認知症
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「2つの質問への回答がどちらも誤っているときには認知症である」とすると感度61.2%、特異度97.8%、陽性適中率44.5%、陰性適中率98.9%であった[41]
Alzheimer's Disease Assessment Scale (ADAS)
臨床的に診断されたADに対するコリン作動薬による認知機能の変化を評価すること目的としている。スクリーニングとして用いられることはない。ADASの認知機能下位尺度であるADAS cog.が臨床試験でよくも用いられる。アルツハイマー型認知症では年間得点変化が9-11点であり、変化は軽度と高度認知症では小さく、中等度認知症では大きい傾向が指摘されている。
Severe Impairment Battery
高度に障害された認知機能を評価する。
日本語版リバーミード行動記憶検査 (RBMT)
記憶検査であるが、日本語版では認知症にも用いられるように標準化に高齢者の被験者が含まれている。日常生活のさまざまな状況を再現しているのが特徴。
日本語版Neurobehavioral Cognitive Status Examination (CONISTAT)
多面的な評価が可能である。
観察式による認知機能障害を評価する尺度
Clinical Dementia Rating (CDR)
最も一般的に用いられている観察式の認知症の重症度評価法である。健康がCDR=0、認知症の疑いがCDR=0.5、軽度認知症がCDR=1、中等度認知症CDR=2、高度認知症CDR=3と判定する。
Functinal Assessment Staging (FAST)
CDRと共に国際的に頻用されている観察式の重症度評価法である。ADLを総合的に判断し認知症の中でもADの重症度を判定することを目的とする。境界領域や軽度認知症のADL行動変化が非常に検出しやすいことが特徴である。その他の特徴としてはそれぞれのstageの期間と予後が示されている点、各stageの認知機能低下を示す状態の鑑別疾患が示されている点が特徴である。
N式老年者用精神状態尺度(NMスケール)
CDRに比べて対象者の日常生活の具体的な状況を当てはめることで評価できるため介護施設で用いられることが多い。
介護者からの情報による認知症スクリーニング尺度
Short Memory Questionnaire (SMQ)
この尺度は日常生活において要介護高齢者と関わる機会の多い主たる介護者が要介護高齢者の認知障害の程度を評価するために作成されたものである。
Informant Questionnaire on Cognitive Decline in the Elderly (IQCODE)
高齢者における認知機能低下のインフォアンケート。高齢者における認知機能低下や認知症を評価するために設計された短いアンケート。
日常生活動作能力 (ADL) 、道具的日常生活動作能力 (IADL) を評価する尺度「日常生活動作」も参照
Physical self-Maintenance Scale(PSMS)/Instrumental Activities of Daily Living (IADL)
家族、介護者からの情報に基づき評価する。簡便で日常生活の中で活用可能である。認知症ではやや複雑なIADLがbasic ADLより先に障害されるため、IADLの評価の意味は大きい。
N式老年者用日常生活動作能力評価尺度 (N-ADL)
老年者および痴呆患者の歩行・起座、着脱衣などの日常生活動作能力を多面的にとらえ、点数化して評価する行動評価尺度である。
認知症のための障害評価表 (Disability Assessment for Dementia:DAD)
基本的には在宅のAlzheimer病患者を対象とした尺度である。運動機能障害のない患者に対して行われる。
ADCS-ADL (Alzheimer's Disease Cooperative Study-ADL scale)
家族、介護者からの情報を基に評価がなされる。主にAD患者を対象とした治験で用いられる。
認知症の周辺症状 (BPSD) を評価する尺度
Neuropsychiatric Inventory (NPI)
介護者による精神症状を評価するための方法。妄想、幻覚、興奮、うつ、不安、多幸、無感情、脱抑制、易刺激性、異常行動の10項目につき、それぞれの頻度を1?4の4段階で、重症度を1?3の3段階で評価する。
Behavioral Pathology in Alzheimer's Disease (Behave-AD)
ADに特徴的な妄想、盗癖、孤独への恐怖、睡眠障害などに注目したもので、薬物療法への評価を目的に使用される。
Cohen-Mansfield Agitation Inventory (CMAI)
叩く、足踏みする、叫ぶなどの行動に注目し、過去2週間の行動の頻度について38項目の質問を行うものである。
抑うつ状態を評価する尺度
Geriatric Depression Scale (GDS)
老年期うつ病評価尺度。15の質問からなる。評価基準: 0-4 うつ症状なし; 5-10 軽度のうつ病; 11+ 重度のうつ病。
Cornell Scale for depression in Dementia (CSDD)
認知症でうつ病のためのコーネル尺度。19の質問からなる。評価基準: >10 おそらく大うつ病; >18 明確な大うつ病。
多元的認知症評価尺度
GBSスケール (GBSS)
運動機能6項目、知的機能11項目、感情機能3項目、精神症状6項目を6段階評価とする。認知症の重症度とともに質的差異も評価できる尺度であるが、認知症の診断目的ではない。
認知症の生活の質 (QOL) を評価する尺度
日本語版Alzheimer's Disease-Health Related Quality of Life (AD-HRQ-J)
アルツハイマー病を持つ人の生活の健康関連の品質を評価するために使用される。ADの人の介護者に質問される。
日本語版Dementia Quality of life Instrument (DQoL)
日本語版DQoLは29項目から構成され、(1)自尊感情、(2)肯定的情動、(3)否定的情動、(4)所属感、(5)美的感覚の5つの下位尺度から構成される。
介護者の介護負担を評価する尺度
Burden Interview
負担のインタビューは、介護者が経験したストレスを反映するように設計されている。22の一連の質問に回答するように求められる。
生化学検査
CSF Aβ

