調音
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伝統的に、2つの調音部位が等しいせばめをもつ二重調音と、せばめの異なるもの(より広い方を二次的調音と呼ぶ)に分ける[4]。しかし、ピーター・ラディフォギッドとイアン・マディソンによると、せばめが等しいといっても破裂音の場合と接近音の場合では異なるとして、[w]のような接近音を二重調音から除き(母音と同様に記述する)、また二次的調音は常に接近音であるとした[4]。この説に従うと、同時調音は以下のように分けられる。

二重調音 - 2箇所以上の調音部位が関与する破裂音または鼻音

二次的調音 - 2つの調音部位が関与する調音のうち、片方が破裂音・鼻音・流音・摩擦音のいずれかで、もう一方が接近音のもの

二重調音

二重調音(にじゅうちょうおん、: double articulation)は、2つの調音位置で同時になされる調音のうち、せばめの度合いが同じであるものをいう。代表的な二重調音に両唇軟口蓋音 [k?p g?b ??m] がある。

接近音の[w][?]も通常は二重調音とされるが、上記のように破裂音や鼻音の場合と別に扱うこともある。

吸着音はその機構上かならず二重調音になる。
二次的調音

二次的調音(にじてきちょうおん、: secondary articulation)ないし副次調音(ふくじちょうおん)は、比較的せばめの強い調音に重ねられて同時に調音される、比較的せばめの弱い調音。普通、接近音である。せばめの度合いが強いほうは主要調音(しゅようちょうおん、: primary articulation)という。

二次的調音の調音部位によって、唇音化口蓋化軟口蓋化咽頭化に分かれる。
モデル

調音とその結果得られる音波の関係を記述する様々なモデルが提唱されている。
音響管モデル

音響管モデル(: acoustic tube model)は1次元平面音波の声道内伝搬モデルである[5]

音波の波長が声道の幅より長い時、音波は横方向にほとんど伝搬せず声道の長軸方向へのみ伝搬する。ヒトの声の基本周波数が100~300Hzでありヒトの声道の幅を考慮すると、声の低周波数成分は声道内を1次元平面音波として伝搬すると見做せる[6]。これが音響管モデルである。
縦続音響管モデル

縦続音響管モデルは声道を「固有の断面積をもつ音響管」の集まりが縦続したものとするモデルである[7]

声道は全ての領域が可変なのではなく、ある程度限られた調音部位が動く。ゆえに声道を十分短い区間で区切って見ればその部位を「断面積一定の音響管」としてモデル化できる。声道全体をいくつかの区画に区切って定断面積音響管の縦続とみなしたモデルが縦続音響管モデルである[7]

縦続音響管モデルは声道全体のインパルス応答を計算できるという利点をもつ。それぞれの区間音響管でウェブスターのホルン方程式を考えると、断面積一定の条件によって音響管両端における音圧・体積速度の関係が解析的に得られる(ABCD行列)。声道全体はこの縦続で表現されているのでABCD行列の積で計算できる。
脚注^ プラム・ラデュサー(2003), p. 276.
^ Ladefoged & Maddieson (1996) p.323
^ プラム・ラデュサー(2003), p. 266,271.
^ a b Ladefoged & Maddieson (1996) p.329
^ "平面波のみの伝搬を仮定した 円筒管は音響管と呼ばれる。(竹本浩典 & 足立整治 2020, p. 188-195).
^ "比較的低い周波数における円筒管の内部では, 長軸に沿って伝搬する平面波が主であると見なすことができる。(竹本浩典 & 足立整治 2020, p. 188-195)
^ a b "十分短い間隔で輪切りにすれば,断面積の異なる複数の円筒管を接続した音響管と見なすことができる。これを縦続音響管モデルという。(竹本浩典 & 足立整治 2020, p. 188-195)

参考文献

ジェフリー・K・プラム、ウィリアム・A・ラデュサー 著、土田滋福井玲中川裕 訳『世界音声記号辞典』三省堂、2003年。.mw-parser-output cite.citation{font-style:inherit;word-wrap:break-word}.mw-parser-output .citation q{quotes:"\"""\"""'""'"}.mw-parser-output .citation.cs-ja1 q,.mw-parser-output .citation.cs-ja2 q{quotes:"「""」""『""』"}.mw-parser-output .citation:target{background-color:rgba(0,127,255,0.133)}.mw-parser-output .id-lock-free a,.mw-parser-output .citation .cs1-lock-free a{background:url("//upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/6/65/Lock-green.svg")right 0.1em center/9px no-repeat}.mw-parser-output .id-lock-limited a,.mw-parser-output .id-lock-registration a,.mw-parser-output .citation .cs1-lock-limited a,.mw-parser-output .citation .cs1-lock-registration a{background:url("//upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/d/d6/Lock-gray-alt-2.svg")right 0.1em center/9px no-repeat}.mw-parser-output .id-lock-subscription a,.mw-parser-output .citation .cs1-lock-subscription a{background:url("//upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/a/aa/Lock-red-alt-2.svg")right 0.1em center/9px no-repeat}.mw-parser-output .cs1-ws-icon a{background:url("//upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/4/4c/Wikisource-logo.svg")right 0.1em center/12px no-repeat}.mw-parser-output .cs1-code{color:inherit;background:inherit;border:none;padding:inherit}.mw-parser-output .cs1-hidden-error{display:none;color:#d33}.mw-parser-output .cs1-visible-error{color:#d33}.mw-parser-output .cs1-maint{display:none;color:#3a3;margin-left:0.3em}.mw-parser-output .cs1-format{font-size:95%}.mw-parser-output .cs1-kern-left{padding-left:0.2em}.mw-parser-output .cs1-kern-right{padding-right:0.2em}.mw-parser-output .citation .mw-selflink{font-weight:inherit}ISBN 4385107564。 

Ladefoged, Peter; Maddieson, Ian (1996). The Sounds of the World's Languages. Oxford: Wiley-Blackwell. ISBN 978-0631198154

竹本浩典、足立整治「声道モデルにおけるインパルス応答の生成技術」『日本音響学会誌』第76巻第3号、日本音響学会、2020年、188-195頁、doi:10.20697/jasj.76.3_188。 

関連項目

気流 - 発声 - 調音(調音部位調音方法

発音
子音

肺臓気流両唇唇歯歯茎後部歯茎そり舌硬口蓋軟口蓋口蓋垂咽頭声門
破裂pb(p?)(b?)(t?)(d?)td??c?k?q?( ??)?
(m?)m(??)?(n??)(n?)(n?)n????
ふるえ(??)?(r?)r?


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