認知症
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厚労省は2013年のガイドラインで、BPSDへの抗精神病薬投与は適応外処方であり、使用しない姿勢が必要で、中等度から重度のBPSDが対象となり、身体拘束を意図した投薬、多剤併用はすべきではないとしている[18]

NICEの2006年のガイドラインは、アルツハイマー病 (AD)、血管性認知症 (VaD)、混合型認知症について、軽度から中等度のBPSDであるならば有害事象および死亡リスクが増加するため抗精神病薬を処方してはならないとしている[注釈 4]

またNICEはDLB認知症について、軽度から中等度のBPSDであるならば、重大な有害事象リスクのため抗精神病薬を処方してはならないとしている[56]


漢方薬

遠志イトヒメハギの根で、その主治は鎮静作用であるが、『神農本草経』(後漢?三国時代に成立)に「不忘」とあり、健忘症状に有効であることが記載されている。近年の研究では、遠志が高齢者への記憶を含めた認知機能を改善させた報告や、βアミロイド(Aβ)によるラット皮質ニューロンへの傷害を抑制した報告などがある。『神農本草経』の記載は、現在の認知症の中核症状と同等のものとは考えにくいが、健忘を使用目標のひとつとして、遠志を含有する漢方薬を考慮できる。[57][58]

健忘を主治とする生薬の「遠志」を含む漢方エキス製剤は、帰脾湯、加味帰脾湯、人参養栄湯である。「遠志」を含まないが、認知症に効果が期待できる漢方薬には、抑肝散抑肝散加味陳皮半夏釣藤散当帰芍薬散八味地黄丸がある。[58]

ランダム化比較試験 (RCT) では、抑肝散(TJ54, 構成生薬:柴胡、釣藤鈎、蒼朮、伏苓、当帰、川?、甘草)はBPSDを有意に抑制し、かつ患者のADLを改善し、さらに介護者の介護負担感を減少させると報告されている[59][60][61]
その他

厚労省(2013)では、
抗うつ薬は、患者のコリンエステラーゼ阻害薬に反応しない抑うつの管理において検討される。

WHOのガイドラインではジアゼパムの使用を禁じている[11]。AGS(2014)は、高齢者の不眠症・興奮・せん妄に対して、ベンゾジアゼピンや他の催眠鎮静薬を第一選択肢とすべきではないとしている。

ビフィズス菌MCC1274の摂取による認知機能改善作用の可能性が報告されている[62]

2004年、UCLAの研究チームはアルツハイマー病モデルマウスを用いて実験を行い、クルクミンが脳におけるβアミロイドの蓄積を抑制し、アミロイド斑を減少させることを示した[63]。クルクミンが精神的機能に影響をおよぼすとの疫学的調査結果も存在する。高齢のアジア人を対象としたミニメンタルステート検査で、半年に1度以上黄色カレーを食する群において相対的に高いスコア(より健康な精神的機能)が見られた[64]

2015年4月から機能性表示食品制度がスタートしたことにより、記憶力や注意力などの認知機能を維持・サポートする成分(DHA、イチョウ葉エキス、エルゴチオネインなど)が研究されている。機能性表示食品は、事業者の責任において、科学的根拠に基づいた機能性を表示しており、販売前に「最終製品を用いた臨床試験」または「最終製品または機能性関与成分に関する研究レビュー」を消費者庁に届出し、受理されれば表示可能となる。軽度認知障害 (MCI) や周辺症状 (BPSD) に対する作用が期待されている[65][66]
嚥下困難

