証明責任
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刑事訴訟では「疑わしきは被告人の利益に」という法原則に基づき原則として検察官が証明責任を負う[4]

なお、証明責任と区別される概念として立証の必要性がある。証明責任を負担する者はあらかじめ客観的に決まっており訴訟が進行しても不変である[4]。証明責任を負担する者はそのまま真偽不明になってしまうと主張が通らず不利益を受けるため、裁判官に確信を持たせるような証拠を提出する必要が生じる(これを本証という)[4]。本証が提出されると、対する相手方は自らが敗訴しないよう裁判官の確信を揺るがすような(あるいは真偽不明に持ち込むような)証拠を提出する必要が生じる(これを反証という)[4]。証明責任を客観的証明責任、証拠提出に迫られる立証の必要性を主観的証明責任(証拠提出責任)と呼ぶこともある[4]
アメリカ合衆国における証明の標準

証明責任は最も普通に裁判における当事者がその主張を証明する義務を意味する。民事訴訟では、ひとつの訴え、訴状あるいはその他の抗弁における申し立てを原告が予め設ける。その被告はそのときその申立ての一部ないしすべてを否定する、なんらかの積極的抗弁英語: Affirmative defense)を予め設ける答弁書を受け付けられることを必要とされる。各々の当事者は彼らの申立ての証明責任を有する。
証明責任に関する法的標準
幾つかの証拠

Superintendent v. Hill (1985)において、囚人の懲戒違反についての良い行動の時期(英語: good conduct time)を除外するためには、囚人の役所は「なんらかの証拠」(: some evidence)すなわち、「少しの証拠」(: a modicum of evidence)を必要とするが、判決判事は、良い/仕事の期間の遵守の制約の義務を負わない、もしくは彼らは信用の期間が与えられることを求めた。
合理的な兆候

「合理的な兆候(合理的な疑い)」(: reasonable indication、: reasonable suspicion)は相当な理由(: probable cause)よりも実質的に弱い;考慮すべき要因は慎重な捜査官が考えるだろうそれらの事実と状況である、しかし過去、現在、または差し迫った違反を示す事実または状況を含まなければならない;ある客観的な事実の基礎は示されなければならない、弱い「予感」(: hunch)では不十分である[5]
合理的な疑い詳細は「合理的な疑い」を参照

合理的な疑い(: reasonable suspicion)は警察署またはなんらかの行政庁によって保証された簡単な調査が止むか調べるかどうかを決定する証明のひとつの法的標準である。
信じるのが妥当

Arizona v. Gant (2009)において、アメリカ合衆国連邦最高裁判所は、「信じるのが妥当」(: reasonable to believe)という新しい標準を定めた。この規準は容疑者が逮捕された状態にある後に車両を捜査するときにだけ適用される。裁判所は New York v. Belton(1981)を却下した、そして警察官は容疑者が逮捕されたものである犯行の車両の中に多くの証拠が在ることが「信じるのが妥当な」場合に限り容疑者の逮捕について車両事故を戻って捜索することが許されることを結論づけた。

この句の正確な意味については未だ議論中である。その他の裁判所が それをテリーストップの「合理的な疑い」と等しいとみなすうちに、幾つかの裁判所はそれは新しい基準であるべきことを言った。多くの裁判所はそれはどこか「相当な理由」よりも弱いことで合意している。
相当な理由詳細は「 相当な理由 英語: probable cause ) 」を参照

相当な理由(: probable cause )は合理的な疑いよりも高度な証明の標準であり、アメリカ合衆国で調査、または逮捕するのが合理的でないかどうかを決定するのに用いられる。
幾つかの信頼できる証拠

幾つかの信頼できる証拠(: some credible evidence)は証明の標準の最小限度のもののひとつである。この証明規準は行政法の場面において、そして幾つかの州が児童保護サービスの手続きを開始する場面においてしばしば用いられる。この証明規準は短期間の介在が緊急に必要なところで使われる、例えば子供が両親や保護者から直ちに危険の恐れがある場合のような。「幾つかの信頼できる証拠」の規準は法的な関係者がある事実の試す者の前になんらかの対抗として、そして法的手続きにおいて用いられる。それは、裁判所が捜索令状を発行する前に ex parteの限度の決定の中で用いる「相当な理由」の発見を達成するのに必要とする、証明の事実上の規準の順位の位置を占める。[要出典]それは「証拠の優位性」の規準よりも弱い証明規準である。
証拠の優位性

確立のバランス(: balance of probabilities(イギリス英語))としても知られる証拠の優位性(: preponderance of the evidence(アメリカ英語))は、金銭に関係した判決をする多くの民事訴訟家事訴訟で必要とされる標準である。
明確で説得力のある証拠

明確で説得力のある証拠(: clear and convincing evidence)は「証拠の優位性」よりも高度な遂行責任のひとつであるが、「合理的な疑いを超える」よりも弱い。
合理的な疑いを超える詳細は「合理的な疑い」を参照

