漢詩における五言や七言、日本の五七調や七五調もここに加えうるであろう。漢詩には声調に「平仄」と呼ばれる規則がある。
脚韻、頭韻、類韻古英語の叙事詩『ベーオウルフ』は頭韻法により書かれている。詳細は「押韻」、「頭韻法」、および「類韻」を参照
脚韻、頭韻、類韻、子音韻は音声の反復するパターンを作り出す方法である。これらは詩の独立した構造要素として、リズムパターンを補強するために、あるいはまた装飾的な要素として使用されうる[注釈 14]。
押韻とは、詩行の末尾(脚韻)もしくはその他の予測可能な位置(中間韻)に同一 (hard-rhyme) もしくは類似 (soft-rhyme) の音を置くことである[44]。言語によって押韻構造の豊かさには差がある。例えばイタリア語は豊かな押韻構造を持ち、長大な詩を少数の脚韻の組で持続させることができる。この豊かさは規則的な形の語尾によるものである。英語は他言語から借用された不規則な語尾が多いので押韻にはあまり富んでいない[45]。押韻構造の豊かさはその言語でどのような詩の形式が一般的に用いられるかを決定する上で重要な役割を担う[注釈 15]。
頭韻と類韻は初期のゲルマン語、ノルド語、古英語の詩を構成する上で重要な役割を果たした。初期ゲルマン詩の頭韻パターンはその構造の主要部分としてメーターと頭韻を織り交ぜることで、メーターのパターンによっていつ聞き手が頭韻が来ると期待するかを決定できるようにした。これは、近代ヨーロッパ詩の大部分で見られる、規則的ではなかったり、連の全体で完遂はされなかったりする装飾的な頭韻の使用と対比することができるであろう[46]。頭韻は押韻構造に富まない言語で特に有用である[注釈 16]。類韻は語頭や語尾での似た音声ではなく語中の似た母音を用いるものであり、スカルド詩で広く用いられたが、これはホメロスの時代にまで遡る。英語では動詞が多くのピッチを持つため、類韻が漢詩の声調要素を緩やかに喚起させることができるので漢詩の翻訳に有用である。子音韻は1つの子音をセンテンスの至る所で(語頭だけではなく)反復するものである。子音韻は頭韻と比して微弱な効果しか引き起こさないので、構造的な要素としての有用性も低い。
『英詩への言語学的ガイド』(Longmans, 1969) においてジェフリー・リーチは韻を6つの音声パターンに分類した。これらは、関係する単語を構成する部分のうち1つまたは2つが変化しうる6つの可能な方法として定義されている。下表では不変の部分は大文字/太字で表示している。Cは子音群(1つの子音とは限らない)を、Vは母音を現す。
種別パターン英語例1英語例2フランス語例[注釈 17]日本語例(擬似的)
頭韻C v cgreat/growsend/sitplace/pleurめんこ/めだか
類韻(母音韻)c V cgreat/failsend/bellplace/femme(めんこ/きんく)
子音韻c v Cgreat/meatsend/handplace/tresse---
逆韻 (Reverse Rhyme)C V cgreat/grazedsend/sellplace/plaqueめんこ/めんつ
en:PararhymeC v Cgreat/groatsend/soundplace/plusseめんこ/めのこ
脚韻c V Cgreat/baitsend/bendplace/masseめんこ/はんこ
共通する音素が多い押韻は「豊か」であると言われる(言語の押韻構造の豊かさとは別の概念)。例えばフランス語の agate/fregate は末尾の3音素が共通なので豊かであり、bijou/clou は母音1音素のみ共通なので貧しい。aigre/tigreは子音2音素が共通であるが、このように母音が共通しないものは子音韻であり脚韻とは見做されない。
押韻構成ダンテとベアトリーチェが、天使に囲まれた光の点として現された神を見ている。ギュスターヴ・ドレによる『神曲』天国篇28のイラストレーション。詳細は「押韻構成」を参照
現代ヨーロッパ諸語、アラビア語、中国語を含む数多くの言語で、バラッド・ソネット・二行連といった詩の形式を構成する要素として詩人たちは一定のパターンに沿って脚韻を用いてきた。しかしながら、構造的な脚韻の用法はヨーロッパの伝統の中においてすら普遍的なものではない。現代の詩は伝統的な押韻構成を避けるものも多い。古典ギリシア・ラテンの詩は押韻を行わなかった。脚韻は中世盛期(11-13世紀頃)に、部分的にはアンダルス(今日のスペイン)のアラビア語の影響下でヨーロッパに移入された[47]。アラビア語の詩人たちは6世紀のアラビア文芸の発達初期からその長大なカスィーダ (en:qasida) において大々的に脚韻を用いていた。中国では紀元前の『詩経』『楚辞』で既に押韻が行われていた。押韻構成の一部は特定の言語・文化・時代と結び付いたものとなり、一部はそれらを跨って使用されるものとなった。詩の形式の中には王侯用詩形やルバーイイのように明確に定義された一貫した押韻構成を持つものもある一方で、可変の押韻構成を持つものもある。
押韻構成の大半は脚韻の組に対応する文字によって表せる。例えば四行詩の第1・2・4行が韻を踏み、第3行が踏まないとすると、この四行詩は「a-a-b-a」の押韻構成を持つと言う。この押韻構成はルバーイイ形式などで用いられるものである[注釈 18]。