調和級数
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これらの長方形の面積の合計は調和級数 1 + 1 2 + 1 3 + 1 4 + 1 5 + ⋯ {\displaystyle 1+{\frac {1}{2}}+{\frac {1}{3}}+{\frac {1}{4}}+{\frac {1}{5}}+\cdots }

の値に一致する。一方、曲線 y = 1/x を考え、x∈ [1, ∞) の部分の下にある面積は広義積分 ∫ 1 ∞ d x x = ∞ {\displaystyle \int _{1}^{\infty }{\frac {dx}{x}}=\infty }

である。この面積は先ほどの長方形たちによって完全に覆われるから、長方形の面積の合計も同様に無限大となる。もっといえば、 ∑ n = 1 k 1 n > ∫ 1 k + 1 d x x = ln ⁡ ( k + 1 ) {\displaystyle \sum _{n=1}^{k}{\frac {1}{n}}>\int _{1}^{k+1}{\frac {dx}{x}}=\ln(k+1)}

が示されたということになる。このような手法を一般に積分判定法という。
発散率

調和級数の発散は非常に遅く、たとえば最初の 1043 個の項の和は 100 よりも小さい[5]。これは部分和が対数的増加であることによる。特に ∑ n = 1 k 1 n = ln ⁡ k + γ + ε k {\displaystyle \sum _{n=1}^{k}{\frac {1}{n}}=\ln k+\gamma +\varepsilon _{k}}

が成り立つ。ここで γ はオイラー・マスケローニ定数で εk は k → ∞ の極限で 0 に近づく。この結果はレオンハルト・オイラーによる。
部分和

発散する調和級数の第 n 部分和 H n = ∑ k = 1 n 1 k {\displaystyle H_{n}=\sum _{k=1}^{n}{\frac {1}{k}}}

は第 n 調和数 と呼ばれる。これは以下の性質を持つ[6]

n 番目の調和数 Hn と ln n との差は、オイラー・マスケローニ定数 γ に収束する。

相異なる番号の調和数同士の差は決して整数にはならない。

n = 1 を除いてどの調和数も整数でない。

関連のある級数
交代調和級数交代調和級数の最初の14個の部分和(黒線分)。2 の自然対数(赤線)に近づく様子が見られる。

級数 ∑ n = 1 ∞ ( − 1 ) n + 1 n = 1 − 1 2 + 1 3 − 1 4 + 1 5 − ⋯ {\displaystyle \sum _{n=1}^{\infty }{\frac {(-1)^{n+1}}{n}}=1-{\frac {1}{2}}+{\frac {1}{3}}-{\frac {1}{4}}+{\frac {1}{5}}-\cdots }

は交代調和級数 (alternating harmonic series) として知られる。この級数の収束性はライプニッツの収束判定法(英語版)からわかる。とくにこの級数の和は 2 の自然対数に等しい。つまり 1 − 1 2 + 1 3 − 1 4 + 1 5 − ⋯ = ln ⁡ 2 {\displaystyle 1-{\frac {1}{2}}+{\frac {1}{3}}-{\frac {1}{4}}+{\frac {1}{5}}-\cdots =\ln 2}

が成り立つ。この式は自然対数関数のテイラー級数であるメルカトル級数の特別な場合である。

逆正接関数のテイラー級数から、関連する級数 ∑ n = 0 ∞ ( − 1 ) n 2 n + 1 = 1 − 1 3 + 1 5 − 1 7 + ⋯ = π 4 {\displaystyle \sum _{n=0}^{\infty }{\frac {(-1)^{n}}{2n+1}}=1-{\frac {1}{3}}+{\frac {1}{5}}-{\frac {1}{7}}+\cdots ={\frac {\pi }{4}}}

が導かれる。これはライプニッツの π の公式として知られる。
一般調和級数

一般調和級数 (general harmonic series) は a, b を実数とし、a ≠ 0 なるものとして ∑ n = 0 ∞ 1 a n + b {\displaystyle \sum _{n=0}^{\infty }{\frac {1}{an+b}}}

という形に表される級数である。比較判定法により、任意の一般調和級数が発散することが示せる[7]
p-級数

調和級数の一般化で p-級数 (p-series) と呼ばれるものは、正の実数 p を用いて

∑ n = 1 ∞ 1 n p {\displaystyle \sum _{n=1}^{\infty }{\frac {1}{n^{p}}}}

の形に表される。p = 1 のときの p-級数は通常の調和級数であり、発散する。積分判定法やコーシーの判定法を用いれば、p-級数は p > 1 のときに必ず収束することがわかる(このときの p-級数は、優調和級数 (over-harmonic series) とも呼ばれる)。逆に、p ≤ 1 のときは発散する。p > 1 のとき、p-級数の和の値はリーマンゼータ関数の p における値 ζ (p) に等しい。
φ-級数

実数値凸関数 φ で lim sup u → 0 + φ ( u 2 ) φ ( u ) < 1 2 {\displaystyle \limsup _{u\to 0^{+}}{\frac {\varphi ({\frac {u}{2}})}{\varphi (u)}}<{\frac {1}{2}}}


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