認知症患者の多くは嚥下困難を抱えている。しかしAGSは高度の認知症患者に対し経管栄養法(胃瘻)は推奨せず、代わりに経口摂取援助を提案している[51]。胃瘻は患者の動揺と関連性があり、身体的・薬物的拘束の使用を増加させ、褥瘡の悪化をまねく[51]半夏厚朴湯(TJ16, 構成生薬:半夏、伏苓、厚朴、蘇葉、生姜)は脳血管性障害患者の嚥下反射、咳反射を改善し、障害を持つ高齢者における誤嚥性肺炎の発生を予防する。[67][68][69]
疫学2002年の100,000人あたりの認知症の障害調整生命年 (DALY)[70] body:not(.skin-minerva) .mw-parser-output .columns-list__wrapper{margin-top:0.3em}body:not(.skin-minerva) .mw-parser-output .columns-list__wrapper>ul,body:not(.skin-minerva) .mw-parser-output .columns-list__wrapper>ol{margin-top:0}body:not(.skin-minerva) .mw-parser-output .columns-list__wrapper--small-font{font-size:90%} .mw-parser-output .legend{page-break-inside:avoid;break-inside:avoid-column}.mw-parser-output .legend-color{display:inline-block;min-width:1.5em;height:1.5em;margin:1px 0;text-align:center;border:1px solid black;background-color:transparent;color:black}.mw-parser-output .legend-text{}  データなし   50以下   50-70   70-90   90-110   110-130   130-150   150-170   170-190   190-210   210-230   230-250   250以上

認知症有病率は、65歳未満の労働年齢層では2-10%とまれであるが[8]、80歳を超えると急に高まり、95歳以上になると欧州では約半数が罹患している[8]。OECDはもし年齢別有症率が現在のペースのままであれば、20年後の欧州は認知症患者数が現在の1.5倍になると予想している[8]

認知症有病率(年齢別)[71]年齢60?6465?6970?7475?7980?8485?8990+
西ヨーロッパ[72]1.6%2.6 %4.3 %7.4 %12.9%21.7%43.1%
中央ヨーロッパ0.9%1.3%3.3%5.8%12.2%24.7%
東ヨーロッパ0.9%1.3%3.2%5.8%11.8%24.5%
米国1.1%1.9%3.4%6.3%11.9%21.7%47.5%
ラテンアメリカ1.3%2.4%4.5%8.4%15.4%28.6%63.9%
東アジア0.7%1.2%3.1%4.0%7.4%13.3%28.7%
南アジア1.3%2.1%3.5%6.1%10.6%17.8%35.4%
東南アジア1.6%2.6%4.2%6.9%11.6%18.7%35.4%
オーストララシア1.8%2.8%4.5%7.5%12.5%20.3%38.3%

日本については、65歳以上高齢者の有病率は3.0?8.8%(調査によってばらつきが大きい)とされ、OECDでは2009年では6.1%と報告されている[73]。2026年には10%に上昇するとの推計もある。

2010年には、日本での認知症患者数は約462万人(65歳以上人口の15%)、その前段階の軽度認知障害(MCI)は約400万人(13%)と推定された[74]。2014年では、日本の認知症患者数は約500万人、社会的費用は14.5兆円と、国民医療費全体の3分の1を占めていると推計された(厚労省認知症対策総合研究事業)[75]。また2035年には22.9兆円に膨らむ見込みとされる[75]。認知症高齢者は厚生労働省の統計で、2012年は462万人、2020年は602万人、2025年は675万人、2030年は744万人と推定されている[24][76]。「日本の精神保健#人口高齢化に伴う認知症の増加」も参照

アメリカ・バーモント大学の研究者が30,000人以上を平均3.4年追跡したところAB型は認知症との関連が見られた[77][78]。RTIインターナショナル(英語版)の研究者が現在までの発見をまとめており、血液の凝固の因子がかかわる可能性があり、O型以外がなりやすい可能性があり、心臓疾患や糖尿病、高血圧との関りから認知症になりやすくなっているような可能性も考えられる[79]。関係するFVIIIの体内濃度は、AB型>B型>A型>O型の順である[79]
社会的諸問題
経済的コスト

認知症に対しての経済的コストは、オランダでは保健支出の5.5%、ドイツでは3.7%を占めている[8]


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