証券化
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その後、世界的なドル不足が慢性化した。このため世界で証券が氾濫した。国際機関や多国籍企業の金融ではユーロ市場が盛況となってゆくが、住宅ローンや公社債は地場金融を利用するのが普通であった。後者はユーロ市場と比べて一件の起債規模が小さかったので、それらの合理化は証券化の役割であった。これも銀行離れと関係が深い。

それはたとえば、既存のパススルーMBSを束ねて償還期間の異なる複数のクラスの債権に組み替えたものとか、雑多な債権を買い集めて優先劣後構造に組み替えたものである。後者の典型がジャンク債を束ねたものである。仕入れた証券の利回りよりも、組み替えて作り上げた証券化商品の金利払いが少なくて済むようにした。もう一つのパターンは、オリジネーターとは関係のない外部の不良債権ファンド等が、銀行の不良債権処理に参加して、買い集めた不良債権を証券化する場合である[4]

原資産のリスクは隠され不相応に高格付けされた。1985年にはブルーチップが大量に格下げされ、堕天使と呼ばれた。
MBSと信用創造

セカンダリー・バンキング商戦においては、現金の絶対量が必要とされた。USドル高とニクソン・ショックが起こり、管理通貨制度信用創造の道を拡げた。住宅ローンをMBSに証券化するとき、実は信用創造が行われていた。この場合で、OTDという規制の緩い方法が存在した。現金の絶対量は確保されたが、しかしアメリカ合衆国で流通する交換手段に現金の占める割合は極端に落ち込んだ。世界金融危機の序盤でOTDを利用した副作用がおこって、銀行で縮小したはずのバランスシートが膨れて不良債権が累積した。
証券化の種類
証券化の種類(総論)

証券化のスキームには色々なものがあるが、特別目的会社(SPC Special Purpose Companies)が資産の買い手になって、資産担保証券(ABS Asset Backed Securities)を発行するSPC方式や、資産を信託形式で信託銀行が預り小口化した受益権証券を発行する信託方式などが代表的な手法である。証券化の対象となる資産はリースやクレジットの債権、銀行の貸出債権、不動産、さらには事業収入など様々である。

財務的に困窮した企業がその資産、それも売却を予定していなかった資産を売却して当座の運転資金を確保することはかなり前から見られる。そうした以前から見られる売却と今日の証券化とは幾つかの違いがある。かつての資産売却では、売却は見かけだけで購入者は、その企業の関連会社などのことが多かった。売却の目的は期末の決算の数値を良くするためということがあった。昔からあるこうした手法の一つは セール・アンド・リースバック(sale and leaseback)と呼ばれるもので、売却した資産を相手方から借りて使用を続けるものである。その後、会社の財務内容が改善されたとき、その資産を買い戻すことも見られた。

原資産の原因を相対取引に限らなければ、投資信託も証券化である[4]

また、不動産を原資産とする不動産証券化[注釈 7]住宅ローンを原資産として発行するRMBS、債権を原資産として発行する債務担保証券といった、原資産によるバリエーションもある。

債務担保証券の典型はシンジケートローンを原資産として発行するユーロ債である[7]

事業も原資産とすることができる(Whole Business Securitization)[注釈 8]

仕組債の発行も証券化にふくめるときがある[4][注釈 9]

広義の証券化は金融市場の重心が直接金融に移ってゆくことをさすので、この場合はいわゆる銀行離れ(英語版)(: Disintermediation)とほぼ同義である[8]
アセット・ファイナンス

アセット・ファイナンスとは、原資産の信用力を活用して、間接金融より低コストでの資金調達を実現する金融技術である。

アセットとくに事業資産を活用して、資金を調達することも証券化と密接につながっている。特定事業を会社の資産に見立てると、その事業から生み出される将来の収益を担保に貸付を行うプロジェクト・ファイナンスも、証券化の一つの形態とみることができる。

アセット・ファイナンスの一般的なストラクチャーは以下のとおりである。証券会社等のアレンジャーが立案した証券化の仕組みに基づいて、原所有者であるオリジネーターの原資産を、信託会社信託銀行ないしは特別目的会社などのSPVに移転し、当該SPVを発行会社として証券化証券を発行し、当該証券をアレンジャーが引き受け・販売し、販売代金をオリジネーターに引き渡す。原資産から得られるキャッシュ・フローをSPVが委託したサービサーが回収し、証券化証券の弁済に充当するものである。オリジネーターは原資産を処分して対価を得ていることになる[3]
リスクの証券化

