を黒歴史としている。また、食事に関しても「この人とのディナーは、食事だけでは終わりそうにない」という考えから拒んでいたのだが、一度だけある事情を考慮して焼き鳥を一緒に食べに行ったことがある。
影山(かげやま)
名前は不明。年齢は30代半ば。麗子に仕える執事兼専属運転手。ダークスーツと銀縁眼鏡に、スマートな体型が特徴。一見、謹厳実直を絵に描いたような性格で、常に感情を表に出さないが、麗子に対して慇懃無礼な態度を取っている。日々の給仕や麗子のエスコートをこなし、時に麗子を諫めたりするなど執事らしくきちんと麗子を立てることもある反面、丁寧な言葉使いながら、歯に衣着せぬ物言いで、下記のように執事にあるまじき暴言を吐いては、麗子の逆鱗に触れる。そのため麗子には執事としてはかなりインチキくさい人物と評されており、後述の推理力以外では日頃の信頼が薄い。推理力に長けており、麗子が持ち帰った事件を、話を聞いただけで解決してしまう、いわゆる安楽椅子探偵で、この事は彼自身も認めている。ただし、麗子と出かけた際に事件に遭遇したり、必要に応じて麗子と事件現場に出向くこともある。犯人と対峙する際は、護身用の武器として特殊警棒を用いる。物的証拠を見つけることは「それこそ警察の仕事」と割り切り、第2の事件が起こる可能性がある場合などを除けば、推理以上のことはしない。自らの素性や執事の仕事に就いた理由は不明だが、本人曰くプロ野球選手かプロの探偵になりたかったと語り、推理と野球の方面での自信と知識を誇る。


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