押韻構成の大半は脚韻の組に対応する文字によって表せる。例えば四行詩の第1・2・4行が韻を踏み、第3行が踏まないとすると、この四行詩は「a-a-b-a」の押韻構成を持つと言う。この押韻構成はルバーイイ形式などで用いられるものである[注釈 18]。同様に、「a-b-b-a」の四行詩は(抱擁韻、en:enclosed rhyme と呼ばれ)、ペトラルカ風ソネットなどの形式で用いられる[48]。より複雑な押韻構成の中には、オッターヴァ・リーマやテルツァ・リーマのように「a-b-c」式の構成を離れ、独自の名前を持つようになったものもある。さまざまな押韻構成の種類や方法については「押韻構成」の項を参照。 オッターヴァ・リーマは最初の6行が「a-b」の押韻構成で、結びの2行がそれに続き「a-b-a-b-a-b-c-c」の計8行からなる連を用いる押韻構成である。ジョヴァンニ・ボッカッチョが最初に用い、英雄叙事詩で発達したが、また英雄を嘲笑する詩でも用いられた。 ダンテの『神曲』[注釈 19]はテルツァ・リーマで書かれている。各連は3行から成り、その第1行と第3行が押韻し、第2行は次の連の第1・第3行と韻を踏み鎖韻 (en:chain rhyme 詩の形式(詩型)はモダニズムやポストモダニズムの詩ではより柔軟なものとなり、それ以前の時代と比べますます構造化されないものとなり続けている。現代の詩人の多くは目に見える構造や形式を避け、自由詩で書くようになっている。それでも、詩は散文からその形式によって区別されるものであり続けている。基本的な詩の構造への何らかの敬意は最も自由な形の詩にあってさえも見出される、そうした構造は無視されているように見えるのではあるけれども。同様に、古典的なスタイルで書かれた最良の詩であっても、重点や効果の面では厳密な形式からは逸脱しているものである。 詩に用いられる構造的な要素(ユニット)のうち主要なものとしては行、連もしくは段落(一定の行数を持たない連)、連や行の組み合わせで構成されるより大きな編 (en:canto 詩はしばしばページ上で複数の行に分割(改行)される。これらの行はメーターの韻脚数に基づいていたり行末の押韻パターンを強調していたりする。行は他の機能を持つこともあり、型通りのメーターのパターンに従って書かれていない場合には特にそうである。行によって、異なった単位で表現された思考を分離・比較・対比したり、調子の変化を強調したりすることができる。 詩行はしばしば連(スタンザ)と呼ばれる、含む行数によって名付けられる単位を構成する。2行から成るものは二行連、以降三行連、四行連、五行連、六行連、八行連となる。これらの詩行は互いに韻やリズムによって関連付けられる場合もそうでない場合もある。例えば、二行連は同一のメーターを持ち押韻する2つの行から成る場合も、メーターのみを共有する2行から成る場合もある。関連付けられた複数の二行連や三行連が1つの連の中にある場合も多い。アレクサンドル・ブロークの詩『夜、通り、街灯、ドラッグストア』。ライデンの壁。 パラグラフ単位で構成される詩もあり、こうした詩では確立したリズムを伴う規則的な押韻は用いられず、詩の調子はパラグラフ形式の中で確立されたリズム、頭韻、脚韻などの集積によって生み出される。規則的な押韻とリズムが用いられていた地域であってでも、多くの中世の詩はパラグラフ形式で書かれていた。 多くの詩型で、連は連結されており、1つの連の押韻構成やその他の構造要素が以降に続く連のそれらを決定する。こうした連結された連の例として、最初の連でリフレイン(ヴィラネルの場合は複数のリフレイン)が確立され、以降の連でそれを繰り返すガザルやヴィラネルなどがある。連結された連はまた詩をテーマ別の部分に分離することにも使われる。例えば、頌歌形式でのストロペー、アンティストロペー、エポードはしばしば1つもしくは複数の連に分離されている。このような場合や、その他構造が極めて規則的に作られている場合には、1つの連が完全なセンテンスと纏まりのある考えから成る1つの完成した思考を形成するのが普通である。 いくつかの場合、特に叙事詩の形式にあるような長大で秩序立った詩の場合には、連そのものが厳密な規則に従って構築され、結合される。スカルド詩では、「Drottkvatt」(「君主らしい詩」。en:Alliterative verse 印刷術の出現以前から、詩の視覚的な外見はしばしば詩に意味や深みを付与していた。折句は詩行の先頭やその他の特定の位置にある文字によって意味を伝えた。アラビア詩、ヘブライ詩、漢詩、和歌などでは、優美なカリグラフィーで書かれた詩の視覚的表現は多くの詩において重要な全体的効果を及ぼしていた。 印刷術が出現すると、詩人たちは大量生産によってさらなる視覚的表現を操れるようになった。視覚的要素は詩人の道具箱の重要な部分となり、多くの詩人たちは視覚的表現を幅広い目的に活用しようとした。モダニズム詩人の中には、ページ上での個々の詩行や詩行の纏まりの配置を詩の構成の不可分な一部とした者もいた。時としてこれは、さまざまな長さの視覚的なカエスーラを通して詩のリズムを補ったり、並置を作り出すことによって意味や多義性やイロニーを際立たせたり、また単純に審美的に心地よい形を作り出したりした[50]。最も極端な形としては、カリグラムや失象徴筆記 (en:asemic writing
オッターヴァ・リーマ
テルツァ・リーマ
形式
行と連
視覚表現徽宗「芙蓉錦鶏図」(11世紀頃)。五言絶句の賛がある
源順の歌の藤原定信による色紙(1100年頃)
ニザーミーの詩のカリグラフィー(16-17世紀頃)
ウィリアム・ブレイク『無垢と経験の歌』(1789)
ステファヌ・マラルメ『骰子一擲』(1897)(→全文)
ギヨーム・アポリネールのカリグラム(1915)
Marco Giovenale による asemic writing
詩語クリスティーナ・ロセッティ『「ゴブリン・マーケット」とその他の詩』(1862) のダンテ・ゲイブリエル・ロセッティによるイラストレーション。『ゴブリン・マーケット』では童謡の形を取りながら複雑な詩語を駆使した。「ゴブリンたちを見てはだめ/その果物を買っちゃだめ/どんな土に生やしてるんだか/その渇いた貪欲な根っこを?」
詩語(en:poetic diction; 詩の用語法)は言語が使用される方式を扱う。音声だけでなく、内在する意味や、その音声や詩型との相互作用にも及ぶ。多くの言語や詩型は極めて独特な詩語を有しており、詩のための独自の文法や方言を持つまでに至っている。これには20世紀後半の韻律論で好まれたような通常の言葉遣いの厳密な使用から、中世やルネサンス期のマーカー(en:makar. スコットランドの詩人を指す)などに見られる非常に華美できらびやかな言語の用法までの幅がある。
詩語には直喩や隠喩(メタファー)のような修辞技法やイロニーのような口調なども含まれる[注釈 21]。アリストテレスは『詩学』において「何よりも偉大なことは隠喩の名手であることだ」と書いている[51]。