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メーターの解析はしばしば韻文の根底にある基礎的・根本的なパターンを明らかにするが、強勢、ピッチ、音節長などのさまざまな違いについては明らかにしない[32]

メーターの定義の例として、英語での弱強五歩格では、各行は5つの韻脚から成り、各韻脚はイアンボス(強勢のない音節に強勢のある音節が続く)である。個々の行を調べる際には、メーターの基本パターンの上にバリエーションがある場合もある。例えば、英詩の弱強五歩格では最初の韻脚は頻繁に倒置されており、強勢が最初の音節に来ている[33]。最もよく使われる韻脚の種類の一般的な名称は:ヘンリー・ホリデーによるルイス・キャロルスナーク狩り』のイラストレーション。弱弱強四歩格で書かれている。 "In the midst of the word he was trying to say / In the midst of his laughter and glee / He had softly and suddenly vanished away / For the snark was a boojum, you see."

イアンボス(iamb, 弱強格/短長格)

トロカイオス (trochee, 強弱格/長短格)

ダクテュロス (dactyl, 強弱弱格/長短短格)

アナパイストス (anapest, 弱弱強格/短短長格)

スポンデイオス (spondee, 強強格/長長格)

ピュリキオス (pyrrhic, 弱弱格/短短格) - 稀。通常、強弱弱六歩格の終端に用いられる。

詩行中の韻脚の数はギリシア語の用語を用いて次のように表される:

二歩格 (dimeter)

三歩格 (trimeter)

四歩格 (tetrameter)

五歩格 (pentameter)

六歩格 (hexameter)

七歩格 (heptameter)

八歩格 (octameter)

これらの他の韻脚のタイプにも広範に名前が存在しており、コリアンブ(choriamb, 強弱弱強格/長短短長格)のような4音節のものまで存在する。コリアンブは古代ギリシア・ローマの詩に由来している。トルコ語やヴェーダ語などのように、メーターの決定に強勢よりも(もしくは強勢に加えて)母音の長さやイントネーションを用いる言語でも、長音と短音の一般的な組み合わせを記述するイアンボスやダクテュロスと類似した概念が存在することが多い。

韻脚のそれぞれタイプには、それ単独で、もしくは他の韻脚との組み合わせによってある種の「感覚」が伴う。例えば、弱強格は英語で最も自然なリズム形式であり、総じて繊細だが安定した韻文を形作る[34]。他方、強弱弱格はほとんど駆け足で進むような感じを与える。『クリスマスのまえのばん』や『ドクター・スース』に見られるように、弱弱強格は快活でコミックな感じを作り出していると言われる[35]

メーターを記述する上で、異なった「韻脚」の多重性がどれほど有用なものであるかについては議論がある。例えばロバート・ピンスキーは、ダクテュロス(長短短格)は古典詩では重要であったが、英語のダクテュロス(強弱弱格)詩は強弱弱格を極めて不規則にしか用いておらず、ピンスキーによれば英語にとってより自然であるところの弱強格と弱弱強格のパターンに基いた方がより良く記述できると論じている[36]。実際のリズムは先述のような解析されたメーターよりもずっと複雑なものであり、多くの学者がこの複雑性を分析できる体系を開拓しようと努力してきた。ウラジーミル・ナボコフは、詩行における強勢・非強勢の音節の規則的なパターンには話し言葉の自然なピッチから生まれるアクセントの別のパターンが重ね合わされていると指摘し、アクセントのない強勢をアクセントのある強勢から区別するために scud という用語を用いることを提言した[37]。.mw-parser-output .side-box{margin:4px 0;box-sizing:border-box;border:1px solid #aaa;font-size:88%;line-height:1.25em;background-color:#f9f9f9;display:flow-root}.mw-parser-output .side-box-abovebelow,.mw-parser-output .side-box-text{padding:0.25em 0.9em}.mw-parser-output .side-box-image{padding:2px 0 2px 0.9em;text-align:center}.mw-parser-output .side-box-imageright{padding:2px 0.9em 2px 0;text-align:center}@media(min-width:500px){.mw-parser-output .side-box-flex{display:flex;align-items:center}.mw-parser-output .side-box-text{flex:1}}@media(min-width:720px){.mw-parser-output .side-box{width:238px}.mw-parser-output .side-box-right{clear:right;float:right;margin-left:1em}.mw-parser-output .side-box-left{margin-right:1em}}.mw-parser-output .listen .side-box-text{line-height:1.1em}.mw-parser-output .listen-plain{border:none;background:transparent}.mw-parser-output .listen-embedded{width:100%;margin:0;border-width:1px 0 0 0;background:transparent}.mw-parser-output .listen-header{padding:2px}.mw-parser-output .listen-embedded .listen-header{padding:2px 0}.mw-parser-output .listen-file-header{padding:4px 0}.mw-parser-output .listen .description{padding-top:2px}.mw-parser-output .listen .mw-tmh-player{max-width:100%}@media(max-width:719px){.mw-parser-output .listen{clear:both}}@media(min-width:720px){.mw-parser-output .listen:not(.listen-noimage){width:320px}.mw-parser-output .listen-left{overflow:visible;float:left}.mw-parser-output .listen-center{float:none;margin-left:auto;margin-right:auto}}英詩の強弱八歩格例エドガー・アラン・ポー大鴉』(*)仏詩のアレクサンドラン例シャルル・ボードレール『美への讃歌』。a-b-a-bの交韻。(*)この音声や映像がうまく視聴できない場合は、Help:音声・動画の再生をご覧ください。
メーターのパターン

