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例えば、シェイクスピアジュリアス・シーザー』のアントニーの有名なユーロジーでは、アントニーが繰り返す「ブルータスは高貴な男ゆえ」という言葉は真摯な調子から皮肉が滲み出るものへと変化してゆく[52]
詩型

多くの文化がそれぞれ独自の詩型を発展させてきた。成熟・完結し、もしくは「広く認められた」詩型では、押韻構成やメーターやその他の要素は一連の規則に基づく。エレジーのように比較的ゆるやかな構成規則を持つものから、ガザルヴィラネルのように高度に様式化された構造を持つものまでがある。以下では複数の言語に跨って広く用いられている詩型の一部を記述する。
ソネットウィリアム・シェイクスピア詳細は「ソネット」を参照

ソネットは時代を通じて(西洋詩で)最も一般的な詩型であり、13世紀頃には14行から成り一式の押韻構成と論理構造に従う詩として成立していた。典型的には、ソネットの最初の4行は「a-b-a-b」の押韻構成を取り、主題を導入する。ソネットに纏わる慣習はその歴史と共に変化し、結果としてさまざまな異なったソネット形式が存在する。伝統的に、英語の詩人はソネットには弱強五歩格を用いる。特にスペンサー風ソネットやシェイクスピア風ソネットが代表的である。ロマンス諸語では、十一音節詩アレクサンドラン(十二音節詩)が最も広く使用されるメーターであるが、イタリアでは14世紀以降ペトラルカ風ソネットが使用された。ソネットは恋愛詩と特に結び付けられ、鮮明なイメージに基づく詩語を用いることが多かったが、8行から6行へ、及び最後の二行連への移行に伴う転換はまたソネットを数多くの主題にとって使いやすくダイナミックな形式ともした。シェイクスピアの諸ソネットは英詩で最も有名なものの1つであり、20作が『Oxford Book of English Verse』に収められている[53]

日本では明治以降蒲原有明上田敏中原中也立原道造などがソネットでの詩作を行ったほか、戦中・戦後にもマチネ・ポエティクの詩人たちが定型押韻詩の試みとして押韻したソネットを集団的に書いた。
セスティーナ詳細は「セスティーナ」を参照

プロヴァンストルバドゥールたちを起源とするセスティーナには6つのスタンザがあり、各々が押韻しない6行から形成され、最初のスタンザの各行末の単語が周期的なパターンで他のスタンザに再登場する。これを各語を2つずつ含む3行から成るスタンザが締め括る。
ヴィラネルW・H・オーデン詳細は「ヴィラネル」を参照

ヴィラネル(原義は「田園詩」)は5つの三行連と末尾の四行連から成る19行詩である。最初のスタンザの1行目と3行目に用いられた2つのリフレインが以降のスタンザの末尾で交互に用いられ、最後の四行連は両方のリフレインで締め括られるのが特徴となっている。それ以外の各行は「a-b」の交韻を持つ。19世紀末以降、ディラン・トマス[54]W・H・オーデン[55]エリザベス・ビショップ[56]などに見られるように英詩でしばしば用いられるようになった。全体として既存の詩型が用いられなくなる時代にあって、逆に広く用いられるようになった詩型である[要出典]。
パントゥーン

パントゥーン (en:pantoum) はヴィラネルに類似した比較的稀な詩型である。四行連の連続により構成されており、各スタンザの2行目と4行目が次のスタンザの1行目と3行目として繰り返される。
ロンドー詳細は「ロンドー」を参照

ロンドーは元々はフランスの詩型であり、2つの脚韻を用いた「5-4-6」の3連15行で書かれ、1行目の冒頭部がリフレインとして第2・第3連の最後の行に用いられる。
近体詩杜甫詳細は「近体詩」を参照

近体詩は古典中国語四声平声上声去声入声)を用いた各二行連での声調のパターンに基づく中国の詩型である。近体詩の基本形は二行連4つの計8行(8句)から成り、第2・第3の二行連の各行は対句となっている律詩である。対句では、平行関係にある行は対照的な内容を持つが単語(漢字)の間の文法関係は同一でなければならない。近体詩は豊かな詩語を持ち、引喩に満ちていることが多く、歴史や政治を含む幅広い主題に亘っていた。8世紀、王朝の杜甫李白などがこの詩型の達人であった。律詩の他に、4行から成る絶句、12行以上から成る排律などがあり、1行の文字数が5文字の「五言」と7文字の「七言」があるなどのバリエーションがある。

近体詩以前から存在した比較的自由な漢詩の詩体は古体詩と呼ばれ、楽府などの形式がある。
短歌柿本人麻呂詳細は「短歌」を参照

短歌は、「5-7-5 7-7」のパターンに構成された5つの部分から成る31の「音字」(モーラと同一の音韻単位)で作られる日本の押韻しない詩(和歌)の形式である。前半の「5-7-5」のフレーズ(上の句)と後半の「7-7」のフレーズ(下の句)の間(もしくは他の位置)で調子や題材に転換があるのが普通である(句切れ)。短歌は奈良時代には柿本人麻呂などの歌人によって詠まれており、この時期に日本は中国から借用した形式による詩が大半であった時代から抜け出し始めた。短歌は当初は日本の定型詩(倭歌)のうち短いものであり、公の主題よりも個人的な主題を探求するのに大いに用いられ、従ってより形式張らない詩語を有した。


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