認知症
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酒さは認知症、特にアルツハイマー型と有意な関連を示した[32]
動脈硬化の危険因子
高血圧糖尿病喫煙高コレステロール血症などが、脳血管型やアルツハイマー型などの本症の危険因子となる。
加齢関連認知低下(Aging-associated Cognitive Decline:AACD)
記憶障害のみにとどまらず認知機能低下をも含む、「広義の軽度認知障害」の概念のひとつとして国際老年精神医学会が診断基準をまとめたもの。加齢関連認知低下とは、6か月以上にわたる緩徐な認知機能の低下が本人や家族などから報告され、客観的にも認知評価に異常を認めるが、認知症には至っていない状態である。認知機能低下は、(a)記憶・学習、(b)注意・集中、(c)思考(例えば、問題解決能力)、(d)言語(例えば、理解、単語検索)、(e)視空間認知、のいずれかの面に該当する。ある地域の高齢者を対象にした研究では、3年後での認知症への進行率は、軽度認知障害が11.1%、加齢関連認知低下では28.6%であった。しかも、軽度認知障害の一般地域高齢者に占める割合は3.2%のみだが、加齢関連認知低下は19.3%にも上る、と報告されている。
イソフラボンのリスク
イソフラボン摂取が多い対象者では、認知機能障害のリスクが高かった。一方で、大豆製品の摂取量、豆腐、みそ、納豆、発酵大豆食品の摂取量は、認知機能障害との統計学的有意な関連は認められなかった[33]。さらに、大豆の腸内細菌の代謝物であるエクオールに認知症リスクを低下させる可能性が報告されている[34]
難聴との関係

アメリカ国立加齢研究所 (NIA) 縦断研究部門長ボルティモア加齢縦断研究責任者のLuigi Ferrucci博士らの研究で、難聴を有する成人はそうでない成人に比べて、認知症およびアルツハイマー病を発症するリスクが高く、難聴が重度であるほどリスクも高いことを突き止めた。この研究は、36-90歳の男女639人を対象に、難聴と認知症との関連性について調べたもので、1990年の研究開始時に認知症が認められた被験者はいなかった。研究グループは4年間にわたり、認知力と聴力検査を実施し、2008年まで平均約12年に及ぶ追跡調査を行い、認知症やアルツハイマー病の徴候をモニターした。その結果、125人の被験者が「軽度」、53人が「中等度」、6人が「重度」の難聴と診断された。最終的には、58例が認知症と診断され、そのうち37例はアルツハイマー病であった。軽度の難聴では認知症リスクがわずかに上昇し、中等度と重度の難聴を持つ患者ではリスクが大幅に増大していた。また、60歳以上の被験者では、認知症発症リスクの36%超が難聴と関連していることが分かった。難聴が悪化するほどアルツハイマー病のリスクは増大し、聴力が10デシベル低下するごとに、発症リスクは20%ずつ増大した。研究結果は、医学誌「Archives of Neurology(神経学)」2011年2月号に掲載された。この結果に関連して、アメリカのアルバート・アインシュタイン医科大学のリチャード・B・リプトン博士は『HealthDay News』2月14日付にて、「難聴は加齢の生物学的測定値の一種かもしれない。また、難聴は神経細胞の損傷の結果生じた可能性があり、仮に聴覚を介在するニューロンに障害があるなら、記憶やより高度の認知機能をつかさどる神経細胞の損傷マーカーにもなる」と述べた[35]
診断

意識障害時には診断できない。ICD-10DSM-IVでさえ診断基準は異なるが、一般に、日常生活に支障が出る程度の記憶障害認知機能の低下の2つの中核症状が見られる時に診断する。周辺症状の有無は問われない。機能が以前と比べて低下していることが必須であり、生まれつき低い場合は精神遅滞(知的障害)に分類される。

記憶認知機能などの程度を客観的に数値評価する検査としてWAIS-R(ウェクスラー成人知能検査)などがあるが、施行に時間を要し日常診療で用いるには煩雑である。簡便なスクリーニング検査としては、世界的にはミニメンタルステート検査 (MMS、MMSE) が頻用されている[36][37]日本では聖マリアンナ医科大学の長谷川和夫らが開発した「長谷川式認知症スケール」(HDS-R)がよく利用される。