シェイクスピアの弱強五歩格やホメロスの長短短六歩格から多くの童謡で用いられている弱弱強四歩格まで、異なった詩の伝統やジャンルでは異なったメーターが用いられる傾向にある。しかしながら、特定の韻脚や詩行を強調したり単調な反復を回避したりするために、確立されたメーターから変化させることもまた一般的である。例えば、韻脚内で強勢が倒置されたり、カエスーラ(休止)が(時として韻脚や強勢の代わりに)置かれたり、行の最後の韻脚に和らげる目的で女性行末が置かれたり強調し急止を作り出す目的で強強格が置かれたりする。弱強五歩格のような一部のパターンは極めて規則的になりやすい一方で、強弱弱六歩格のような一部のパターンは極めて不規則になりやすい。規則性は言語によっても幅がある。加えて、異なった言語ではしばしば異なったパターンが発達し、たとえばロシア語の弱強四歩格は大抵メーターの補強のためにアクセント使用の規則性を反映するが、これは英語では行われないか行われても稀である[38]アレクサンドル・プーシキン

一般的なメーターのパターンの例を、それを用いた代表的な詩人や詩作品の例と共に以下に挙げる:

弱強五歩格 - ジョン・ミルトン失楽園[注釈 12]

長短短六歩格 - ホメロスイーリアス[39]ウェルギリウスアエネーイス』、オウィディウス変身物語

弱強四歩格 - アンドリュー・マーヴェル『はにかむ恋人へ』、アレクサンドル・プーシキンエヴゲーニイ・オネーギン[注釈 13]

強弱八歩格 - エドガー・アラン・ポー大鴉[40]

弱弱強四歩格 - ルイス・キャロルスナーク狩り[41]ジョージ・ゴードン・バイロンドン・ファン[42]

アレクサンドラン - ジャン・ラシーヌフェードル[43]

漢詩における五言や七言、日本の五七調七五調もここに加えうるであろう。漢詩には声調に「平仄」と呼ばれる規則がある。
脚韻、頭韻、類韻古英語叙事詩ベーオウルフ』は頭韻法により書かれている。詳細は「押韻」、「頭韻法」、および「類韻」を参照

脚韻頭韻類韻子音韻は音声の反復するパターンを作り出す方法である。これらは詩の独立した構造要素として、リズムパターンを補強するために、あるいはまた装飾的な要素として使用されうる[注釈 14]

押韻とは、詩行の末尾(脚韻)もしくはその他の予測可能な位置(中間韻)に同一 (hard-rhyme) もしくは類似 (soft-rhyme) の音を置くことである[44]。言語によって押韻構造の豊かさには差がある。例えばイタリア語は豊かな押韻構造を持ち、長大な詩を少数の脚韻の組で持続させることができる。この豊かさは規則的な形の語尾によるものである。英語は他言語から借用された不規則な語尾が多いので押韻にはあまり富んでいない[45]。押韻構造の豊かさはその言語でどのような詩の形式が一般的に用いられるかを決定する上で重要な役割を担う[注釈 15]


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