クレジットデリバティブを組み込んだ証券発行は、クレジットデリバティブを裏づけとした証券化である。リスクだけを切り離して移転させる取引である。オリジネーターである銀行は、自行ポートフォリオで信用リスクをはずしたい債権についてクレジット・デフォルト・スワップ契約を特別目的事業体との間で結ぶ。契約内容は、対象債権が不履行となった場合、損失を特別目的事業体から補償してもらうが、その代わりオリジネーターは特別目的事業体に契約期間中プロテクション料を支払うというものである。機関投資家は、特にカバーしたいリスクを選んで防御することもできるのである。特別目的事業体は投資家向けに債券を発行するが、補償支払に備えて、債券の売り上げは国債等で運用される。投資家に対する金利の支払は、オリジネーターからのプロテクション料と国債の利子で行われる。対象債権が不履行となって補償金を支払った場合、発行債権全体としての元本償還は減額する。これを見越した投資ができるように、やはり債権は優先劣後構造をとることが多い[4]
OTH金融

伝統的なモーゲージ金融を指して、OTH(Originate to hold)と呼ぶことがある。この性質について、かつては鋳貨融通のイメージにとらわれた金融仲介説が主張されていた。しかし管理通貨制度が通用する現在では、モーゲージ貸出をすると銀行の帳簿にモーゲージ債権と預金債務が生まれると考える(信用創造説)。信用創造によって銀行は三つの変換を遂げる。銀行は貸付債権と預金債務を両建てで創出し、信用力の低い借り手の債務を自行の信用力の高い債務へ変換する(信用変換)。銀行は長期債権と短期債務を両建てで創出し、借り手の長期債務を銀行の短期債務に変換する(満期変換)。銀行は流動性の低い債権と流動性の高い債務を両建てで創出し、流動性の低い借り手の債務を流動性の高い銀行の債務に変換する(流動性変換)。信用変換と流動性変換については、連邦預金保険公社連邦準備制度がそれぞれの安全装置となっている。満期変換に対する保護はとりわけ厚く、ファニー・メイがモーゲージを買い支えたり、エージェンシー(政府=ジニー・メイ)と政府支援機関(GSEs)がモーゲージを証券化したりした(これは次節であつかうOTD金融の一つである)。邪魔といえば支払準備率だけであった[9]
OTD金融

現代型のモーゲージ金融を指して、OTD(Originate to distribute)と呼ぶことがある。証券化ありきを表現したネーミングであるが、モーゲージをMBSへ証券化する金融である。OTDの特徴は、貸出債権の証券化と、預金通貨の変質(MMFとかレポ債権)である。前者の動機は、金利急騰時の逆ザヤ防止と、1991年導入された自己資本比率規制に対応するためのバランスシート縮小である。預金通貨の変質には預金者、特に機関投資家の意向が働いたとみられる[9]

OTD金融には二種類ある。エージェンシーと政府支援機関が行うものと、民間で行うものである。民間の場合、金融持株会社を利用するか、ブラックロックなどのシャドー・バンキング・システムに頼るかを選ぶ[9]
レポ債権と資産担保コマーシャルペーパー
政府系OTD

エージェンシーと政府支援機関が行うOTDは1970年代に始まり、1980年代から本格化した。仕組みを順に追ってみる。前節のごとく、モーゲージ貸出をすると銀行の帳簿にモーゲージ債権と預金債務が生まれる。銀行の預金債務は、借り手の預金通貨であるが、すぐに物件の代金として支払われて売り手の預金通貨となる。売り手は預金通貨をMMF等で運用する。ここから4通りに分かれる。@連邦住宅貸付銀行がオリジネーターの銀行からモーゲージ債権を購入する(三つの変換)。AGSEsが購入し、エージェンシーMBSを発行する。B投資銀行がレポや資産担保コマーシャルペーパー(以下ABCP)で資金調達し、MBSを在庫保有する。


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