軽程度・疑わしい認知症患者については脳波検査も含めるべきである[38]

英国国立医療技術評価機構 (NICE) はアルツハイマー型認知症脳血管性認知症の診断基準にはNINCDS-ADRDAアルツハイマー基準(英語版)、前頭側頭型認知症の診断基準にはLund?Manchester基準を推奨している[39]
鑑別疾患

せん妄、FTD、クロイツフェルト・ヤコブ病が疑われる場合には、脳波検査を検討すべきである[38]

うつ病せん妄と間違われやすい[2][40]難聴とも鑑別を要する。

認知症は、日内変動を伴わず、ゆっくり記憶障害から発症する[40]。深刻さを欠き、質問に対してははぐらかしたり怒ったりする。原因が必ずしも特定されない。

うつ病は、日内変動が強く典型的には朝に悪化し[40]、比較的急激に抑うつ症状から発症する。自責的で深刻味をおび、質問に対する返答は遅れたりわからないと言ったりする。早期覚醒も見られる[40]

せん妄は、日内変動が強く急激に発症し、対話が成立しないこともある[40]。薬剤・身体疾患などの原因が存在する。せん妄の可能性がある場合は中間尿検査を必ず行う[38]

検査
神経心理学的検査

知能検査をはじめとする神経心理学的検査が診断および重症度評価などに用いられる。記憶検査としてはウェクスラー記憶検査法 (WMS-R) や日本語版リバーミード行動記憶 (RBMT) が標準とされているが認知症診療では実際的ではないため、ここでは認知症で用いられる検査を中心に概説する。認知症の評価、スクリーニングでは記憶など中核症状、BPSD、ADLの3つの症候を扱う。それぞれ質問式の認知機能検査を用いたり観察式の行動評価尺度を用いたりする。それぞれの検査の特徴を以下にまとめる。

質問式観察式
最低限の情報で実施可能十分に把握している家族、介護スタッフが必要
本人のみであっても実施可能家族などからの情報のみで評価可能
本人が協力的でなければ実施不可能本人が拒否的であっても評価可能
著しい視聴覚障害があると実施不可能視聴覚障害の影響をほとんど受けない
施行者によるばらつきは少ない結果のばらつきを減らすにはマニュアルによる訓練が必要
居宅、入院、入所を問わない評価項目によっては入院、入所では評価できない
認知機能障害は評価できるがBPSDは評価できない認知機能障害もBPSDも評価できる

質問式の知機能障害を測定する尺度

General practitioner Assessment of Cognition (GPCOG) やMini-CogおよびMemory Impairment Screen (MIS) は日本語版が作成されていないため一般的ではない。
長谷川式認知症スケール (HDS-R)
長谷川和夫によって作成された認知症診断のための簡易スケールで、現在日本で最も広く使用されている。かつては「長谷川式簡易知能評価スケール」と呼ばれていたが、2004年4月に痴呆症から認知症へ改称されたことに伴い現在の名称に変更されている。自分の年齢や現在の日付、現在位置や物の名称、簡単な引き算などの9つの設問からなり、最高得点は30点であり20点以下を認知症の疑いありとする。あくまで簡易スクリーニング検査であり、認知症との判断を下したり重症度分類の際には使用されない。参考となる平均点は非認知症は24.3±3.9点、軽度は19.1±5.0、中等度15.4±3.7、やや高度10.7±5.4、非常に高度4.4±2.6とされている。
ミニメンタルステート検査 (Mini-Mental State Examination, MMSE)
国際的には最も普及している方法で、英国・豪州では推奨されている[36][37]。日本でも長谷川式認知症スケールと併用されることが多い。11の設問からなり、満点は30点。原法では20点以下を認知症としたが23点以下を認知症とするのが2010年現在は一般的である。HDS-Rと比較して記憶に関する負荷が低く、教育年数による影響が知られている。一方で長谷川式には存在しない、認知機能の低下による影響が大きい視空間と構成能力を判断する図形の模写を求める設問がある。
時計描画試験 (Clock Drawing test、CDT)
視空間と構成能力を評価する簡便な検査法である[37]。時計の文字盤を書いてもらい、指定した時刻を示す長針と短針を書き加えてもらうだけの簡便な検査である。課題としてはコンセンサスを得られた採点法が存在しないことである。
The Seven Minites Screen (7MS)


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