語派
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たとえば、日琉語族の分類は、内包言語が唯一日本語のみ(琉球の言葉を方言とみなす場合)とされることもあれば、20近くの言語が含まれるとされる場合もある。琉球語が日本語の方言ではなく、日琉語族内の別個の言語として分類されるまでは、日本語は孤立した言語(所属言語がただ1つの語族)であった。
孤立した言語「孤立した言語」を参照

世界のほとんどの言語は他の言語との系統関係が知られているが、既知の同系言語が存在しない(または系統関係が暫定的に提案されている)ものは、孤立した言語と呼ばれ、本質的には単一の言語で構成される語族である。今日知られているもので、推定129の孤立した言語がある[10]。一般に、孤立した言語は、同系の言語が存在するか、歴史のある時点で同系言語を有していたが、比較方法によって同系関係を見出するには時間が経過しすぎていると想定されている。

孤立した言語は、十分な言語データをもってしても系統関係を有する言語が見つからないというものであり、そもそも言語データの不足によって分類不可能な未分類言語とは異なる概念であり[10]、注意を要する。

インド・ヨーロッパ語族のアルバニア語アルメニア語など、語族内の独自の枝として分岐した言語は「孤立している」と表現される場合があるが、そのような場合の「孤立している」という単語の意味は、「インド・ヨーロッパ語族内において孤立した系統」と言う意味であり、「孤立した言語」ではない。対照的に、知られている限り、バスク語は完全に「孤立した言語」である。多くの試みにもかかわらず、他の現存語との関連性は示されていない。

もう1つの有名な孤立した言語の事例として、チリのアラウカ語族のマプチェ語がある。この言語は、現在は孤立した言語であるが、消滅した同系言語が存在しており、通時的には孤立した言語ではない。

ローマ時代に話されたアクイタニア語はバスク語の祖先であった可能性があるが、バスク語の祖先の姉妹言語であった可能性もある。後者の場合、バスク語とアクイタニア語はともに小さな語族を形成することになる。 (祖先は語族の別個のメンバーとは見なされない。)
祖語「祖語」を参照

祖語は母言語(母語ではない[11])と考えることができ、語族内のすべての言語の共通祖先である。ほとんどの言語において、記録の歴史は比較的短いため、語族の共通祖先が直接知られることはめったにない。しかし、19世紀の言語学者アウグスト・シュライヒャーによって考案された再構成手順である比較方法を適用することにより、祖語の多くの特徴を復元可能である。これにより、語族の一覧で提案されている多くの語族の有効性を実証することができる。 たとえばインド・ヨーロッパ語族の再構可能な祖語はインド・ヨーロッパ祖語と呼ばれる。 インド・ヨーロッパ祖語は文字記録によって証明されていないため、文字が発明される前に話されていたと推測される。
語族特異的な遺伝子

言語の系統と人類進化における遺伝子の系統は非常に似たパターンを示す[12][13]。現生人類の言語の推定系統樹の観点からは、言語の伝達の大部分は水平方向(空間拡散)ではなく、垂直方向(祖先-子孫)によってなされると解釈される[14]

語族の分布は特にY染色体ハプログループの分布と少なからず関連する[15]。例えば、オーストロアジア語族ハプログループO1b1 (Y染色体)モンゴル語族ハプログループC2 (Y染色体)ウラル語族ハプログループN (Y染色体)などである[16]。詳細は「父系言語仮説」を参照
語族とは別の分類概念
言語連合「言語連合」を参照

借用またはその他の手段で獲得された言語特徴の「共有革新」は、遺伝的とは見なされず、語族の概念とは関係が無い。たとえば、イタリック語派ラテン語、オスカン語、ウンブリア語など)で共有されるより著しい特徴の多くは、「地域的特徴」である可能性が高いと主張されている。(ただしこれに類似した現象である西ゲルマン語群内におけるの長母音システムの変化は、祖語の革新と考えられる段階よりも大幅に遅れて起こっているものの、英語と大陸西ゲルマン語は地域的に分離しているため「地域的特徴」であると容易に見なすことはできない)。同様に、ゲルマン語派バルト語派スラブ語派にも同様の特異的な革新が数多くあり、一般的な祖語から受け継がれた特徴というよりも、地域的な特徴である可能性がはるかに高い。しかし、共有された革新が地域的特徴であるか、偶然であるか、共通祖先からの継承であるかについて意見が一致しなければ、大規模な語族における下位系統の分類不一致が生じることになる。

言語連合は、共通の言語構造を特徴とするいくつかの言語を持つ地理的領域である。これらの言語間の類似性は、偶然や共通の起源ではなく、言語接触によって引き起こされ、言語族を定義する基準として認識されていない。言語連合の例として、インド亜大陸が挙げられる[17]
接触言語「言語接触」、「混合言語」、および「クレオール言語」を参照

