近代の西洋詩でリズムを作り出すのに使われる正式なメーターのパターンは、現代では最早支配的なものではない。自由詩の場合、リズムはしばしば規則的なメーターよりもより緩やかなケイデンスの単位に基いて構成される。ロビンソン・ジェファーズ、マリアン・ムーア、ウィリアム・カルロス・ウィリアムズは英詩に規則的な強勢メーターが不可欠だという考え方を拒絶した代表的な詩人である[28]。ジェファーズは強勢によるリズムに代わる選択肢としてスプラング・リズムを実験した[29]。
メーター詳細は「韻律 (韻文)」を参照
西洋詩の伝統では、メーターは特徴となる韻脚と、行あたりの脚数によって分類されるのが通例である。「弱強五歩格」は1行につき5つの韻脚から成り、支配的な韻脚は「イアンボス」(弱強格/短長格)である。このメーター方式は古代ギリシア詩に起源を持ち、ピンダロスやサッポーといった詩人たちやアテネの偉大な悲劇作家たちに使われた。同様に、「強弱弱六歩格」(長短短六歩格)は1行につき6つの韻脚から成り、支配的な韻脚は「ダクテュロス」(長短短格/強弱弱格)である。長短短六歩格はギリシア叙事詩の伝統的なメーターであり、ホメロスとヘーシオドスの作品が現存する最古の例である。後世では、弱強五歩格はウィリアム・シェイクスピア、強弱弱六歩格はヘンリー・ワズワース・ロングフェローによって用いられている。リラを奏でるホメロス。フィリップ=ローラン・ロラン作(1812)
メーターはしばしば韻脚の詩行への配列に基いて解析される[30]。英語では、各々の韻脚には強勢を持つ音節1つと強勢を持たない1-2つの音節が含まれる。他の言語では、音節数や母音の長さの組み合わせが韻脚の解析方法を決定する場合もある。この場合、長母音を持つ1つの音節は短母音を持つ2つの音節と等価として扱われる。例えば、古代ギリシア詩では、メーターは強勢ではなく音節の長さのみに基いていた。英語などの一部の言語では、強勢のある音節は概してより大きな声で、より長く、より高いピッチで発音され、詩のメーターの基盤となる。古代ギリシアでは、これらの属性はそれぞれ独立したものであった。長母音と、母音と2つ以上の子音を持つ音節は実際に凡そ短母音の2倍の長さを持っていたが、ピッチや強勢(アクセントによって決定される)は長さには関係しておらず、メーター上の役割も持っていなかった。従って、長短短六歩格の詩行は6つの小節を持つ音楽のフレーズのように考えることができ、それぞれには二分音符が1つと四分音符が2つ(1つの長い音節と2つの短い音節)もしくは二分音符が2つ(2つの長い音節)含まれていた。2つの短い音節を1つの長い音節に置き換えても同じ長さの韻脚が得られるわけである。このような置き換えは、英語などのような強勢言語では、同じリズムの規則性はもたらさない。アングロ・サクソン族の(頭韻詩の)メーターでは、詩行を構成する要素は韻脚ではなく2つの強勢を含む半行であった[31]。メーターの解析はしばしば韻文の根底にある基礎的・根本的なパターンを明らかにするが、強勢、ピッチ、音節長などのさまざまな違いについては明らかにしない[32]。
メーターの定義の例として、英語での弱強五歩格では、各行は5つの韻脚から成り、各韻脚はイアンボス(強勢のない音節に強勢のある音節が続く)である。個々の行を調べる際には、メーターの基本パターンの上にバリエーションがある場合もある。例えば、英詩の弱強五歩格では最初の韻脚は頻繁に倒置されており、強勢が最初の音節に来ている[33]。最もよく使われる韻脚の種類の一般的な名称は:ヘンリー・ホリデーによるルイス・キャロル『スナーク狩り』のイラストレーション。弱弱強四歩格で書かれている。 "In the midst of the word he was trying to say / In the midst of his laughter and glee / He had softly and suddenly vanished away / For the snark was a boojum, you see."
イアンボス(iamb, 弱強格/短長格)
トロカイオス (trochee, 強弱格/長短格)
ダクテュロス (dactyl, 強弱弱格/長短短格)
アナパイストス (anapest, 弱弱強格/短短長格)
スポンデイオス (spondee, 強強格/長長格)
ピュリキオス (pyrrhic, 弱弱格/短短格) - 稀。通常、強弱弱六歩格の終端に用いられる。
詩行中の韻脚の数はギリシア語の用語を用いて次のように表される:
二歩格 (dimeter)
三歩格 (trimeter)
四歩格 (tetrameter)
五歩格 (pentameter)
六歩格 (hexameter)
七歩格 (heptameter)
八歩格 (octameter)
これらの他の韻脚のタイプにも広範に名前が存在しており、コリアンブ(choriamb, 強弱弱強格/長短短長格)のような4音節のものまで存在する。コリアンブは古代ギリシア・ローマの詩に由来している。トルコ語やヴェーダ語などのように、メーターの決定に強勢よりも(もしくは強勢に加えて)母音の長さやイントネーションを用いる言語でも、長音と短音の一般的な組み合わせを記述するイアンボスやダクテュロスと類似した概念が存在することが多い。
韻脚のそれぞれタイプには、それ単独で、もしくは他の韻脚との組み合わせによってある種の「感覚」が伴う。例えば、弱強格は英語で最も自然なリズム形式であり、総じて繊細だが安定した韻文を形作る[34]。他方、強弱弱格はほとんど駆け足で進むような感じを与える。『クリスマスのまえのばん』や『ドクター・スース』に見られるように、弱弱強格は快活でコミックな感じを作り出していると言われる[35]。