誤差
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このような測定に用いる測定装置は、あらかじめ測定誤差を検定した上で、測ろうとしている精度に対して誤差が十分に小さいことを確認しておく必要がある。
平均値の測定

ばらつきを持つ複数の値の平均値を求めたい場合がある。たとえば、日本人の身長の平均などである。このような測定を行う場合、普通全数を測定することはせず対象とする母集団からランダムに選んだ標本を用いて測定することになる。このような場合求められる平均値の精度は調べた人数等による(推計統計学)が、その他に測定自体の精度も勘案しなければならない。系統誤差が無視できるような測定方法をとるとして、偶然誤差については一つの測定対象を繰り返し測定する場合と同様、測定回数を上げることによって十分に小さくすることが出来る。詳細な議論は避けるが、ほとんどの場合、平均値に統計的な意味があるくらい十分に多くの対象について測定したならば、偶然誤差の影響も十分に小さくなるが、母集団が小さかった場合など誤差が無視できるだけの測定数と統計的に意味のある測定数が異なる場合もある。このような場合には測定誤差による影響を別に考慮する必要がある。
真の値

上記のように測定値から誤差を無くすことは不可能である。したがってわれわれが知り得るのは常に誤差付の値でしかない。しかしながら測定すべき量には測定方法とは無関係なある定まった値があると考えるのが合理的である。この値のことを誤差理論において 真の値または真値 と呼んでいる。真値が未知であるとする立場では、真値の代わりに測定によって得られた最確値を真値と考える。最確値としては同じ測定を複数回だけしたときの平均値を用いることが多い。

なお、量子力学によるとそもそも物理量そのものが確定した値を持たず、ある確率分布に従った拡がりを持つ(不確定性)。物理量自体が元から内包している不確定性と、それ以外の原因で発生する誤差は厳密に区別して考える必要がある。
誤差の伝播

一般に測定によって最終的に求めたい値が一つの測定の結果から得られるとは限らず、それぞれ固有の誤差を持つ複数の値から求めなければならない場合が多い。複数回の測定結果の平均を取る場合などもそのうちの一つである。

たとえば最終的に求めたい値 z が2つの測定値 x, y から z = f(x, y) という関係式で求められる場合、x, y の標準偏差をそれぞれ sx, sy とすると、z の標準偏差 sz は次の誤差伝播の公式[3]により求められる: s z = ( ∂ f ∂ x s x ) 2 + ( ∂ f ∂ y s y ) 2 . {\displaystyle s_{z}={\sqrt {\left({\frac {\partial f}{\partial x}}s_{x}\right)^{2}+\left({\frac {\partial f}{\partial y}}s_{y}\right)^{2}}}.}
計算誤差の種類
丸め誤差

数値に対して丸め(まるめ、: rounding)を行う場合に、すなわちその数値のどこかの桁で切り上げ・切り捨てなど端数処理を行った場合に生じる誤差を丸め誤差(まるめごさ、: rounding error, round-off error)という[4][5]
打ち切り誤差

反復計算において、必要とされる回数より少ない回数で反復を止めること(打ち切り)によって生じる誤差が打切り誤差である[4][5]

無限級数をはじめの数項だけで計算することによる誤差が代表的である。例えば、sin x のマクローリン展開は sin ⁡ x = x − x 3 3 ! + x 5 5 ! − x 7 7 ! + ⋯ {\displaystyle \sin x=x-{\frac {x^{3}}{3!}}+{\frac {x^{5}}{5!}}-{\frac {x^{7}}{7!}}+\cdots }

である。これを最初の3項で計算する sin ⁡ x = x − x 3 3 ! + x 5 5 ! {\displaystyle \sin x=x-{\frac {x^{3}}{3!}}+{\frac {x^{5}}{5!}}}

と打ち切り誤差が生じる。
情報落ち

浮動小数点数の計算のように精度が限られている条件下で、絶対値の大きい数と絶対値の小さい数を加減算したとき、絶対値の小さい数が無視されてしまう現象[6]。次のような例がある。有効桁数が11桁ある場合では2.0000000000 × 1010 + 1.0000000000 =2.0000000001 × 1010


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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