語族の概念は、言語が方言を発達させるという歴史的観察に基づいており、方言は時間の経過とともに異なる言語に分岐する可能性がある。しかし、言語学における祖先は、種間交配をほとんど無視できる生物学における祖先ほど明確ではない[18]。それは、広範な遺伝子の水平伝播を伴う微生物の進化に似ている。非常に遠縁の関連言語は、言語接触を通じて相互に影響を与える可能性があり、極端な場合、クレオール言語であろうと混合言語であろうと、単一の祖先を持たない言語につながる可能性がある。さらに、多くの手話が独立に開発されており、互いに系統関係が全く無いようである。とはいえ、そのようなケースは比較的稀であり、殆どのよく検証された言語は、ある語族に属するものとして明確に分類できる。

言語接触は、異なる言語を話す2つの集団間の相互意思伝達により、2つ以上の言語の混合から新しい言語の開発につながる可能性がある。 2つの集団が互いに商取引を行うために発生する言語、または植民地主義の結果として出現した言語は、ピジンと呼ばれる。ピジンは、言語接触が言語的および文化的拡大を引き起こす場合の例である。ただし、言語接触は文化的な分裂にもつながる可能性がある。場合によっては、2つの異なる言語を話す集団が、自分の言語に対して縄張り意識を感じ、言語に変更を加えたがらないこともあり、このような場合は言語の境界が生じ、接触している集団は他言語への順応を拒否することになる[19]
関連項目.mw-parser-output .side-box{margin:4px 0;box-sizing:border-box;border:1px solid #aaa;font-size:88%;line-height:1.25em;background-color:#f9f9f9;display:flow-root}.mw-parser-output .side-box-abovebelow,.mw-parser-output .side-box-text{padding:0.25em 0.9em}.mw-parser-output .side-box-image{padding:2px 0 2px 0.9em;text-align:center}.mw-parser-output .side-box-imageright{padding:2px 0.9em 2px 0;text-align:center}@media(min-width:500px){.mw-parser-output .side-box-flex{display:flex;align-items:center}.mw-parser-output .side-box-text{flex:1}}@media(min-width:720px){.mw-parser-output .side-box{width:238px}.mw-parser-output .side-box-right{clear:right;float:right;margin-left:1em}.mw-parser-output .side-box-left{margin-right:1em}}ウィキデータには語族のプロパティである'があります。()

大語族 - 語族 - 語派 - 語群 - 言語

言語連合


孤立した言語

比較言語学

言語の起源

脚注[脚注の使い方]
注釈^ 一方、音素配列論語順のように、言語の構造に関わる要素には、普遍的な傾向が見られ、可能な組み合わせも多くないため、系統関係を認定する上ではさほど有用でない (cf. 木部 2019: 119)。

出典^ Lyovin, Anatole V.; Kessler, Brett; Leben, William R., eds ([1997] 2017). An Introduction to the Languages of the World (Second Edition). Oxford University Press. pp. 6-7 
^ Bybee, Joan (2015). Language Change. Cambridge University Press 
^ Dimmendaal, Gerrit J. (2011). Historical Linguistics and the Comparative Study of African Languages. John Benjamins Publishing. p. 336. .mw-parser-output cite.citation{font-style:inherit;word-wrap:break-word}.mw-parser-output .citation q{quotes:"\"""\"""'""'"}.mw-parser-output .citation.cs-ja1 q,.mw-parser-output .citation.cs-ja2 q{quotes:"「""」""『""』"}.mw-parser-output .citation:target{background-color:rgba(0,127,255,0.133)}.mw-parser-output .id-lock-free a,.mw-parser-output .citation .cs1-lock-free a{background:url("//upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/6/65/Lock-green.svg")right 0.1em center/9px no-repeat}.mw-parser-output .id-lock-limited a,.mw-parser-output .id-lock-registration a,.mw-parser-output .citation .cs1-lock-limited a,.mw-parser-output .citation .cs1-lock-registration a{background:url("//upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/d/d6/Lock-gray-alt-2.svg")right 0.1em center/9px no-repeat}.mw-parser-output .id-lock-subscription a,.mw-parser-output .citation .cs1-lock-subscription a{background:url("//upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/a/aa/Lock-red-alt-2.svg")right 0.1em center/9px no-repeat}.mw-parser-output .cs1-ws-icon a{background:url("//upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/4/4c/Wikisource-logo.svg")right 0.1em center/12px no-repeat}.mw-parser-output .cs1-code{color:inherit;background:inherit;border:none;padding:inherit}.mw-parser-output .cs1-hidden-error{display:none;color:#d33}.mw-parser-output .cs1-visible-error{color:#d33}.mw-parser-output .cs1-maint{display:none;color:#3a3;margin-left:0.3em}.mw-parser-output .cs1-format{font-size:95%}.mw-parser-output .cs1-kern-left{padding-left:0.2em}.mw-parser-output .cs1-kern-right{padding-right:0.2em}.mw-parser-output .citation .mw-selflink{font-weight:inherit}ISBN 9027287228. https://books.google.com/books?id=e-PxyCpnnzEC&pg=PA336 2017年1月26日閲覧。


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