語用論(ごようろん、英: pragmatics)とは、言語表現(英語版)とそれを用いる使用者や文脈との関係を研究する言語学の一分野である。話者のことばの運用 (言語使用) を学問する研究分野であり、その性質等を理論的に解明するアプローチに加え、実験観察等に基づいた言語運用(英語版)の側面からのアプローチもあることから、理論言語学と応用言語学の両方に属する。 ジョン・L・オースティンは、言語表現が命令・依頼・約束などの機能を果たす側面に注目し、はじめて体系的な議論を行った。オースティンは「命じる」「誓う」のように、それを用いること自体で何らかの行為が実行される動詞を遂行動詞と呼び、遂行動詞の用いられていない文について隠れた遂行的機能を明らかにすることを遂行分析 オースティンの研究を継承して発話行為の分析を行ったのがジョン・サールである。サールは、現実の会話において重要なのは真偽ではなくその状況における適切性であるとし、命題内容条件・準備条件・誠実性条件・本質条件の4つからなる適切性条件 ポール・グライスは言語表現が間接的に果たす機能を説明する協調の原理を提案し、今日の語用論の基礎を作り上げた。協調の原理は、次の4つの会話の公理からなる。 これらの公理は、会話の参加者が情報を効果的に伝達しようとしている場合に、守られていると仮定されるものである。例えば、「今いくら持っている?」と聞かれて、実際には1200円持っているにもかかわらず「200円持っている」と答えた場合、論理的には真であるが、質の公理に違反しているために不適切な発話となる。 また例えば、「カラオケ行かない?」と聞いて「明日試験なんだ」と言われた場合、相手が会話に協力的であると考えるならば、関連性の公理に基づいて、試験がカラオケに行けない理由であることが推論される。話し手の発話が会話の公理に沿って解釈できない場合は、会話に協力的でないか、あるいは冗談として見なされる。 ジェフリー・リーチはこれを発展させ、新たにポライトネスの原理を導入して敬語や皮肉表現などの分析を行った。 関連性理論 一部の形式意味論では文を越えた現象を扱うこともあり、意味論と語用論の境界はそれほど明確ではない。また、認知言語学の立場では、文脈を離れた言語の命題的意味を切り離すことはできないと考えることが多い。また、表現の背後にある意図を読み取ることは、コンピュータによる自然言語理解にとっても究極的な課題の一つである[1]。 また、中間言語語用論というものも存在する。中間言語とは第2言語を習得中の未完成の状態を指す。この第2言語の感覚で語用論を使用するとなると、言語能力には長けているが、その国の文化背景や言語のルールを知らない為、(例えば、「バッテリーが上がった」は切れたという意味を指すが、意味論では文字通り上に上がると解釈できるため、外国人日本語学習者には感覚のズレが生じる可能性が高い。)意図する内容が違う形で伝達されるものを指す。例えば、日本語で、「?ください」は場合によっては命令語になる可能性が高いが、敬語が使用されている為、配慮で使ったつもりがかえって命令形に聞こえてしまい誤解を伴う場合を指す。これを有害な中間言語語用論「有害なプラグマティック・トランスファー」と呼ぶ。これは生駒・志村(1993年論文)で唱えられた名称である。
主要な語用論研究
オースティンの発話行為論
サールの発話行為論
グライスの協調の原理
量の公理 - 求められているだけの情報を提供しなければいけない。
質の公理 - 信じていないことや根拠のないことを言ってはいけない。
関連性の公理 - 関係のないことを言ってはいけない。
様式の公理 - 不明確な表現や曖昧なことを言ってはいけない。
関連性理論
語用論の関連分野
著名な研究者
坪本篤朗
脚注[脚注の使い方]^ 加藤重広・澤田淳 編『はじめての語用論』p.22
関連項目
普遍語用論
形式語用論
直示
含意・推意
前提
発話行為
談話分析・会話分析
外部リンク
語用論 - 脳科学辞典
国際語用論学会(IPrA)
日本語用論学会(PSJ)
典拠管理データベース: 国立図書館
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