『英詩への言語学的ガイド』(Longmans, 1969) においてジェフリー・リーチは韻を6つの音声パターンに分類した。これらは、関係する単語を構成する部分のうち1つまたは2つが変化しうる6つの可能な方法として定義されている。下表では不変の部分は大文字/太字で表示している。Cは子音群(1つの子音とは限らない)を、Vは母音を現す。
種別パターン英語例1英語例2フランス語例[注釈 17]日本語例(擬似的)
頭韻C v cgreat/growsend/sitplace/pleurめんこ/めだか
類韻(母音韻)c V cgreat/failsend/bellplace/femme(めんこ/きんく)
子音韻c v Cgreat/meatsend/handplace/tresse---
逆韻 (Reverse Rhyme)C V cgreat/grazedsend/sellplace/plaqueめんこ/めんつ
en:PararhymeC v Cgreat/groatsend/soundplace/plusseめんこ/めのこ
脚韻c V Cgreat/baitsend/bendplace/masseめんこ/はんこ
共通する音素が多い押韻は「豊か」であると言われる(言語の押韻構造の豊かさとは別の概念)。例えばフランス語の agate/fregate は末尾の3音素が共通なので豊かであり、bijou/clou は母音1音素のみ共通なので貧しい。aigre/tigreは子音2音素が共通であるが、このように母音が共通しないものは子音韻であり脚韻とは見做されない。
押韻構成ダンテとベアトリーチェが、天使に囲まれた光の点として現された神を見ている。ギュスターヴ・ドレによる『神曲』天国篇28のイラストレーション。詳細は「押韻構成」を参照
現代ヨーロッパ諸語、アラビア語、中国語を含む数多くの言語で、バラッド・ソネット・二行連といった詩の形式を構成する要素として詩人たちは一定のパターンに沿って脚韻を用いてきた。しかしながら、構造的な脚韻の用法はヨーロッパの伝統の中においてすら普遍的なものではない。現代の詩は伝統的な押韻構成を避けるものも多い。古典ギリシア・ラテンの詩は押韻を行わなかった。脚韻は中世盛期(11-13世紀頃)に、部分的にはアンダルス(今日のスペイン)のアラビア語の影響下でヨーロッパに移入された[47]。アラビア語の詩人たちは6世紀のアラビア文芸の発達初期からその長大なカスィーダ (en:qasida) において大々的に脚韻を用いていた。中国では紀元前の『詩経』『楚辞』で既に押韻が行われていた。押韻構成の一部は特定の言語・文化・時代と結び付いたものとなり、一部はそれらを跨って使用されるものとなった。詩の形式の中には王侯用詩形やルバーイイのように明確に定義された一貫した押韻構成を持つものもある一方で、可変の押韻構成を持つものもある。
押韻構成の大半は脚韻の組に対応する文字によって表せる。例えば四行詩の第1・2・4行が韻を踏み、第3行が踏まないとすると、この四行詩は「a-a-b-a」の押韻構成を持つと言う。この押韻構成はルバーイイ形式などで用いられるものである[注釈 18]。同様に、「a-b-b-a」の四行詩は(抱擁韻、en:enclosed rhyme と呼ばれ)、ペトラルカ風ソネットなどの形式で用いられる[48]。より複雑な押韻構成の中には、オッターヴァ・リーマやテルツァ・リーマのように「a-b-c」式の構成を離れ、独自の名前を持つようになったものもある。さまざまな押韻構成の種類や方法については「押韻構成」の項を参照。 オッターヴァ・リーマは最初の6行が「a-b」の押韻構成で、結びの2行がそれに続き「a-b-a-b-a-b-c-c」の計8行からなる連を用いる押韻構成である。ジョヴァンニ・ボッカッチョが最初に用い、英雄叙事詩で発達したが、また英雄を嘲笑する詩でも用いられた。 ダンテの『神曲』[注釈 19]はテルツァ・リーマで書かれている。各連は3行から成り、その第1行と第3行が押韻し、第2行は次の連の第1・第3行と韻を踏み鎖韻 (en:chain rhyme 詩の形式(詩型)はモダニズムやポストモダニズムの詩ではより柔軟なものとなり、それ以前の時代と比べますます構造化されないものとなり続けている。現代の詩人の多くは目に見える構造や形式を避け、自由詩で書くようになっている。それでも、詩は散文からその形式によって区別されるものであり続けている。基本的な詩の構造への何らかの敬意は最も自由な形の詩にあってさえも見出される、そうした構造は無視されているように見えるのではあるけれども。同様に、古典的なスタイルで書かれた最良の詩であっても、重点や効果の面では厳密な形式からは逸脱しているものである。 詩に用いられる構造的な要素(ユニット)のうち主要なものとしては行、連もしくは段落(一定の行数を持たない連)、連や行の組み合わせで構成されるより大きな編 (en:canto 詩はしばしばページ上で複数の行に分割(改行)される。これらの行はメーターの韻脚数に基づいていたり行末の押韻パターンを強調していたりする。行は他の機能を持つこともあり、型通りのメーターのパターンに従って書かれていない場合には特にそうである。行によって、異なった単位で表現された思考を分離・比較・対比したり、調子の変化を強調したりすることができる。 詩行はしばしば連(スタンザ)と呼ばれる、含む行数によって名付けられる単位を構成する。2行から成るものは二行連、以降三行連、四行連、五行連、六行連、八行連となる。これらの詩行は互いに韻やリズムによって関連付けられる場合もそうでない場合もある。
オッターヴァ・リーマ
テルツァ・リーマ
形式
行と連