これは証明責任として英米法学で最も標準的に用いられ、そしてたいてい少年非行手続、刑事訴訟、刑事訴訟で悪化する状況(英語版)を考慮するときに専ら適用される。
民事訴訟の証明責任
ドイツの法理論

ドイツでは19世紀に権利根拠事実は権利主張者、権利障害事実と権利滅却事実は相手方が証明負担するという命題が支配的になり、このような命題を共通点として持つ学説を総称して法律要件分類説という[6]。これは従来の消極的事実説及び推定説に対する批判から形成されてきたものである[6]。ドイツ民法典の成立に至る過程で成立した学説には、特別要件説、因果関係説、通常事実説などがある[6]

特別要件説特別要件説は、請求原因を実体上のものと訴訟上のものに区別し、原告は権利の特別の成立原因(直接かつ固有の原因)についてのみ負うとする[6]。権利成立の一般要件の欠缺や権利を例外的に発生させない事情は被告が証明責任を負うとする[6]

因果関係説因果関係説はドイツ民法典制定期に通説となっていた学説で、権利の発生にとって原因たる事実(権利根拠事実)の存在を原告の証明責任とする[6]。一方で権利の存在(成立及び存続)にとってその不存在が条件たる事実(権利障害事実及び権利滅却事実)は被告がその存在の証明責任を負うとする[6]

因果関係説に立脚してドイツ民法典第一草案には原則的証明責任規定が盛り込まれていたが削除され、その後起草者は若干の証明責任規定を置くとともに法文の表現を通じて証明責任の分配を明らかにする試みを拡張した[6]

さらにこうした動きの中から法規定の原則と例外の関係を通じて証明責任の分配を明らかにしようとする最小限要件説ないし規範説と呼ばれる学説が出現した[6]。規範説は法規に定める要件が存否不明のときはその法規は適用できないという原則から出発し、一定の法規の適用がないときに自己の訴訟上の要求が成功を収めることができない当事者が証明責任を負うべきとする学説である[7]
日本の民事訴訟
一般論

日本の民事訴訟では、原則として自己に有利な法律効果の発生を求める者は、その法条の要件事実について証明責任を負うと考えられているが、その説明に二通りの考え方がある。

1つは、事実が真偽不明となった場合には、その事実を要件事実とする法条は適用されないという考え方(法規不適用説)であり、いわゆる法律要件分類説はこれに基づく。

もう1つは、真偽不明の場合に事実を擬制して法の適用を可能とするための規範として証明責任規範があり、それに基づいて証明責任が生じるとする考え方(証明責任規範説)である。

従前は前者が通説的地位を占めていたが、現在では後者の考え方が通説的である。後者の見解の中でも通説的とされる見解は「修正された法律要件分類説」と呼ばれる見解であり、条文の構造等を基礎にしつつも修正を認める見解である(なお、特に「修正された」わけではなく法律要件分類説自体が初めからこの程度の柔軟性を備えているとする考え方もある。)。後者の見解の中には、証拠との接近性などを考慮し、具体的な事情を利益考量したうえで証明責任の分配を決するべきとする見解(利益考量説)も有力に唱えられているが広く支持されているとは言い難い。

以下では、修正された法律要件分類説の立場から「XがYに対して商品を売ったため、Yに対して売買代金を請求する場合」を具体例として、証明責任の分配を説明する。

権利根拠事由権利の発生を定める規定の要件事実は、その権利を主張する者が証明責任を負う。上記の例の場合、売買代金請求権は、売買契約に基づいて発生する(民法555条)から、売買契約を締結した事実は、売買代金請求権を主張するXがその存在について証明責任を負う。

権利消滅事由一度発生した権利の消滅を定める規定の要件事実は、権利を否認する者が証明責任を負う。例えば、上記の例で、売買契約の締結を前提としつつ、Yが既に代金は支払済みであるとして主張して争う場合には、Yの代金の支払いにより一旦発生したXの売買代金請求権は消滅する(民法474条以下)ことから、代金が支払済みである事実は、売買代金請求権を否認するYがその存在について証明責任を負う。

権利発生障害事由権利根拠規定に基づく法律効果の発生の障害を定める規定の要件事実は、その法律効果の発生を争う側に証明責任がある。言うなれば、発生したかに見える権利が実際には発生していないなどの主張である。上記の例の場合、売買契約に要素の錯誤(民法95条)があるために売買契約は無効になるか否かが問題となる場合は、契約の効力を争うYに、要素の錯誤があったことについて証明責任を負う。

権利行使阻止事由 権利根拠規定に基づく法律効果の行使を阻止を定める規定の要件事実は、その法律効果を争う側に証明責任がある。

ただし書がある場合条文が本文とただし書の組み合わせで構成されている場合がある。


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