ベータアミロイド (Aβ) は脳脊髄液 (CerebroSpinal Fluid、CSF)、血漿中にAβ40とAβ42として存在する。高齢者ではCSF Aβ42が低下するがAD患者ではAβ40が高度に低下しAβ40/Aβ42比は増加する。
CSF タウ

タウ蛋白質はADで上昇するとされている。AD以外では血管性認知症、パーキンソン病、進行性核上性麻痺、HIV感染症では上昇は認められない。しかし前頭側頭型認知症、レビー小体型認知症、皮質基底核変性症、クロイツフェルトヤコブ病では上昇例が認められている。よりADに特異度が高い検査としてリン酸化タウが期待されている。
血漿 Aβ

血漿AβもAD発症の危険因子や病態進行のマーカーとなりえる。
生理検査
脳波

アルツハイマー型認知症の患者では脳波は以下のように推移することが知られている。コリネステラーぜ阻害薬によって徐波が減少することが知られている。

正常波形

α波の貧困化、θ波混在

低-中振幅θ波主体の徐波

中-高振幅θ、δ波にδバーストを伴う大徐波

大徐波の低振幅、不規則化

平坦化

画像検査

他疾患との鑑別、認知症タイプ判別のため、認知症の疑いのある場合は画像撮影を実施しなければならない[39]
頭部CT

脳腫瘍慢性硬膜下血腫正常圧水頭症などの治療可能な疾患の検出が目的となる。脳萎縮の評価はMRIに比べて劣る。内側側頭部の萎縮の評価は間接所見として側脳室下角の拡大の程度で判定するが下角の拡大が常に海馬や海馬傍回の萎縮と合致するとは限らない。
頭部MRI

statistical parametric mapping (SPM) やvoxel-based morphometry (VBM) が盛んである。認知症の鑑別としてDLBとADを比較すると、ADでは海馬や側頭頭頂葉皮質の萎縮が強い。無名質はADの方が、中脳被蓋はDLBの方が萎縮が強いことが示されている。ADでは高齢発症では内側側頭部萎縮が目立つが初老期発症では側頭頭頂葉皮質の萎縮が目立つ。
SPECT

認知症疾患の鑑別として単一光子放射断層撮影 (SPECT) は非常に重要視されている。AD, VaD, FTDかの診断が疑わしい場合はSPECTを実施すべきである[39]シンチグラフィーも参照。血流は神経細胞数よりもシナプス活動を反映していると考えられており、ADではパペッツの回路として嗅内皮質と解剖学的に密接な繊維連絡を持つとされている帯状回後部や楔前部で血流低下が認められる。DLBでは後頭葉の血流低下が認められる。
PET

アミロイド斑を検出できるPETトレーサーが開発されておりアミロイドイメージングとして注目されている。11C-PIBが最も研究されておりADでは前頭前野や楔前部などの大脳皮質に強い集積が認められるのに対して、正常例では大脳皮質の集積は乏しいとされている。
管理

治療可能と判明しているタイプ以外の認知症について、治療法は存在しない[1]。AChE薬は初期状態の認知症に多く処方されているが、しかしその利益は大きくない[42]

「治療可能な認知症 (treatable dementia)」の場合は原因となる疾患の治療を速やかに行う。慢性硬膜下血腫または正常圧水頭症が原因の場合は手術で治す事ができる。

ハーバード健康出版局によると、「認知症様症状は決して元に戻らない」(Dementia-like symptoms are never reversible)という認識は不正確であり、バドソン医師(Dr. Budson)は「多くの場合、体調を治療することが認知症様症状を逆戻りさせるかもしれない」(In many cases, treating the condition may reverse the dementia-like symptoms)と述べている[43]
援助の方針

介護者には、認知症の介護はもどかしく非常にストレスになることを心理教育し、ネグレクトにならないよう陰性感情を認識させる[1]。介護者についてもうつ病を罹患している可能性を診察する[1]

介護保険障害年金デイケア通所など社会資源の利用も有用である[1]。専門医(老年内科、精神科神経内科など)、介護職(介護福祉士など)の協力・連携の元にチーム医療を行う事が望ましい[1]


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